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Vol.0077 「NZ編」 〜移住エージェント訪問記 その3〜

訪ねた移住エージェントに「100万NZドル(約6,000万円)用意できるか?」と出し抜けに聞かれ、結局その可能性がなかった西蘭家は再び振り出しに戻りました。でも私達はあのコンサルタントに感謝しています。これ以上のお付き合いにはならないでしょうが、グズグズしていた私達に一瞬でも明確なビジョンを見せて目を覚まさせてくれたのですから、ありがたいことです。選択肢はほとんどなく、条件は厳しくなる一方。本気で移住したいならば、コーヒーを挟んで話し合っている段階ではなく、立ち上がって動き出すしかないところまできているのです。新年度に入って条件や受け入れ人数がガラリと変わる可能性もあります。

しかし、私はそれ以上にニュージーランド政府に感謝しています。これは皮肉でも何でもなく本心です。「とりあえず永住権を取って、それから現地で考えよう」と呑気に始まった私達の移住計画は、申請条件というハードルがジリジリと上がってくる中で今年6月以降は全く通用しなくなってしまいました。現地での雇用が確定していない限り申請さえできなくなってしまったのです。「仕事を見つけなくては」と、少しは問題意識が高まりました。その後もハードルは高くなる一方で、今月19日の発表では今まで変化がなかった事業部門での条件見直しも始まり、来年度の抜本的な条件変更の可能性も示唆されています。

こうした中で、今までは「移住した〜い♪」というところで止まっていた思考が、「自分達に何ができるのか?」という足元の確認と同時に、「向こうで何がしたいのか?」という移住後の生活を根本的に見つめるところへと進み、どうやったら生活者として受け入れてもらえるのか、そのためには自分達が何者であり、どこまでNZという国に貢献できるのか(またはできないのか)と、考えを煮詰めて行かざるを得なくなりました。ユルユルだった自分の構想が19日以降の10日間で、一ひねりも二ひねりも絞り込まれてきた気がします。これは全くもってNZ政府のお陰です。

更に嬉しいことに、日頃からすっかりお世話になっているNZ移住の師、レディーDからは"ここに頼んで無理なら、絶対無理といえるほどの会社"ということで、トップが元移民相いう最大手のエージェントを紹介され、別の読者の方からもキウイのご主人のお勧めということで同じエージェントを紹介されました。こうして気遣って下さる方がいるということは、思いがけないものであればあるほど嬉しく骨身にしみるものです。もともと、あまり落ち込まない私達、投資移民のことなどキレイさっぱり忘れて、頭はさっさと次のステップへ。

そして何よりも嬉しかったのは、この一連の出来事を通じ、今まで私主導だった移住計画に初めて夫が本格参入してきてくれたことです。もともとホームページに"2006年までのニュージーランド移住を目指している香港在住日本人ファミリーの「来たるその日」までの記録"というテロップを流したのは彼でした。約1年前にホームページができあがったその瞬間まで、私は自分たちの計画に期限があることも、それが2006年だということも知りませんでした。

「どうして2006年なの?」と、今では読者の方に真っ先に聞かれることを、私も聞かずにはいられませんでした。「年齢が40歳になるとパスマークが1ポイント減るだろう?だから僕が39歳ギリギリで申し込んだとしてその年かな?と思って」、という答え。なるほど、理由があったのです。それまでは雲を掴むような話だった移住計画に期限ができたことが嬉しくて、小躍りしたいところでした。少なくともその期限を私ではなく、計画に嫌が応でも付き合わざるを得なくなってしまった夫が決めてくれたことが嬉しかったのです。

でも人間はわがままです。その感動も数ヵ月ですぐに、「あと5年もあるなんて、ずいぶん先だな〜」という思いに変わってしまい、申請条件が厳しくなってきたこともあり、「早く行こうよ〜」と言っては夫にストレスを感じさせるようになってしまっていました。しかし、彼の仕事は中国の経済成長に上手く乗り、目に見えて拡大しています。外資らしく年初に年間目標を定めるだけで、あとは1年後のボーナス査定の時期まで完全に放し飼い状態という職場環境も彼にはぴったりで、水を得た魚とはこういうものかと思うほど、活き活きのびのびと働いている真っ最中です。その現場から彼を引き剥がすのはあまりに酷でした。

「NZはいい国だし、いつかは行ってみたいけど今は勘弁」というのが夫のいつもの弁。私はその台詞を前に口をつぐむのがやっとでしたが、実際のところ想いは募るばかり。「どうなるんだろう?」と思いながらも、運気の潮目が変わるのをただひたすら待っていました。いつか、何かが起きるだろうと思いながら・・・。9月に入り「IELTSを受けよう」と言い出したのは意外にも夫でした。そしてエージェント訪問。何とか不動産担保ローンが組めないかと各銀行へ問い合わせてくれたのも夫でした。

私が突然、移住を思い立ってから、かれこれ2年。夫婦の気持ちがやっと一つになってきました。「いつでも行ける」と思っていたのが、日を追うごとに条件が厳しくなって来て、夫にもチャレンジ精神が湧いてきたようです。このやる気に火を付けたのは、私ではなく紛れもなく彼女です!幸運の女神(?)にそっとささやく、"Thanks, Ms.Dalziel!(NZの移民相)"

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「マヨネーズ」  今年も残すところ一ヵ月。クリスマスが近づいてきています。移住後の夢の一つに、"庭にモミの木を植える"というのがあります。毎年それに飾り付けをして、かの地に根を下ろした自分達を、クリスマスとともに祝いたいのです。どうか来年こそは…。

西蘭みこと