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Vol.0078 「生活編」 〜十年周期〜

玄関のベルが鳴り、ドアを開けてみると隣のご主人でした。ご主人と言っても夫の元同僚で、家族ぐるみのお付き合いをしている友人でもありました。そもそもこのシンガポールで3軒目となるこのマンションに越してきたのは、彼らの家に遊びに来ているうちにここが気に入ったからでした。「せっかく早く帰ってきたのに、うっかり鍵を忘れて家に入れなくて・・・」と、言う彼にお茶を出しながら二人で世間話を始めました。いつもは二組の夫婦として会うので、こうして二人で話したことは後にも先にもあの時だけでした。でも今から思うと、あのひと時はまるで神様が授けてくれたような一刻でした。

「人生に周期があるって知ってた?」。突然、彼が切り出しました。こちらが反応しかねているのを見て取ると、「ある日、何でこう何もかもが上手くいかないんだろう、って考えてたんだ。そうしたら急にわかったんだよ。"俺には7年に一度、運のいい年がある"って」と、言い出しました。彼は当時、脱サラして自分で事業をしていたのです。「"だから、あと1、2年でこの難局も乗り切れる"ってわかったら急に気が楽になってね。最近はちょっと調子がいいんだ」と、嬉しそうに語りました。

その時、外で音がして奥さんが帰宅したらしく、彼は私に強い余韻を残したまま帰っていきました。話していたのはせいぜい20分ぐらいなものでしょう。でも、私にとっては人生の啓示にも匹敵する貴重な時間でした。一人になってから彼のアドバイス通り、思い出せる限りの記憶を辿り、その年の一番印象に残る出来事を思い出し、それがプラスだったのか、マイナスだったのかを判断して周期を探してみました。2、3歳の記憶が一番古いものの、生活の断片でしかありませんので、はっきり甲乙がつくのはやはり小学校に上がってからのものでした。ちなみに私は2月生まれの早生まれです。

8歳=特に印象はなく中立。9歳=友人関係で苦労してマイナス。10歳=転校生と仲良くなりプラス。担任の先生からも大きく影響を受ける。11歳=その継続で中立。12歳=中学生になり新たに女友達に苦労しマイナス。13歳=男の子が急に大人びて、いい友達となりプラス。14歳=受験勉強に専念し中立。15歳=第一志望校に入ったものの受験校の中で平々凡々な成績となり、片思いで鳴かず飛ばずのマイナス。16歳=片思いが実り一気にプラス。17歳=同じクラブの女の先輩が入った大学を第一志望校に決め、クラブもやめて受験勉強突入で中立。

ここからが大学生で、大人の生活のスタート。18歳=一番入りたかった大学に入学したものの学科が第二志望で目標が定まらずに冴えない1年でマイナス。19歳=初の台湾訪問で突然、台湾に開眼。中国語に本腰を入れ始めてプラス。20歳=一人暮らしを始め、バイトと台湾と映画に専念して中立。21歳=ゼミの担当教諭が客員教授とて渡米してしまい、指導教授不在のまま卒論を書き終えややマイナス気分なまま卒業。

ここからはいわゆる遊学(今のプー?)時代。22歳=大学卒業後1週間で台湾へ。嬉しくて道を歩いているだけで涙が出るほどバラ色の毎日。仕事、友人にも恵まれる。23歳=その継続で中立。24歳=渡仏したはいいけれど、アジアが恋しく即後悔。でもせっかくなので1年は居ようと思い直すが気分はかなりマイナス。25歳=香港で職探し。誕生日直後に仕事が見つかり絶好調。26歳=その継続で中立。27歳=天安門事件勃発で中国ビジネスが中断しマイナスに。すべてを仕切り直したく、退社して香港を離れる。

28歳=シンガポールへ。直後に夫に知り合い婚約、転職して金融業界へと、大きな変化がプラスに出た年。29歳=結婚。こうして見て来ると、3年周期なのが良くわかります。好転した年の次の年もだいたいまずまずで、その次に冴えない年が来ます。でもそこを乗り切ると、次の年にはまた好転・・・この繰り返しが約20年続きました。ところが、結婚以降はこの3年ごとの大波小波が均質化し、プラスとマイナスが良くわからなくなってしまいました。結婚を通じて運気が完全に変わってしまったようです。

その代わり、もっと長期の十年周期がはっきりとしてきました。19歳の台湾初訪問、中国語、アジアとの本格的な出会いでその後10年間のアジアの時代が幕を開け、29歳では結婚と金融業界という、これまたその後10年間を左右することがスタートしました。そして迎えた39歳。かなり確信的に何かが起きるのを待っていましたが、どっちの方向から、いつ何が起きるのか皆目見当もつきませんでした。でもそれがニュージーランド旅行中のオークランドで、雷に打たれるように突然判ったのです。「ここだ!これだったんだ」。移住は運命です。

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「マヨネーズ」  お慕いする占い師のケン・リー先生によれば、人生は数え年で回っているそうで、私が19、29、39歳で転機を迎えているのは20代、30代、40代での変化ということで、非常に理に適っているそうです。

面白いことに転機の予兆は1年前に既にあるのですが本人が気づいていないことです。実際に大学の第二外国語で中国語を習い始めて中国に行ったのは18歳でしたし、28歳で夫に出会い、大学の先輩に声をかけられて銀行に転職しました。38歳にはビーズを始め手作りに開眼しているので、40代は「NZ」と「手作り」がキーワードになりそうです。

そして大きな変化が2月の誕生日以降、2、3月辺りに集中しているのも興味深いです。ですからその直前の新年をどツボ状態で迎えたことが何度あったことか・・・。

西蘭みこと