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Vol.0043 「NZ編」 〜拝啓、クラーク総理〜

「Helen Clark raises her arm in triumph as she prepares to speak to supporters in Auckland Saturday night.」というキャプションのついた「ニュージーランド・ヘラルド」(インターネット版、ロイター写真)でのクラーク首相の笑顔は最高!7月27日に行われた総選挙の即日開票で、彼女の率いる与党労働党が勝利し、第二期クラーク政権の続投が決まった瞬間です。労働党は得票率を前回99年から2.5ポイント上回る41%に伸ばし、3議席増やして52議席としました。

ニュージーランド議会は一院制で定数120議席ですから、60議席以上を抑えないと安定政権になりません。クラーク首相は繰り上げ選挙という勝負に出、革新連合党(2議席)との二党連立政権の樹立を目指しましたが、過半数制覇には失敗しました。過半数への残り6議席以上の確保は、下馬評通りに緑の党(1議席増の8議席)や予想外に躍進したキリスト教系中道の統一未来党(1議席から9議席に一気に拡大)との閣外協力を求めていくことになるようです。いずれにしても早々に新内閣の全容が固まるので今から楽しみです。

野党第一党で保守系の国民党は過去最低の得票率となり前回の30.5%から21%へと転落し、歴史的な大敗を喫しました。一方で、マオリ政策やアジア系移民の受け入れ抑制等、選挙期間中その"人種差別姿勢"が問われたニュージーランド・ファースト党は、前回の5議席から13議席へと大躍進を遂げました。国民党から超保守派の票がこちらに流れたようです。「白人の負担」に代表されるニュージーランド・ファーストの言動は、NZの素晴らしさに惚れこんで移住を目指す者にとっては聞き捨てられないものですが、多数のミニ政党が出てくることで、さまざまな意見が国政レベルに反映されてくることになるのでしょう。これは広く指摘されていることでもありますが、「YES」か「NO」かの究極の選択しかない二大政党政治の終わりを示してもいるのかもしれません。

私のような外国人で、かつ1年半のにわかキウイ・ウォッチャーにNZ政治を語る資格などありませんが、一野次馬としてはクラーク首相に勝って欲しかったというのは正直な気持ちです。彼女と労働党が99年以降取り組んできた行財政改革の見直しは、高所得者への税率引き上げ、関税廃止計画の見直し、低所得者向け国有銀行の設立など、私の中のNZへの好感の礎になっているものが少なからずあるという表向きの理由以外に、女性の一人として、首相の言動に拍手したい瞬間が結構あるからなのです。

昨年は「当面の仮想敵国が見当たらない」という極めて現実的理由で空軍廃止を決定してしまいました。為政者たるものはいつの時代も、主義主張を問わず武力、権力は手放したがらないものだと思っていたので、この潔さには感動しました。これに関しては、今でも「女だからできた決断では・・・」と、思っています。

これには続きがあって、昨年9月の米国同時多発テロ以降、野党が「空軍を廃止すれば航空機テロに対して無防備になる」として政府に再考を求めたのに対し、"「米国は世界最強最新鋭の空軍を保有しているが、あのテロを阻止できなかった。わが国の空軍力では、事実上無力に等しい」と述べ、空軍廃止の決定に変更はないとした"(「月刊ニュージー2001年11号」より)と、きっぱりと突っぱねたのには、あっぱれ!特にその発言が、テロ直後であったことは注目に値します。

一度廃止して無用論が実証されてしまえば、政権が保守に変わって復活論が持ち上がっても、その必要性に説得力がないので莫大な予算を組んで復活させることは非常に難航することでしょう。もちろん中道左派政権が続くのであれば、廃止論がますます既成事実化されていくでしょうから、この件に関して首相はどちらに転んでも高見の見物の特等席を確保しているわけです。

今年のエリザベス女王のNZ訪問の際にも、労働党の党主として国家元首に必要以上の礼を尽くす必要がないという考えをかなりオープンにしていただけでなく、女王訪問で世界のメディアがほんの一瞬といえども自国に注目する機会を捉え、受け入れ準備の一環として自国製品、サービス、技術をちゃっかり宣伝し、女王と同席する際にもタブーとされているパンツルックで現れたりと、つい場外から「いいぞ、いいぞ〜〜♪」と野次が出るような、言動がたくさんありました。

女王の視察候補地決定に関しての首相発言で、「是非わが国が世界に誇るハイテクの・・・」と言うので、「えっ?そんな物があったの?」と思ってよくよく記事を読むと、「最新ヨット技術は・・・」と続き、思わず椅子から落ちそうになりました。こんなツボを抑えた発言も見逃せず、首相関連記事には極力目を通すようにしています。でもネット越しに見ているより、現地で丸ごとウォッチした方が面白いのは、CDとライブコンサートの違いぐらいあるはずで、何としても彼女の政権下に移住したいものです。

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「マヨネーズ」 総選挙直後ということで、ちょっとセンシティブな政治の話を取り上げました。私はクラーク首相のネットパパラッチと言ったところです。国家元首であるエリザベス女王、シップリー前首相、現クラーク首相と、NZは女性が国家の中枢をかなりの期間にわたって抑えているわけですが、2001年4月19日のcafeglobe.comによれば、"「ニュージーランドは女に仕切られている!」と英デイリーテレグラフ紙(01年3月22日付)が騒ぎ立てた(中略)。面白いのは、ニュージーランド人男性が全然気にしていないこと。「仕事なんて女に任せておいて、オイラたちはさっさとビールを引っかけに行くのさ。1893年に女に選挙権を与えた時点でこうなることはわかっていたよ」なんて投書がデイリーテレグラフ紙に送られたくらいなのだ。"とあり、クラーク首相の長期安定政権へのお膳立ては揃っているようです。これなら間に合うかも・・・♪

西蘭みこと