「西蘭花通信」Vol.0674  スピリチュアル編 〜夢日記:馬さしあげます〜    2014年3月17日

「どうしよう、どうしよう。これだと首が絞まって朝までに死んじゃう?」
私は幅5cmほどある、シートベルトを厚く硬くしたような平たいベルトを、枝振りのいい桃の木に結びつけていました。どこで見つけてきたのか相当長いもので、工事現場に運び込む材木を縛っておくような、見るからに頑丈そうな作業用の物でした。白いベルトは薄汚れており、硬いので木に結びつけるのは容易ではありません。

なんとか枝に結び、4、5mはありそうな紐の反対側を結ぶべく、辺りを見回すと誰もいません。
「お馬ちゃん、お馬ちゃーん!」
と大きな声で呼ぶと、見慣れた自分の裏庭に子馬が2頭走り込んできました。栗毛色の艶々の子馬で傍に来ると、すぐに足元の芝を食み始めました。その愛らしい姿に、残り少なくなりつつあるエストロゲンが全身を駆け巡るようでした。
「この子たちを守らなきゃ!」
私は完全に母親になっていました。

知り合いに、
「引き取り手のいない子馬がいて、このままだと処分される」
と聞き、居ても立ってもいられずに引き取りました。慌ててオークランド市の条例を確認すると「庭で馬を飼ってはいけない」という決まりはないそうで、預かってくれる牧場を見つけるまで庭で飼うことにしました。

どうやって運ばれてきたのかは記憶がないのですが、気がつくと2頭が庭にいました。においを嗅ぎ付けてこの辺では見たことのない、ぶっくり太ったいかにも悪知恵が働きそうな漫画チックのロングヘアーの白黒猫が現われ、「キャッチ・ミー・イフ・ユー・キャン」と言わんばかりに馬の前に飛び出し、塀に向かって走り出しました。馬はすぐに後を追い、1頭が塀にぶつかってしまい(って、実際にこんなことが起きるんでしょうか?)、完全に母親モードの私はハラハラドキドキ。

馬は目を離すとすぐに前庭の方へ行ってしまい、外の様子が気になるようです。生垣から外に出ることはないものの、生垣に張り付くように移動しながら芝を食んでいるところをみると、外が気になるようです。門もなく出ようと思えば簡単に出られるので、日が暮れる前になんとか馬を木につなごうとしたものの、問題はベルトの反対側をどうやって馬の首に括りつけるか、です。

近くで見ると馬の首は驚くほど太く、十分に長いと思っていた紐のかなりを使ってしまいそうです。さらに首輪もないまま、どうやって首周りに固定するのか?直接巻いたら嫌がってもがき、首が絞まって朝までに死んでしまうのではないかと心配になってきました。呻吟している私をよそに、馬は前庭に行ってしまいました。犬の散歩やウォーキングで通りかかる人が面白いらしく、賢そうですがやはり子馬は子馬です。

「お馬ちゃん、お馬ちゃーん!」
呼べば2頭はすぐ戻ってきました。その健気なほどに従順な姿に涙が出そうでした。今日会ったばかりなのに、なんと慕ってくれていることか。
「守らなきゃ!絶対に守らなきゃ!」
私は心に誓い、当てもないのに、どこぞの牧場を自由に走り回る2頭を思い浮かべていました。

私の手には馬の首にはとても巻けそうにない硬いベルトが握られたままで、
「いっそ、私が庭で寝たらどうだろう?」
という、いくら夢の中でも荒唐無稽かつ私ならやってしまいそうな、突拍子もないアイデアが出たところで、目覚まし時計が鳴り現実に引き戻されました。

起きた直後は艶々の「お馬ちゃん」の姿が瞼の奥にくっきり思い描けました。若く、凛々しく、賢く、穏やかで愛らしかった2頭。西洋人の夢ならさしずめ、
「ユニコーンが庭に現われた!」
というところだったんでしょうが、私はニッポン人らしく(?)普通の馬でした。でも、縁起の良さそうな動物、夫の干支でもあり、なんだか良いことがありそうで、今日は1日中ニマニマと過ごしています。

馬で久しぶりに思い出した話があり、これまたニマニマ×2ぐらいの効果がありました。帰国子女だった大学の後輩が長野だったか栃木だったかへスキーに行ったとき、
「馬さしあげます」
という張り紙を見て、腰を抜かすほど驚いたそうです。
「スゴい、スゴい!田舎の人ってなんて気前がいいのかしら?馬をただでくれるなんて!」
と大感激。しかし、その時は夜遅く、張り紙のあった店は閉まっていました。

「東京に連れて帰ったら、庭で飼えるんだろうか?すぐに大きくなるだろうし、どうしよう。でも家に馬がいるなんてステキ!」
馬を飼う興奮と誰かが先にもらってしまったらという心配で、よく眠れないまま翌朝を迎えました。
「まず見せてもらって、それから親に電話しなきゃ!」
と、いそいそと出かけていくと、店はまだ閉まったままで、張り出された紙には
「馬さしあります」
と書いてありました。

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「マヨネーズ」

あの2頭は間違いなく、飼い猫の黒猫クロとコロでしょう。1年前に2匹がやってきて以来、元々笑いの絶えない家ではありましたが、さらに微笑みや爆笑の機会がうなぎ上りとなり、今に至っています。2匹への尽きない想いが大きな大きな馬に拡大してビジュアライズされたのではないかと思います。共通するのは美しい毛艶です。クロコロは1歳ということもあり、それはそれはピカピカです。

後輩の話は、さすが帰国子女?!
           
                (1年前のまだ子猫だった頃のクロとコロ→)


西蘭みこと 

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