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Vol.0084 「NZ編」 〜西蘭杯ダービー その2〜

突然始まった"西蘭杯移住エージェントダービー"。出走している各馬にさえそんなものを競っている自覚がないのですから、レースは最初から予想もつかない大混戦・・・と思いきや、さすがキウイたち、堂々かつ淡々としたもので順当に第一コーナーを回って各馬は一斉に第二コーナーへ。香港だったらこの手の問い合わせをしたが最後、ハチの巣をつついたようになり、ワ〜ンと耳なりがしそうなほどの電話攻撃や、これでもかこれでもかのメール攻撃など、頼んだこちらが根負けするようなド根性アプローチが続くのですが、それに比べたらキウイたちは、ずっと紳士的でゆったりとしたものです。

しかし、ゆったりも度を越えるとちょっと不安になります。何社かが「詳細をもっと知った上でアセスメントしたいので」と言って、専用フォームに記入して送り返すよう専用サイトを連絡して来たのですが、そのうちの1社はフォームの返信ボタンを押したとたん、「ご記入ありがとうございます。4〜6週間後にお返事いたします」というオートメッセージが出てきて、夫婦で腰を抜かしそうになりました。「4〜6週間後ぉ?そんなに遅かったら、ニュージーランド旅行へ行って戻って来ちゃうよ〜」と、改めてメールで再確認をとったくらいです。でも「急いでいる」というこちらの事情を話したら、その2日後には計6ページのアセスメントが戻ってきました。「何だ〜。やればできるじゃん♪」と、二人で感激。

こちらが送った最初のメールへの各社の反応は、自己宣伝や今までの実績、質問、手数料体系の説明など、それぞれのウリを中心に簡単なものから数ページに及ぶものまでいろいろでした。こちらもさっそく返事を書いたりフォームに記入したりしてレースは第二コーナーを通過。こちらが最も知りたいのは、どういう方法での申し込みの可能性が一番高いのか(もしくは可能性がないのか)と言う点で、その場合の各社の成功率予想や申し込む際の戦略でした。基本的には成功報酬ですから、最終的に私達に永住権が下りないことには彼らもただ働きになってしまいます。ですからこの辺は双方じっくり詰めるべきでしょう。

さっそく第二弾の返事。まずは「ロシアンレッド」。「うちは今まで一度も申請に失敗したことがなく、ほとんどのお客は全額前払いするが、何だったら50%の前払いで残りは永住権取得時の後払いでも構わない」と言ってきました。100%の成功率には惹かれますが、「失敗した場合、前金は返金されるのか?」と、なおも食い下がって尋ねると、「そんな可能性はないだろうが、これは実質コストなので返金は"No"」とのお返事。失敗しても半額取られるというのが解せず、具体的にどういう申請をするのかなどのアイデアも出てこないことから、最初の鼻息の荒さからはちょっと失速気味。

一方、最初からかなりエキセントリックでマイペースの「ノーザンローズ」。費用体系にも成功率にも一切触れずに、相変わらずの質問攻めで「会社経営もしくは管理職経験を具体的に記述せよ」と言った細かい質問のやり取りが続き、なかなか手の内を明かさない超〜慎重派。質問の内容から見てロングタームビジネス・ビザ(LTBV)一本に絞り込んでいる様子ながら、この徹底した無愛想の中、話を進めて行くやり方は見上げたもの。一番人気とは程遠いものの、実体がつかめず大穴期待が続きます。

ビジネスライクな「キウイトラスト」は、「リロケーション・ビザはどうだろう?」と全く新しい切り口を提供してきました。このビザは海外企業がニュージーランドに本拠地を移転させるかNZ支店を設立する際に発給されるもので、夫の経歴を見た上で、「会社にかけあってNZ支店を出さないか」というかなり思い切った提案をしてきたのです。着想はワルくなかったものの、夫の会社は既にNZ支店を持っているので可能性はありません。でもこの柔軟な発想には感心しました。オーナー経営企業だったらオーナーさえ"Yes"なら可能な方法でしょうし、扱う商品によってはNZ市場でも十分採算化させることもできるでしょう。費用の話も詳しく、全体の仕上がりとしては一歩リード。

ジョッキーが決まらず、最初にややつまずいた「オージースター」。いったんスピードに乗れば大手の組織力を感じさせる手厚い対応。決定したジョッキーの対応も良く、好印象は相変わらず。ここのお勧めもLTBVで、過去の成功率は98%!ところがもらった手数料を見て目がテンに。なんと料金が他社の約2倍!「これはいくら何でも高いのでは?」と、考え込む私達。料金を明かしていない「ノーザンローズ」以外、あとの2社は諸雑費のところが未確定ながら、LTBV申請ではほぼ同額だったので、「多分この辺がスタンダード料金なんだろうね」と、夫と話し合っていた矢先なのでさすがに目を剥きました。良いものは高いのか?こうしてレースはやや混戦気味のまま、第三コーナーへ。(つづく)

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「マヨネーズ」  サンタクロースに会ったことがあります。あれは93年のことでした。香港ではクリスマスイブは4時に仕事を切り上げて帰っていいのですが、私は仕事が終わらずいつも通り6時過ぎに退社するところでした。普段より灯りを落としたエレベーターに乗り込もうとすると、中に何かが一杯に詰まった印象。良くよく見てみるととても大柄な黒人がクリスマスツリーのようにたくさんプレゼントをぶら提げて一人で乗っていました。

「この人きっとサンタクロースだ」と思うと何だか可笑しくて、クスッと笑ってしまいました。それが鏡張りになったエレベーターの内装に映り、お互い目が合いました。彼は「初めてのお子さん?」と、当時妊娠8ヶ月目に入っていた私に話しかけてきました。「ええ」と答えると、「子供はいい。親になるっていうのは本当にいいもんだ」と言い、お互い「メリークリスマス」と挨拶してエレベーターを降りました。

それ以降、彼に会うことはありませんでした。私達のオフィスの上はアメリカ系の銀行が一行入居していただけだったので、上から降りてくる人は来客者でない限りはその銀行のスタッフでした。でも黒人に会ったのは後にも先にもあの1回限り。ちなみに友人のご主人が黒人のアメリカ人でブラックのネットワークはかなり強いので、あの銀行に黒人がいるかどうか尋ねて見ましたが、どうも該当者はいないようでした。

そんなこともあって、「やっぱり本物だったんだ」という思いをますます強くしました。彼に祝福された温は翌年2月に生まれました。今でもこの季節になると彼を思い出します。テーラーメードらしい仕立てのいいスーツに年季の入ったトレンチ、ドンペリのシャンペンに、カルチェやティファニーのショッピングバックをた〜くさん提げた、かなりブランド好きなサンタクロースでしたけれど・・・。

皆様におかれましては、楽しく心穏やかな素晴らしいクリスマスを。そして地球のすみずみにまで愛と平和を。

西蘭みこと