「西蘭花通信」Vol.0736 生活編 〜ココとの1年〜                  2018年2月6日

去年の今頃配信した、〜小夏物語:初夏の出会い〜〜小夏物語:晩夏のお別れ〜 は、2012年の終わり頃、NZでいえば夏の初めに庭に姿を現した白黒の野良猫の話でした。小夏と名付け外飼いながらも可愛がってきました。そんな小夏が2016年の夏、それまで一度も見たことがなかった小柄の白黒猫を伴って突然庭に現れ、私たちだけでなくお隣さんまでびっくり仰天でした。当時は小夏の娘だと信じていたので、猫は小夏の子としてココナツと名付けられました。その経緯はメルマガのとおりです。

ココナツは身ごもっており、2017年2月2日、産後1ヵ月経ったところで捕獲して去勢し、子猫2匹は里親を探してもらうよう獣医に託ました。翌3日には手術を終え、ケージに入ったまま帰ってきました。ちょうど節分の日で息子が友人を呼んで、賑やかに豆まきパーティーをしていました。完全に野良猫だったココナツもケージから出ようと賑やかに暴れ回り、顔に擦り傷を負うほどでした。4日には庭に放しました。

しばらくの間は甲高い声で姿が見えなくなった子猫たちを呼び、その声に胸が締め付けられる思いでした。7日には小夏も捕獲に成功し、獣医に連れていきました。その結果、メスだと信じていた小夏がオスで、猫免疫不全ウイルス(FIV)が陽性の猫エイズのキャリアであることが発覚しました。外飼いではウイルスを拡散させる恐れがあるため、獣医の指示で安楽死させることになってしまいました。

子どもも愛するパートナーも失ったココナツはココと呼ばれ、我が家とお隣さんで食事を与えて飼い猫同様に見守っていくことにしました。小夏に連れられて来るまでどこにいたのか見当もつきませんが、ココはどこにも行く気配がありませんでした。すぐに我が家の飼い猫で、小夏に似て白い靴下を履いた白黒猫コロに懐き、ほとんどの時間を我が家の庭で過ごすようになりました。

夏が行き朝晩冷え込むようになった頃、ココは飼い猫たちを真似て猫ドアをくぐることを覚え、4月には自分から家の中に入って来るようになりました。そのうち長雨が続く寒い冬を迎え、ココは夜だけでなく、私たちがウロウロしている日中も家の中で過ごすようになりました。飼い猫を見習ってせっせと家猫修行に励み、決まった時間に食事をし、オモチャで遊び、自分専用のベッドで寝ました。私たちもココを本格的に飼う覚悟を決め、3匹を平等に扱い大事にしてきました。

ココは家の中にすっかり慣れた反面、私たちが触れることだけは許さず、頭でもなでようものなら後ろにすっ飛びました。
「いつになったらブラッシングをしたり、ノミ取り薬を塗ったりできるのかしら?」
と、家猫となったからには協力してほしい点もあったものの、野良として生まれ育った経歴に敬意を払ってココがそれを許すようになるまで待つことにしました。それでもご飯の時間になると嬉しくて我慢できなくなるのか、用意をしている私の脚に後からそっと擦り寄ってくることもあり、それが唯一の接点でした。

「お隣さんから『コロが家にいるか?』って電話が入ったんだ。」
3日に外出から戻ると、夫が言いました。話を聞くと、私たちは面識のない近所の人が、『お宅の前で夜中に交通事故に遭った白黒猫を助け、獣医に連れて行く途中で息絶えた』と、お隣さんに言いに来たそうです。驚いたお隣さんが白黒のコロがいる我が家に電話をしてきたのです。私たちはその日の朝、コロを目にしていました。
「ココは?」
私の質問に夫がはっとし、
「そういえば見てない!」

恐ろしい予感は的中してしまいました。近所の人がクルマで家の前の道を通りかかった時、お隣さんとの境界辺りに猫が倒れており、すでに事故の後でした。夜間営業の獣医に駆け込んだものの間に合わず、荼毘に付してもらうよう頼んでくれたそうです。3日午前2〜3時のことでした。

ココはほとんどの時間を我が家かお隣さんの敷地内で過ごし、私たちの誰も道を渡る姿を見たことがなかったので、お隣さんも白黒猫と聞いてコロのことしか思い浮かばなかったそうです。ココは野良猫だっただけでなく、幼い頃の栄養不良のせいか片目が見えなかったので何事にも慎重で、道を渡って遠出しているなど思いつきもしませんでした。

こうして2017年2月3日に獣医からこの地に舞い戻ったココは、2018年2月3日未明にこの地から永久に姿を消してしまいました。家の中で過ごすようになっても野良猫の矜持を失わず、猫には慣れても人にはそれほど慣れませんでした。それでも食事やベッドには嬉しそうで、ほどほどの距離感を保ちながら、ほどほどの信頼を示してくれました。

ココは地域の人に見守られ最後も地域の人の見送られ、ずっと野良猫で通した小夏のもとに帰っていきました。今頃は2匹一緒でもう二度と離れることはないでしょう。

ココちゃん、ここに来てくれて、楽しい1年をありがとう。 
いつまでも忘れないよ。
(への字の口元がたまらなく可愛いココ→)

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「マヨネーズ」

「世の中に偶然はない」と信じる私でも驚く、きっかり365日だったココとの時間。「元家猫だったのでは?」と思うほどか弱く見えた小夏は意外にも野良猫で通しましたが、ココはちょっと家猫を経験してみたかったのか?丸1年を過ごした後、一周忌で戻ってきた小夏について行き、2匹はまた一緒になり、幸せなんだと信じることにします。

見ず知らずの人が、道に倒れている猫を午前3時に獣医に連れて行ってくれるとは!なかなかできないことです。息のあるうちに救助されたことに心から感謝します。

西蘭みこと 


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