>"
  


Vol.0217 「NZ・生活編」 〜Bモード暮らし NZ編〜

ニュージーランド関連サイトの掲示板では、「うちはけっこう貧乏なので」とか、「ワーホリ(ワーキングホリデーの人)に毛が生えたくらいの給料しかなく」とか、「週の食費は○○ドルに切り詰めて」など、ズバリ収入が少ないことを全面的に認めた記述をよく目にします。私達の細々とやっている掲示板でさえ、「貧乏&先行き不透明 レント(賃貸)状態で住んでいます…まだ家は買えません(T_T)」とか、「貧乏一家!ほんとに、週$100(約7,000円)の食費(アルコール代含む)を実践してるのだ。かなり質素!ハハハ」など、ここ1週間の書き込みだけで検索してみても、「貧乏」という言葉が7回も使われています。ちなみに、「金持ち」はゼロでした(笑)

なぜ、ここまで「貧乏!」、「貧乏!」なのでしょう? 日本人はお金があってもなくても、とかく金銭の話を直接的にすることを好まないはずなので、掲示板の匿名性を差し引いても、こうした書き込みはかなり大胆に思えます。いかに貧乏かを、1週間分のこまごまとした食材にまで言い及んで、ほとんど"説得"しているような書き込みさえ見たことがあります。NZに住んでいる日本人や、私達のような移住希望者が特別に貧乏なのでしょうか?どうも、そういう訳でもなさそうです。

ただ、NZは日本と比べて格段に物価が安く、それに合わせて手取りも激減するせいか、B(=ビンボー)モードに一気に拍車がかかるようです。職種によっては買い手市場のため、最低賃金で働かざるを得ないケースもあり、労働市場にある程度の相場が形成されている日本から来ると、「経験問わず一律最低賃金」などという賃金体系に面食らい、ますます気分がBモード化するようです。もちろん、NZに来たばかりで求職中の身であれば、気分どころか実際の生活そのものがBモードに入りっぱなしでしょう。

それを後押しするように周りのキウイたちのシンプルな暮らしぶり。「そっか、これぐらいでもやっていけるんだな。」「なにも見栄を張らなくても。ないものはないで構わないんだ。」と、急速に意識改革が進み、「えぇ、そうなんですよ〜。うちもビンボーで〜」と、あっという間に角の取れた素直な性格に。そして「週の手取りが○○ドル、家賃が△△ドル、食費が◇◇ドルで、日本へなんか毎年帰れませんよ〜」と、日本人の間ではタブーだったはずのお金の話が、じゃんじゃん出てくるようになってしまうのではないかと想像しています。
(←Bモードはまず暮らしを愉しむことから。NZだったら真っ先にバーベキュー?)

私の見る限り、「ビンボー」には二種類あるようです。一つは「ビンボー恨み節タイプ」。「これじゃ日本のアルバイト並みの給料」、「こんな手取りじゃ将来が不安」といったネガティブ派。もう一つは「ビンボー自慢タイプ」。お金がないことを後ろ向きに捉えないどころか、むしろやり繰り上手や耐乏ぶりに自信を持っているポジティブ派。「日本からの納豆は高くて買えないから家で手作りしてます。レシピを公開すると・・・」と言った書き込みの主などは、まさにこのタイプでしょう。

「ビンボー自慢タイプ」はさらに、@本当に少ない収入の中でやり繰りしている「真性Bタイプ」と、A日本から持ってきた退職金や自宅の売却代金だのが高金利の定期預金で回っている「資産家Bタイプ」に二分されます。前者は若いうちにNZにやってきた「留学・ワーホリ組」、後者は日本である程度の勤め人生活を送り、そこそこ自己資金を溜めてからやってくる「移住組」に多く見られます。資産家Bは収入が金利のみだったり、固定収入があっても日本のサラリーマン時代とは比較にならない低水準だったりするので、いずれにしても預金には手をつけず、日々の出費には細心の注意を払う、Bモード気分な人たちなのです。

「ビンボー恨み節タイプ」は、よくNZでの賃金水準の低さを愚痴りますが、本人がそれを受け入れて働いている以上、言えば言うほど自己矛盾を露呈することになります。「そこまで言うなら帰れば?」とでもレス(ポンス)がつけば、「そんなこと簡単にできるわけないだろう?」と逆ギレするところも、矛盾の深さを浮き彫りにしています。「間違った!」と素直に認める人は、書き込みで胡散晴らしなどせず、さっさと荷物をまとめて帰国の途につき、NZの何倍かの収入や最新の流行に首まで浸かった生活をとっとと実現しているはずです。

私が心惹かれるのは、当然ながら「ビンボー自慢タイプ」です。まず、「うちはビンボーです」と正々堂々としている潔さがいいじゃないですか!その上で、「食費と家賃は週○○ドル」、「食材は○○で買い、週△△ドル節約」、「日本に帰るのは○年に1回ながら△△経由でついでに海外旅行」、「チャイマ(中華系スーパー)を使い倒す」、「家庭菜園でちょっとした野菜は自給自足」と、"節制"と"前向きさ"が知的に共棲しているところが心憎いです。しかも彼らのアイデアときたら無尽蔵!まるでパズルを愉しむように節約やリサイクルをこなし、アッと驚く手品のように、生活のあちこちに潜ませた裏技を披露してくれます。

お金をかければ好きな物を食べ、好きな場所に住み、日本にも直行便で帰り、食品は迷わず日本製を求め、洒落た輸入品をポンポン買うこともできましょう。しかし、その自由自在ぶりを維持するための代償を思い知らされ、心底魅力を感じなくなってしまった私にとり、カネがモノを言う暮らしに、もはや興味はありません。それよりも情報を仕入れ、知恵を絞り、試行錯誤を重ねながら、クリエイティブなBモード生活を愉しむことに、遥かに心惹かれます。「えぇ、そうなんですよ〜。うちもビンボーで♪」

***********************************************************************************

「マヨネーズ」 「やだよ、ビンボーなんて!」と、2年前に「Bモードで行こう!」を書いた時には強く抵抗していた夫も、今や完全にBモード。「牛乳安かったから、まとめて買っといたよ」と、ウレシそうに言うようになりました。いつの間にか角の取れた素直な性格に?

西蘭みこと