「西蘭花通信」Vol.0693  NZ・生活編 〜いい朝いい汗〜                 2014年6月15日

「ランニング用の膝丈のパンツがなくなっちゃったんだけど、知らないよね?」
我が家の洗濯を一手に引き受ける洗濯魔の夫に聞くと、
「ボクは洗濯かごに入ってるものを洗って、干して、畳んでるだけだけど。」
という、当然の答え。外に持ち出したり、外で脱ぐようなものではないし(笑)、家の中でなくなるとは!服の収納場所を片端から調べても見つかりませんでした。寄付の服に紛れて、うっかり寄付してしまったようです。

日差しが強い間は膝丈で日焼けすると困るのでもっと短いウェアで走っていますが、これだけ気温が下がってくると、そろそろ膝丈がほしい時期。1枚しか持っていないので「どうしよう」と思いつつ、月末の仕事の追い上げだの、寒気がする日があったり、雨続きだったりで、かれこれ3週間近く走る機会がなく、ウェアのことも忘れていました。

昨日の土曜日はボランティア先のチャリティーショップへ応援に行きました。どうしても週末はボランティアが不足しがちなのにお客さんは多く、人手が足りなくなりやすいのです。
「また行くの?土曜日なのに?なにがキミをそこまでさせるのか?」
と、夫は言います。そんな自分は朝9時から新人ラグビーレフリーのコーチ、その後、自分の試合を吹き、さらに別の試合の線審を務めるという、超ボランティアぶり。1試合は間の休憩も含めて90分。試合ごとにクルマで場所を移動するため、完全に1日仕事です。たった半日手伝う私どころではない貢献。それこそ「なにがキミをそこまで?」です。

「よかったわー、来てくれて。今日は学生たちがいないのよ。」
店に着くと午前担当のボランティア仲間がわっと集まってきました。週末は2、3校の女子高生数人が課外授業の一環としてボランティアに来てくれていますが、生憎今週はどの学校も中間試験期間だったらしく、1人を除いて誰も来ませんでした。レジにはお客さんが並んでおり、ボランティアに代わってマネージャーが大車輪でレジを叩いています。

状況を理解した私はマネージャーに代わってすぐに在庫の確認を始め、品薄になっている商品を出してきては店頭に並べ、値段がついていないものには値段を付け始めました。今は冬物とあらば帽子からブーツまでどんどん売れて行きますが、寄付の方は不要になった夏物が多く、値段を下げたり、目立つ場所にコーナーを作ったり、あの手この手で夏物処分を進めます。この時期は夏物の在庫の回転が売り上げにも響いてくるのです。

忙しく店内を動き回っているうちにふと目に入ったのが、膝丈のランニングパンツでした。ナイキの新品でまだラベルが付いています。色は黒、ロゴやラインなど目立つデザインがない私好みのシンプルなもので、サイズもちょうど良さそうです。手にしただけで生地の厚さがわかり、今の時期にピッタリなものでした。
「試着してみようかな?」
と思いながら、忙しさにかまけてすっかり忘れ、帰る段になってすでにヘトヘトだったこともあり、
「7ドル(約650円)だしなぁ。」
とそのまま買ってきました。

さっそく今朝履いてみると、身体に吸い付くようにピッタリで、失くしたものよりフィットします。
「これはいいかも♪」
と、そのまま試しにランニングに出ました。風のない麗らかな陽気。全く寒くはなかったものの、パンツの保温効果が実感でき、腰から膝まで外気をシャットアウトしているかのようで、これから寒くなったら活躍しそうです。股上が浅めなのに腰の部分のしっかりと安定した締め付け感も気に入りました。
「これはいいかも♪」
と走りながらついニマニマしてしまいました。

そのうち10歳ぐらいのキウイの男の子2人とすれ違いました。
「ハロー」 と声をかけると一瞬間がありました。思春期の入り口の年齢ですから、アジア人のおばさんに声をかけられたら、鸚鵡返しに「ハロー」か、固まって無視か。2人は顔を見合わせた後、背の高い方の子が遠慮がちに
"Keep it up(がんばれ)"
と言うではないですか!こんなことは初めてで、よほど苦しそうに見えたのか、おトシに見えたのか(笑)
"Thank you!"
と力強く言って手を振りました、

「まぁ、あの子たちのママよりずーっと年上だろうから、そんな人が走ってたら敬老精神も湧いちゃうよねー」 と思うと、さらにニマニマが増してきました。走っていたのは湖の周りなので、逆周りをしている人とすれ違うことはよくあります。果たして、最後の最後で再び2人に出くわしました。
「ハロー、アゲイン!」
とお互い自然と満面の笑顔になり、今度は3人でまるで知り合いのようにしっかり手を振り合いました。こんな笑顔だけでお腹いっぱいの朝ごはんになります。

失くしたウェアは寄付の品として、どこかのチャリティーと買ってくれた人の役に立ち、私はボランティアに行っただけで、よりピッタリの新品ウェアを手に入れることができ、それを履いて走ってみたら少年たちの愛らしい笑顔がついてきた―――この流れに関連性などないと意味を見出さなければ、意味はないでしょう、しかし、関連性を感じ意味を見出す人には、感動と感激がもれなくついてきます。

冬の始めのいい朝いい汗。
新品をおろすには最高の朝でした。


===========================================================================
「マヨネーズ」

もう1周走って3回会えたら、3人はハイタッチのノリでした(笑)

キウイは全般的に子どもを持つのが早く、晩婚化・出産の高齢化が進んでも、まだまだ若い親が多いです。52歳の私に10歳の孫がいても驚くようなことではありません。知り合いのマオリは私より2、3歳年下なのに、善(17歳)と同い年の孫がいます!

西蘭みこと 

ホームへ