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Vol.0159 「生活編」 〜進め!多国籍ママ群〜

「なんなの〜?隣のクラスの先生のあの発音!」と、円卓のすぐ近くに座った大柄のイギリス人ママが言うと、隣に座っていた細身のママが何度もうなずいています。大柄ママは、「え〜っと、確かこのテーブルにはオーストラリア人はいなかったわよね?」と周りを見渡してから、「家でクイーンズイングリッシュを話してるっていうのに、学校でアレじゃあ、なんのためにイギリスの学校に入れてるのかわかんないわ!」と冗談っぽい物言いながらも、かなり不満気。細身ママもうなずきまくりで100%の賛同を示しています。しかし、残りのママは私を含め、どう見てもネイティブではなく、みな黙るしかありませんでした。

息子たちの学校は9月に新学期を迎え、父兄懇談会だ、有志によるママの集いだ、授業を手伝うママたちのセミナーだと、学校関連の行事が続きました。長男が5年生になったというのに、今までずっと働いていた私は夜開かれる父兄懇談会以外の会合にはほとんど出席したことがなく、手伝いも有給休暇をとって遠足に同伴したことがあるくらいで、数えるほどしかしたことがありませんでした。しかし、今は天下晴れて専業主婦の身♪ 真昼間だろうが、どこだろうがホイホイ出かけられます。さっそく、息子たちの各クラスのママ主催によるブランチに顔を出し、"多国籍ママ・デビュー"を果たしてきました。

大柄ママに"アレ"と言われた、隣のクラスのオーストラリア人の先生の発音には、かなり強いアクセントがありました。しかも、彼女は合同父兄懇談会での自己紹介で、「アクセントからお分かりだと思いますが、私はオーストラリアはクイーンズランドから参りました・・」と、完全に開き直った印象で、"do my best"と話を締めくくるところも、堂々と「ドゥー・マイ・ビースト」と言っていたのには、むしろ「あっぱれ!」と感心するほどでした。

西蘭家は超ノンネイティブ・スピーカーですから、先生の発音など贅沢なことを言ってられる身分ではなく、いかにネイティブ・スピーカー以外への配慮のある、思いやりと忍耐力のある先生かということがポイントとなりますが、ネイティブ・ママにはそうはいかないようです。彼女らの会話を聞きながら、「じゃ、うちの担任はイギリス人だから良かったね♪」と思っていると、大柄ママが「ちょっと、アレ見た〜?うちの担任!自己紹介する時、手が震えてたでしょう?経験が長いったってアレじゃあね〜」と、こちらもバッサリ斬られました。あちゃ〜!隣で細身ママが先生の真似らしく、両手をワナワナさせています。こういうママたちがいるから、経験豊かな先生でも震えがくるんでしょう。

ある香港人ママは、「学校の手伝いに行こうと思ったら、娘に"ママの英語じゃムリよ!"って言われちゃったのよ〜」と、苦笑していました。彼女は次男のクラスメートのママなので、娘さんはたったの6歳!「もう、ついていけないのか〜」と自省の念をこめてため息まじりに言うと、「ダメみたいよ〜。発音が決定的に違うんだって。私よく娘に発音直されるもの・・・」とのこと。彼女は以前スチュワーデスをしていたせいか、どんな状況でもとてもフレンドリーにこなれた感じに話す人ですが、"正確さ"というものを追求されたらムードメーカーであるだけでは対応できないのかもしれません。「それでも何かしたいから、週一で図画工作の授業を手伝うことにしたの。切った張ったなら私にもできるでしょう?」と、このポジティブ・シンキング!やっぱりクラスにはムードメーカーも必要なはず。

教育熱心そうなあるインド人のママは、元々証券会社勤務で、ご主人も金融業界のため、お互い前々からなんとなく親近感を持っていました。「私も専業主婦になったのよ!」と報告すると、「忙しくなるわよ〜」と、さっそく釘を刺されました。「お宅では読書の宿題どうしてる?自主的にやることになってるけど、記録に残すように言われてなければどこまで読んだかわからないし、黙読だったら読んでるのかどうかもわからないと思わない?」と、ママたち共通の悩みをズバリ。そうなんです!この宿題のような、そうでないような"読書"はなかなかの曲者で、みんな対応に苦慮しているのです。

「娘の中学校ではクラス全員に同じ本を読ませて、あとから内容についてディスカッションさせてるわよ。しっかり読んでないと話し合いに参加できないから、多少はまじめに読むようになったかしら?内容も覚えてなくちゃいけないしね」と、転校してきたばかりのオーストラリア人ママが具体的な意見を言うと、ニュージーランドからのキウイ・ママがさっそくメモをとり、「@読書記録をつけさせること、A同じ本を読んでディスカッションさせること、他に何か提案はないかしら?担任の先生に手紙を書いてみるけど・・」と一言。お気楽な雑談が一気に建設的な話となり、この切り替わりは本当にお見事!

多国籍ママ群にグルリと包囲されている先生や学校はなかなか大変でしょうが、子供をインターナショナル・スクールに入れて以来、「ママを始めとする父兄の積極的なかかわりがあってこそ、学校は進化する」ということを実感しています。選ばれた特定の役員主導のPTAとは別に、行事ごとに有志を募ったり、父兄が授業を手伝うかたちで学校に顔を出すことで(低学年の教室には大体いつもママがいます)、柔軟で透明度の高い教育の現場が実現しているように思います。ママ・デビューを果たした私の次の目標は、教室デビューです!

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「マヨネーズ」 中国政府系シンクタンクの予想によれば、来年の中国経済成長率は財政出動次第で8〜9%の高成長になるとのこと。これでいくと、政府がその気になりさえすれば、成長はカネで買えることになります。「じゃ、ガンガン買って景気を良くすればいい」と言いたいところですが、財政の原資は税金もしくは国債など所詮は民間からかき集めたカネ。元手がないか借金(=国債)であれば、購買力にも自ずと限界が出てきます。その辺の事情をさておいて、「8〜9%」という数字だけが一人歩きしてしまうのがコワいところ。

西蘭みこと