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Vol.0118 「生活編」 〜主婦の時間〜

「初めての専業主婦となって最初に思ったことは、"収入がない"ということです」と、先日書きましたが、"収入"と引き換えに"時間"を手に入れました。時間の余裕が精神的なゆとりにつながる実感は本人も驚くほどで、今までいかに時間に追われた生活をしていたのかを思い知りました。サラリーママをしていた頃は、限られた時間をどれだけ効率的に使い倒すかに心を砕き、子育ても、仕事も、習い事も、付き合いも、あれもこれもと、お手伝いさんまで巻き込んで欲の張った暮らしを続けていました。そして、「これこそタイム・マネジメント」などと、周囲にも自分にもうそぶき、無理を強いてきたのです。

今ではやっと手に入れた時間を少しでも無駄にしないよう心を砕いていますが、傍目から見たらこれまたせっかちな暮らしぶりに見えることでしょう。しかし、長年しみついた"タイム・イズ・マネー"の貧乏性は早々には改まりそうもありません。しかも天性のぐうたらなので、小学校の時間割のように詳細が決まっていないと一日中本を読んで過ごしてしまいかねず、ある程度の縛りがある方が助かるという、二重の貧乏性でもあります。

今は毎朝6時半頃に起き、7時に子供たちを起こします。以前は6時前に起き、子供たちが起きてくる7時にはもう家にいなかったので、朝はずい分、有意義な時間になりました。さっさと布団を干し、7時半までに子供たちと朝食を済ませ、7時45分には彼らと一緒にその日に出すゴミを持って家を出ます。学校までの所要時間は正味5分ですが、一緒に行って校門前の手作り豆腐店で作りたてのお豆腐を買うこともあります。

その後は近くのお寺の参道脇で草むしり。持ってきているビニール袋がいっぱいになるくらい、ハルジョン、ヒメジョン、タンポポ、ペンペン草、ヨモギ、ハコベ、アザミ、その他美味しそうな雑草を摘むことほぼ5分。そのままお寺の幼稚園へ。そこには15匹のウサギが腹を空かして待っています。「おっはよ〜♪」と声をかけながら、雑草と前夜の夕食で出た野菜くずを食べさせます。彼らがハフハフ食べるのを眺めること約3分。

その後、お寺で無病息災、家内安全、世界平和を祈ること1分。もう一度ウサギ小屋をのぞいて帰宅。新聞をとって7階の部屋まで階段で一気に上がり、部屋の掃除、仏花の水切り、メールのチェックなどして20分ほど過ごし、自動車教習所の1時限目の授業がある時は8時半過ぎには家を出て、44分の送迎バスで教習所へ。2時限目からなら、これに雑巾がけやメールの返事を書く作業が1時間近く付け加えられます。更に後からの講習ならいったん近所へ買い物に出たりもしますが、ともあれ、これが毎朝の日課です。

いずれであっても昼には戻り、洗濯をしたりしているうちに子供たちがわらわらと帰ってきます。午後のお茶をしながらその日の話を聞き、その後は宿題で一人一人が音読するのを姑と手分けして聞き、長男には漢字、次男にはひらがなの補習をして4時か4時半。彼らがゲームポーイかサッカーへ飛び出していく時間です。そうでなければ散髪や図書館に連れ出します。学校からの連絡帳やプリントに目を通し要点をカレンダーに書き込み、提出物に記入したりしているうちに5時近くに。

夕食のメニューが頭の中で固まり始め、米を研いだり下ごしらえをしながら洗濯物をたたみ、姑とたわいもない話をしたりして子供のいない一時を過ごします。6時になると周囲に響きわたるチャイムの音で子供たちがどやどや帰宅。汚れ具合ではそのままシャワーとなりますが、そうでなければテレビの前に直行し7時までたっぷりマンガ・タイム。日本語の勉強にもなるし、自分も子供の頃に楽しんだので、日本のアニメは大いに奨励しています。いよいよ本格的に夕食準備。

7時のNHKニュースを見ながら夕食。「白装束の人たちってどうなったの?」、「シモン(指紋)ってなに?」、「パパはいつ来るの?」と、子供たちの質問攻めに遭いながらあたふたと夕食終了。後片付けをしながら8時過ぎには子供をお風呂へ。ベッドや布団を整えて9時にはお休み前の読み聞かせ開始。ノッてしまうと10時近くまで読んでしまうものの、いつもは9時半でおやすみなさい。今はみんなで伝記に凝っていて、ちょうど「モーツァルト」を読み終わって今日からは「一休さん」へ。自分もお風呂に入り、家計簿をつけ終る10時からがやっと一人の時間。パソコンに向かったり本や雑誌を読んだりで1時過ぎに就寝。

これが毎日、毎日繰り返されているのです。早いもので日本旅行の後、新型肺炎(SARS)回避に子供との居残りを決めてから1ヶ月が経ってしまいました。その間、子供は日本の学校へ、私は退職し5月からは教習所通い。専業主婦とヨメ稼業という未体験ゾーンに足を踏み入れ、SARSが深刻化するまで思いつきもしなかった生活を送っています。しかし、このすべてがニュージーランド移住生活の予行演習に思え、何をしていてもありがたく、充実しています。人間万事塞翁が馬。SARSにもらった時間を大切にします。

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「マヨネーズ」 香港ではベッドに寝るので敷布団なるものがありません。布団を乾す習慣も場所もないため、息子たちには日本に来てからせっせと布団乾しに励む私の姿が新鮮なようです。香港ではうだる暑さの源で恨めしくさえなる陽光も、日本の5月となればひたすら爽やかで、入梅前の好天を一日、一日大切にしています。

先日、敷布団を取り入れる前にたたいていると、次男・善がスッ飛んできて「何してるの?」というので「やってみる?」と布団たたきを渡すと、両手で持ってバシバシたたきながら「テニスの王子様♪」と、ごきげんでした。

西蘭みこと