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Vol.0093 「NZ・生活編」 〜語る女たち〜

「みことさま。この歌、知ってます?
Make new friends, and keep the old.
One is silver and the other is gold.
温くんか善くんがどこかで覚えてきているかもしれませんね。私も子供向けのビデオで覚えました。こういうの、温故知新だったかな。中国語でも日本語でもどう表すのか思い出せなかったところ、ああこれなんだと英語のフレーズがリズムになって出てきました。同時にかつての海外駐在暮らしのことを思い出して可笑しくなりました。あの頃の日本人付き合いにはそういう言葉が当てはまりませんでしたから。駐在も3年から5年を過ぎていくと、「知り合いは増えるけど友だちは減る」という文句が出回ってましてね。お互いがそんな風にお付き合いしていたなんて、滑稽なものです。これからは"知り合いも友だちも増える"暮らしなのだわと改めて人間関係を大事にしようと誓ったのでありました。ではまたお邪魔します。」

これは移住の師と仰ぐ、レディーDからのメールです。私は間違いなく幸せです。ホームページを開設しメルマガを始めただけで、見ず知らずのニュージーランド在住の方からこういうメールをいただけるのですから、本当に果報者です。そしてメールを通じて何度も語り合っていくうちに、見ず知らずの人がかけがえのない友人となり、私の夢を理解してくれ、気にかけ、励ましてもくれます。更に嬉しいことに、メールの中で描かれているNZが、私の想い描くNZに重なることです。もちろんNZにだってネガティブな姿もあるでしょうが、その分を差し引いても十二分におつりがくるほどの魅力を、すでにそこで暮らす人からうかがうのはかけがえのないことです。

日本からの一通。「日本で暮らしていると職業や会社名で地位が自然と決められてしまい、自分でも知らず知らずの間に優越感や、疎外感を感じて生きていかなくてはなりませんでした。しかしNZでは、"誰もかれも穴の開いたシャツを着ている"と言う人もおられますが、一人の人間として堂々と生きていて、人間性が重視されていて本当に素敵な人達だと感じました。

その事を理解した時、私の呪縛も解き放たれ、日本に来ても"社長だからえらい!"などの無意識の圧迫感がなく堂々と意見が言えるようになって、大分日本社会では弊害があります(苦笑)。私もノーシューズや穴の開いたシャツでもニコニコしてビーチや自転車を楽しんでいました。そういう格好はあの国では微々たる事でしたから。家の主人も穴の開いたシャツを大事に使ってました。冬は縫えばいいのですからね。ブランド物の服を、ウインドーからジーット見ていた私とは思えない変わりようですが。」

このメールを送ってくれた彼女は今、キウイのご主人と日本で暮らしています。いずれNZへ帰る予定ながら、現在は夢の実現に向けて邁進中です。お互いの夢は違っても、彼女のひたむきさにはいつも励まされています。「西蘭さんはNZの方が合っているような気がします。結構お金がなくても、綺麗な景色を見るだけで心は豊かでいられます。それが不思議です。自然は本当に力強いです」、なんていう会話がいちいちその理由をあげつらわなくてもあっさりと成り立ち、わかり合えるのは感動的です。 ホームページ「南緯45度自転車操業」の管理人で「ワールドサービス」のコラム欄ではお隣さんでもある米華朋江さんからは、「娘の通うプレスクールにジンバブエからきた3歳の女の子がやってきました。アフリカ、オークランド、南島へと、遠くから引っ越してきただけでも不安だろうに、園にたった一人のばりばりの黒人。あまりに固まっていたので、午前中ずっと一緒に遊んで、モーニングティーも何も手をつけようとしなかったので、膝の上に乗せて一緒に食べました。初めて見る黒人のくるくるの髪のブレイズ(三つ編み)に触って喜んでたりして。縮れ毛の感触って結構気持ち良い(笑)」、というメールをもらいました。

女の子の心細さはいかばかりだったでしょう?そこに優しく差し伸べられる手。その膝はさぞや温かかったことでしょうし、髪に触って「結構気持ち良い」と言ってくれる、おしきせでない受け入れられ方は3歳の子供にでも十分通じたはずです。ドキドキしながら新天地で暮らし始めることにおいて、私もジンバブエからきた小さな女の子も変わりはないのです。こうしてサラリと示される優しさは我が事のように心に響いてきます。

画面上に留まっていた感激を目の前に運んできてくれた人もいます。「メルマガ読者」として初めて姿を見せてくれた彼女には、今でも心から感謝しています。「本当に読んでくれている人がいるんだ!」という実感は大きな励みとなり、私はそれを期に書き散らすことから一歩前に出た気がします。初めて二人が会った後にもらったメールから。「あまりに嬉しくて、帰りがけに1人でニヤニヤしながら歩いていたら、段差に気づかず転んでしまいました。恥ずかしさのあまり、何でもないふりをして歩き始めましたが、痛かったです。また次回お会いできるのを楽しみにしています。」 私もですよ!

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「マヨネーズ」 「語る女たち」というタイトルはパクリです。映画「愛人/ラマン」の原作者マルグリット・デュラスがこのタイトルで対話集を出しています。今回語ってくれた4人に感謝します。移住する前からこうしてお付き合いが始まり、移住してお目にかかれるようになったら?と思うと今からワクワクします。メールの中に散りばめられている生活の片鱗にはため息さえでます。対話を録音したデュラスたちはその合い間にジャムを作ったそうですが、私は女たちのこういう生活感がとても好きなんです。

西蘭みこと