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Vol.0171 「生活編」 〜みことの主婦日記 その2〜

香港に戻り、本格的な専業主婦になって早4ヶ月。さすがに慣れてきたものの、「あれも、これも」と頭の中には「やらなくてはいけないリスト」が常に20項目くらいあります。しかも、その優先順位がめまぐるしく変わり、朝には「今日は絶対コレを片付けよう!」と思っていたのに、子供の友だちのママから「今日、一緒に遊ばせない?」という電話が入れば、急きょ予定を変更して連れて行き、外出ついでに買い物を済ませ、DVDも返しに行って、再び迎えに行って・・などしているうちに、朝に立てた計画はどんどん狂っていきます。それでも夕食までにすべての帳尻を合わせていなくてはいけないのです。

つまり主婦とは、ものすごい義務感と責任感、適応力、柔軟性、忍耐力、判断力、迅速力、決断力、バランス感覚、経済観念、瞬発力と持久力を求められている上に、明朗活発で不屈の精神、並外れた体力と見苦しくない身だしなみに笑顔まで持ち合わせていることをも要求されているのです。忙しさにイラついて子供に当たっていては始まりませんし、自分も苦しくなる一方です。すべてを受け入れ、常に次の一手を前向きに考えながらも、ひと時もじっとしていられない無給で無休の働き者です。こんなに素晴らしい人材が経済活動に参加していないのは(消費者ですが生産者ではないという意味で)、なんとも惜しいことですが、世の中こんな風に回っているということを、この年になって初めて実感しました。

私の家事もさすがに少しは板についてきました。手際が良くなった面もありますが、一番大きいのは理想とかけ離れた状態でも当の本人が気にしなくなってきたことでしょう。慣れとは偉大です。人と助け合うことも覚え、毎日、思っていた以上に多くの人と話をし、外出の機会も少なくありません。家で過ごす時間が格段に延びるのかと楽しみにしていましたが、実際はそうはいきませんでした。その分、14年も住んでいながら知らずにきた香港の昼の顔を垣間見ることになり、新鮮な驚きに満ちた街を闊歩しています。

みこと流家事の一例として、「シャンプー風呂洗い」があります。ゴム手袋が大嫌いな私、初めは風呂用専用洗剤を素手で使っていましたが、頑丈な私の手もさすがに荒れてきてしまい、しぶしぶ断念。観念してゴム手袋を使い始めましたが、ヒタヒタした内側の不快感は何とも言えず、やはりギブアップ。とうとう、「人の身体から出る油や汚れ以上のものがない場所なんだから」と割り切って、シャンプーとシャワー用の液体洗剤で洗ってみることに。結果は専用洗剤と変わりなく、大・成・功!

香りはいいし、手に優しいので、くまなく丁寧に洗えるし、洗い終わった後の水切れもワルくありません。何だったら自分のシャワーの後に、ボディーブラシをスポンジに持ち替えて一気に洗ってしまうこともできます(その姿は想像しないで下さい)。バスタブが完全に濡れているので、乾いている時にわざわざ濡らして洗う手間が省けますし、こちらが濡れて困ることもありません。シャンプーにしたのは液体洗剤よりも伸びがよく、少量で洗えるからです。でも、所詮は中性洗剤の親戚同士。好きなものを使えばいいんでしょう。このノリで洗面所もすべて普通の液体洗剤で掃除していますが、すこぶる好調です。残り香もほんのりあって、掃除の後にわざわざ臭い消しのアロマを焚く必要もなくなりました。

人との助け合いはそれこそ数限りなく、毎日がこれの連続です。お手伝いさんがいない家というのは私の周囲では非常に少数派で、その分、周りからは惜しげもない支援の手が差し伸べられています。子供の柔道のバスでの送り迎えは、他のママが「どうせクルマでの通り道だから」と代役を買ってでてくれているし、一緒に練習に通う近所の中学生が温と一緒に善を連れて行ってくれることもあります。外出が長引いてスクールバスのお迎えに間に合わなそうな時は、一緒のバス停のよその家のお手伝いさんに電話をし、「悪いけど善もピックアップしといて〜。お願〜い。」、「OK!マム(雇用主でなくても"ママ"はみんなこう呼ばれます)」と、頼んでしまう荒業も覚えました(低学年は迎えがいないとバスから降ろしてくれないという厳しいルールあり)。

洗濯物の落下でお世話になっている下の階のお手伝いさんとは、これが縁で話をするようになり、学校のお迎え時間が一緒なので道すがらおしゃべりしていくこともしばしばです。彼女は雇用主からマンション内の他のお手伝いさんと口を利くことを禁じられているので、お手伝いさんではない私と(似たようなものですが)外で話すのは、気晴らしになっているようです。先日の夜、夫がゴミを出そうと玄関を開けたとたん、「こんなところに服がかかってる?!」と、ハンガーにかかった善のTシャツを持ってきました。私は落とした覚えさえなかったのに、彼女がこっそり持ってきてくれたようです。こうして日々、周りの助けに感謝しつつ、ナンチャッテ家事に邁進し、いよいよ師走突入です。

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「マヨネーズ」 ラグビーのワールドカップは明日、決勝戦を迎えます。決勝はイギリス対オーストラリアで、イギリスは大会始まって以来の北半球への優勝カップ奪取を、開催国であるオーストラリアはホームでの連覇に命運を賭けています。いずれにしても、晴れ舞台にニュージーランドの「オールブラックス」の姿はありません。先日の3位決定戦でフランスを40対13で下し、さっさと3位を確保しています。しかし、大差での勝利にもかかわらず、まったく盛り上がらなかったのは、3位という不本意な地位とフランスが15人の選手のうち13人を入れ替えて臨んだことからうかがえるように、総力戦ではなかったためです。NZが国技で世界の檜舞台に立てないのは残念で、寂しい限り。"走るギリシャ彫刻"とでも呼びたい、強く、美しい選手は申し分ないはずなのに、どうしてもチームとしての底力が発揮できないようです。ともあれ、今回はお疲れ様&ひと時の夢をありがとう!4年の歳月は長いけれど2007年の雄姿に期待します。

西蘭みこと