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Vol.0087 「NZ・経済編」 〜踊る経済〜

世界最大手の調査・コンサルティング会社のギャラップと市場調査会社のTNSインターサーチによる、「アジア太平洋諸国・地域2003年展望調査」は、非常に興味深いものでした。なんと言っても目に付くのが、ニュージーランドの"全体見通し"の良さ!今年は「良くなる」という回答が63%と突出して高く、2位のオーストラリアでさえかろうじて51%ですから断トツの1位。ちなみにビリは日本の9%!一桁だったのは日本だけで、下から二番目のフィリピンでさえ17%ですから、日本の弱気は相当深刻。

ところが、"景況感"になると「良くなる」は、アレーシアが45%でトップ。インドとパキスタンが37%でこれに次ぎ、NZは24%と真ん中になってしまいます。その代わり「現状維持」では、NZ、オーストラリア、香港が54%で横並び、「悪くなる」ではNZは"全体見通し"同様、下から2番目の17%でした。ということは、景況感がもともとかなり良く、これ以上大きく伸びるとは見ていないものの、現状にかなり満足しているようです。

これを裏付けるように、"雇用の安定"に対する質問でも、NZは「安定している」という回答が81%で、マレーシアの86%に続いて2位。つまり失業が気になる人は5人に1人。これが日本だと最低の30%で、3人に2人以上は失業の影に脅えていることになります。その結果、"失業率"に対して「大幅に上昇」すると見ているのは、NZと香港がそれぞれ最低の6%で、「やや上昇」と合せてもNZは
37%と最低で、日本は70%と最高でした。

雇用への強気見通しは、当然ながら"新しい仕事を探す難易度"にも反映されていて、「すぐに新しい仕事が見つかる」と答えたのはNZが最高で67%、オーストラリアが66%と僅差でこれを追っています。ところが、3位はマレーシアとインドの38%でガクンと低くなりますので、南半球2ヶ国の好調さが際立っています。ここでも日本は9%と飛び抜けて低く、唯一の一桁です。当然ながらNZは、「見つかるまでにかなり時間がかかる」(26%)、「見つからない」(2%)ではいずれも最低で、2位はともにオーストラリア。「見つからない」の最高は日本の12%でした。全体を見渡すとNZの好調さがピカ一で、平均点の高いオーストラリアやマレーシアがそれを追っているというところでしょうか?

移住を目指す者にとって、行き先の景気がいいことは間違いなく追い風でしょう。不景気の時に、失業率の押し上げや、仕事や社会保障の奪い合いになりかねない外国人を喜んで受け入れてくれる国というのはまずありません。NZ在住の方からは「今の景気がいいとはとても思えない」という声を良く耳にしますが、データを見る限りは他の国に比べてかなり調子が良いのは間違いないようです。

ただし、景気の良さを実感できない人が多いということは、経済全体が底上げされているのではなく、富が偏在しているからかもしれません。海外からの投資、移民が持ち込む資金、観光収入など外からの資金流入に支えられている面が強いことも考えられます。そうしたお金は持ち込まれた後は投資や消費というかたちで、国内経済を潤していくことになりますが、その恩恵に授かれる「勝ち組」と授かれない「負け組」とで格差が生じてきます。また業界改革、自由競争が進んだ結果、多額の資金が業界に落ちてきても調子が良ければ新規参入も増えるため、必ずしも大幅増益につながるとは限らないという現状もあるかもしれません。参入障壁が低そうな観光業界などではこの傾向が強いかもしれませんね。お客さんがたくさん来て、とても忙しいのに、あまり儲からない・・・という状態です。

年金や社会保障で暮らす人にとっては収入が変わらないのに、物価だけが上がっていく好景気はむしろ悪玉で「負け組」ともなりましょうが、一方で土地転がしが上手く行っているような人にとっては額に汗水流して働くのがバカバカしくなるほどカンタンにまとまった利益が上げられる状態が続いている可能性があります。これだけ不動産が上がっているのに株式市場が冴えないということは、泡銭が不動産市場に偏っているのかもしれません。

不公平な話ではありますが、転がす原資を持たざる者はいよいよ貧しく、その逆も真なり、という状況が考えられます。しかし、奢れる者は久しからずで、不動産バブルも膨らむところまで膨らめば後は弾けるしかありません。なかなか自然には小さくならないものです。その際には転がし損ねた不動産を抱えた者がババを引き、不動産担保の借金が首を絞めてくることになります。

経済はいつの時代も終わることのないロンドを舞い続け、その時代や国が"初めて"経験する好景気や不景気は、歴史上、実は幾度となく繰り返えされているのです。"未曾有の好景気(もしくは不景気)"と言っても、よくよく調べてみるとゾッとするほど似通った状況が100年も前に起きていたりします。ですから今のNZの好調と日本の不調が将来のどこかで行き交うことはほぼ確実でしょう。さぁ、景気のいいうちに、移住者へのドアが開いているうちに、行かなくては!年初に当たりネジを巻きなおして頑張ります♪

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「マヨネーズ」  上述の調査結果の余談ですが、日本はどの項目でも「わからない」という回答が特に飛び抜けて高くて驚きました。調査の仕方に不備があったのか、本当に見通しが立てられないのか、単に優柔不断なのか?他の国の「わからない」が軒並み数パーセントから高くても十パーセント台の前半なのに比べ、日本は"全体見通し"や"新しい仕事を探す難易度"で約25%、"景況感"でも
20%、"雇用の安定"ではなんと45%と突出していました。自分の雇用が安定しているかどうか2人に1人がわからないということになります。状況が判断できないとリスクも読めないので、ちょっと気になりました。

西蘭みこと