「西蘭花通信」Vol.0737 ハワイ編 〜ハワイのオハナ〜       2018年3月10日

2017年7月7日という「7」続きの日に購入した、ハワイのホテルの1室。住宅投資はしていても、ホテル投資は人生初。しかも購入を決めた時点で、夫婦して一度しか訪れたことがなかったハワイ。
「こんなんで大丈夫なんだろうか?」
と思いつつ、資金はなくても(笑)、そこそこの経験と度胸だけはある私たち。
「細かいことは買ってから考えよう!」
と希望の部屋が売りに出た瞬間に飛びつきました。(※良い子は真似しないように・・・笑)

あれから半年以上が経過しました。今のところローンに潰れることなく、思った以上の客室稼働率を達成しつつも、ほぼ想定内の収益(ローンの返済があるので投資としては赤字)で、なんとかなっています。この度、年1回のオーナーズ・ミーティングなる、マンションでいえば管理組合の総会、上場企業で言えば株主総会のようなものがあったので、再びハワイに飛んで参加してきました。他のオーナーたちにも会ってみたく、さらに経営を一任しているホテルマネジメント会社の経営陣の声を直接聞いてみたいと思いました。

会場はホテル内のカンファレンスルーム。こういう機会でもないと入れない、大きく豪華な部屋。壇上には理事たちがズラリと並び、要職のいくつかはマネジメント会社の社員が務めていました。進行役はホテルと利害関係のない中立な立場の専門職でした。進行は株主総会と一緒でできるだけ速やかに、質問や文句が出ないよう、さっさと済ませるのが鉄則でしょうが、それが見え見えすぎてもオーナーの心象を悪くするだけです。理事の紹介、経営報告、質疑応答、間の取り方、全てがスムーズでいながら、温かみも感じられました。

ミーティングの山場である新年度の理事の選出が終わると、雰囲気はグッとリラックスしたものになりました。こうなればホテルマネジメント会社のリードで、彼らがぜひとも進めたいロビーエリアとプール周りの大改装工事に王手がかかります。ホテルとして競争力を維持するには攻めていかなければなりません。幸い歴代のオーナーたちがこつこつ貯めてきた貴重な修繕積立金もあり、ここは関係者一同、勝負の出どころです。

経営報告や質疑応答で理事たちが次々に発言する中、
「なんて聞き取りやすい英語なんだろう!」
と思ったら、発言していた多くがオーストラリア人でした。
「そうか!オージー(オーストラリア人のこと)なのか。」
隣国とはいえ、ニュースやラグビーの中継、身の回りの知り合いや旅行中など、オージーの英語を聞く機会は多く、彼らの英語はヘタをするとNZ人の英語よりもクリアで聞きやすく、急に親しみを覚えました。

特にホテル支配人の話に引き込まれたのは、英語のわかりやすさだけではありませんでした。
「仕事柄人前で話し慣れているから?」
「ホスピタリティー産業の人だから?」
と、自分も仕事でプレゼンテーションというものをしてきたせいか、ついスピーチのテクニックに気をとられてしまいましたが、すぐにこれは小手先のテクではなく、話の内容に引き込まれているのだと気づきました。

1年に1回のこの機会を、卒なく耳あたりのいい話でさらりと流すのではなく、明確なビジョンとそれを実現しようとするパッションでオーナーたちを納得させ、計画に引き込む場にしようとする意図がありありと伝わってきました。それぐらい経営陣は改装に真剣でした。24時間365日の営業を続けながらの工事は間違いなく一大事業で、経営陣として莫大な投資だけでなく、通常営業の継続という難題にも責任を持たなければならず、支配人の言葉にはトップとしての覚悟が感じられました。その誠実さにも好感が持てました。

ワイキキの賑わいとは裏腹に、ここ数年は航空各社がホノルルのあるオアフ島以外の島への直接乗り入れを積極化させており、ホノルルのホテルは旅行者の平均滞在日数が短くなる傾向に直面しており、高級ホテルでさえ集客と宿泊料金の維持に懸命なのだそうです。確かに期間限定であっても、
「えっ?!このホテルがこんな料金?」
と思われるような広告を目にすることもあり、私たちのホテルもこの趨勢の例外ではありません。その中にあっても投資した部屋は非常に高い稼働率を維持しており、改めて経営努力が理解できました。

「時代遅れにならないタイムレスで、ハワイ・バリュー(ハワイの価値)を重視したデザインを。」
という言葉も嬉しいものでした。NZでもデザインとなると先住民族マオリのモチーフやそれの意味するところが大いに尊重されます。それらは歴史や文化に裏打ちされた色褪せない洗練と国家としてのアイデンティティーや誇りを併せ持つもので、その価値は多くの人と共有できるものです。支配人が力強く、
「私たちはオハナなのです。」
と断言したとき、会場から言葉にならない小さなどよめきが漏れました。

オハナとはハワイ語で「家族」。必ずしも親類縁者だけを指すものではなく、「仲間」というべき間柄を指す場合もあります。マオリにもほぼ同じ概念のファナウという言葉があり、「私たちはオハナ」と言われたことで、新米オーナーの私の中に初めて仲間として受け入れられた実感と当事者意識が芽生えました。その言葉に居合わせた全員が同じ舟に乗っていることを、舟が向かう先を理解したように感じました。そう、私たちはオハナ!

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「マヨネーズ」

会場を包んだ温かい雰囲気はウェルカミング(歓迎)でもホスピタリティー(歓待)でも言い足りない気がして、やっと思いついたのがアコモデーティングでした。しかし、この言葉、日本語では順応、受容、柔軟、寛容、親切、便宜、融通など一言で表すには難しく、受け入れられるような、溶け込むような、まさに「オハナ」という一言がその全てを表しているように感じました。3月のハワイは涼しく、なかなか良かったです。

(ミーティングの後のディナーでは本格的なハワイ料理が供されました。一頭丸々のカルア・ピッグ→)

西蘭みこと 


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