「西蘭花通信」Vol.0690  NZ・生活編 〜ブルースプリング・レポートVol.32:最初で最後のスクール・ボール〜 2014年6月9日

NZでは高校、いや学生時代最大のイベントというべき、学校主催のダンスパーティーであるスクール・ボール。どれぐらい盛り上がるかといえば、
「修学旅行+文化祭+体育祭+部活+受験(?)の5つを足して5で割ったぐらい!」
といえば、多少お分かりいただけるかと。

西蘭家の場合、長男・温(20歳)はたった1晩のボールに情熱を傾ける、男子生徒にも女子生徒にも共通するシンデレラ現象に空しさを覚え、早々にアンチ・ボール派になりました。ボールに参加できる12、13年生(日本でいう高二と高三)とも欠席。アンチ派はアンチ派で誰かの家にみんなで泊まりこみ、それはそれで楽しくやっていました。次男・善(17歳)は去年のボールの時は、長年ハマっているマジック・ザ・ギャザリングというカードゲームの大会参加のためにアメリカのサンディエゴに行っており欠席。最終学年となった今年は、最初で最後のボール参加という貴重な体験になりました。

子どもが初めてなら、親も初めて。とは言っても男子の場合、用意するのは服と靴ぐらい。女子のようにドレスに靴、サロンでのエステ、全身日焼けスプレー、ネール、アクセサリー、当日のヘアメークと、
「総額何千ドル!」(ただ今、1000NZドルは9万円を超えます)
なんてことには間違ってもならず、簡単で安上がりなものです。まずは服装をどうするか?夫のタキシードを着せてみたところ、上も下もブカブカで話にならず。

「他の子はどうしてるの?」
と聞いてみると、去年、仲間5、6人で若い男性に人気の店に行き、150ドルぐらいの激安スーツを買ったんだそうです。
「その値段だったら借りるより安いじゃん?だけどバーゲンだったのはそれ1種類しかなかったから、全員同じの買ったんだよ。」
5、6人が同じスーツ?女子が「自分だけのたった1着のドレス」に血道を上げているのとは別世界の話。
「今年もみんな同じの着るよ。ちょっときつくなった子もいるけど、そんなの気にしないし。ネクタイだけは違うのするんだって。」

最終的には借りるか買うことを視野に、ボランティア先のチャリティーショップでちらちら注意してみていると、
「これは?」
と思えるサイズの、非常に程度のいいタキシード発見!ちょうど同じサイズのドレスシャツもあり(同じ人の寄付だったのか?)、マネージャーに頼んで持ち帰らせてもらい善に試着させてみたところ、ピッタリ!袖、裾、着丈どこも直す必要がなく、シャツの襟周りまでピッタリでした。

タキシード25ドル、シャツ5ドルで計30ドル。しかも、その時はたまたまショップが半額セールの最中だったため、計15ドルぽっきり。これって1500円もしない、脱力の安さ(笑)  タキシードを借りたら100ドルぐらいかかり(それにクリーニング代が加算される場合も)、新品でないことに関しては、借りても古着でも一緒です。サイズからみて、もしかしたらボール用に仕立てたものかもしれませんでした。本人も気に入り、
「結婚式もこれでいいんじゃない?」
と言い出す始末。思わず夫婦で、
「誰の?」
と同時に聞いてしまいました。革靴は購入し、蝶ネクタイは夫ので済ませることに。

(仲間150ドル、善15ドル→
違いがわからない男たち?!善は一番右)


ボール当日は朝10時に仲間7人とハンバーガー屋で決起集会?!そこでアフター・ボールと呼ばれるボール後の二次会を開いて、そのまま泊まらせてくれる仲間に着替えや寝袋を手渡し、いったん帰宅。その後もフェイスブックで最後の最後まであーだこーだとやり、シャワーを浴び、普段はつけないジェルで髪を固め、ビシっと着替えて夫に送ってもらってプレ・ボール(有志の親が家で主宰するボール前のホームパーティー)へ。

家でプレ・ボールやアフター・ボールを開くのは、善の高校の場合、決まって白人のキウイの親で、両親ともボールが好きで好きで、子どもよりも親の方がノリノリというタイプなんだそうです。移民にはなかなか馴染みのないイベントなので、むべなるかな。飲む子はボールの会場入り口のアルコール検査に引っかからない程度に、プレ・ボールで1、2杯引っかけて、いざ出発!(善は全く飲みませんが仲間は飲みますよ!)

今年の会場はシティーのホテル、プルマン(元ハイアット・リージェンシー)。善たち7人は頼んでおいたワゴンタクシーにぎゅう詰めになりながら会場へ。ところが、先に着いていたロングボディーのリムジンがホテルの車寄せに横付けされていて、後から入ってきた生徒たちの乗った自家用車やタクシーが行列に。リムジンに乗ってきた女子生徒は、彼女を迎える10人ぐらいの女友だちと1人ずつ順番に何度もハグをしては言葉を交わし、リムジンも動かず、いつ終わるとも知れない展開に。

痺れを切らしたタクシーのインド人ドライバーはクルマを敷地の端っこに停め、善たちに「ここで降りろ」と。7人はゾロゾロと降り、歩いてホテルの入り口へ。プチセレブな女子生徒とその取り巻きの果てしないハグとドレスの褒め合いが続く脇を通り過ぎ、いよいよボールの会場へ!

(つづく)

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「マヨネーズ」

あらららら。2回で終わるはずの話が3話目に突入です。次回で「完」とします。あれから早2週間。今は中間試験期間で、善は自分の部屋で静かーに勉強中かフェイスブック中。3:7ぐらいの確率で、どっちも当たりのもよう(笑)

善のタキシードは知り合いの日本人留学生クンが試着してみたら、これまたピッタリなアジア人サイズ。今度はシャツと一緒に留学生クンのスクール・ボールにお供することになりました。ボール・シーズンはまだまだ続きます。

西蘭みこと 

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