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Vol.0036 「生活編」 〜十年彗星・楊貴妃になる夏〜

日本は空前の化粧ブームだというのに、最近、化粧を止めました。化粧し始めてかれこれ20年間ずっと続けてきたことなので私にとっては一大事です。正確には基礎化粧を止めたので、アイシャドウやアイラインなどのメークは若干しますが、それもしたりしなかったりでスッピンに眉を描いて、マスカラと口紅だけ塗って出勤することも珍しくなくなりました。

化粧は好きでした。仕事へ行く前の慌しい中、化粧水から始まって最後に香水を一振りするところで終わる一連の作業は儀式のように毎日欠かさず繰り返されてきました。鏡の中でケからハレへと変わっていく顔は平坦な日々の中でのささやかなメリハリであり、女を感じる時でもあり、家庭から外へと出て行くのに気合いを入れる瞬間でもありました。子供たちが小さかった頃は鏡に向かっている私を見て、平日と週末を区別していたほどです。

でもその儀式を止めました。朝、洗顔したら化粧水もつけずにクリームを塗るだけ。これだったら服を着替えてもファンデーションが服につくことはないし、午後になって化粧崩れすることもありません。化粧ポーチも持ち歩かないし、化粧をしていた時間で出勤前にパソコンを立ち上げメールやニュースのチェックができるようになりました。今のように暑ければ好きな時に思いっきり顔を洗ってスッキリすることもできます。これはみんな化粧をしないことがなせる業です。そして毎月かなりの出費だった化粧品代が激減しました。

すべては10年に一度、とんでもない贈り物をしてくれる彗星のような女友人からのメールで始まりました。「漢方の化粧品に切り替えたら肌がどんどん白くなり始めて、もう気持ち悪くてファンデなんて塗れなくなってしまった」ということが唐突に書いてあり、化粧をしないで会社に行くことなど想像もできなかった私には何のことやらさっぱりわかりませんでした。でも「肌がどんどん白くなる」という一言には、子供を出産して以来のシミに悩まされていただけに大いに心惹かれ何度かメールをやり取りしてみました。

その結果、シンガポール在住の台湾人エステシャンのリリーさんが独自に開発した漢方化粧品がすべての発端だということがわかりました。自身も化粧焼けで悩んでいたリリーさんは中国人の間では最も美人で誉れの高い楊貴妃が使っていた化粧品の研究に取り組み、美肌で知られた彼女が使っていたものを古典文献を基に漢方医と再現してしまったのだそうです。「そんなバカな〜!」と正直言って半信半疑だった私を見透かしたように、友人は前回のネコ同様、天空を通り過ぎながらリリーさんの化粧品一式を送り届けてくれました。

そうは言っても友人に全幅の信頼を寄せる私は試してみることに。化粧を落とし、全く泡立たないカレー粉と亀ゼリーを足して二で割ったような匂いがする洗顔粉でスクラブするように洗顔した後は、かなりまったりした専用クリームを塗るだけ。あとは日焼け止め、下地、ファンデを除くどんな化粧品も使っていいそうです。夜は虫干し前の着物のような匂いがする真緑色の水溶き粉パックを毎晩する以外、やはり洗顔+同じクリームのみの超カンタンさ。全部で洗顔、クリーム、パックの3ステップしかないのです。

私は妊娠以降ホルモンバランスの変調で、頬に横に広がる形で薄く広くシミができてしまいました。色といい、場所といい、日焼け止めを塗らないで日焼けした感じにそっくりで結構健康的に見えたりして、知らない人には「アレ?ゴルフでも行って来たの?」と言われたりします。陽に当たると濃くなるし、二人目の妊娠+出産で更に広がって色も一段と濃くなってしまいました。カバー力のあるファンデで隠し、プチ整形以外のほとんどのことを試してもいたのですが目立った効果はなく、かれこれ8年の付き合いでもあり半分諦めかけていた矢先でした。ですから「どんどん白くなる」の一言にかけてみることにしました。

結果はビックリするくらい良好です。シミはもちろんわかりますがスッピンでもイケるようになりました。回りの人からも「ずい分薄くなったね。」と驚かれるほどです。何よりも化粧をしない気持ち良さを知ってしまって、もうファンデの息苦しさには戻れません。リリーさんと友人に心から感謝しながら、今日も鏡に向かい、「人を幸せにしたい」というリリーさんの心意気に心底感服しています。今年は楊貴妃が大好きだったというライチが空前の豊作で驚くほど安く出回っていますが、その甘酸っぱさに舌鼓を打ちながら"楊貴妃になる夏"本番です。

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「マヨネーズ」 私の"10年彗星"ことシンガポール在住の久保優子は確かちょっと前に「“本書いたんだ〜”などと言ってたような?」と思って、名前をヤフーで検索してみると、ヒットするする・・・。かなり親しいはずの友人の近況をネットで検索して知る昨今。しかし、私達の間は10年1日。相変わらずのネコ談義に花が咲き、仕事だの夢だのの話はほとんどなし。「ニュージーランドに移住しようと思ってるの。」と言うと「あそこにはイチジク農園をやってる友人がいる。」と明後日の方向からの返事が届く始末で、あっぱれ、あっぱれ。

まだお会いしてませんが私の一生の恩人となったリリーさんの化粧品についても唯一ここで紹介しています。みんなに「みことさん、今日カレー食べた?」と言われるこの匂い。たまらなく好き♪

西蘭みこと