「西蘭花通信」Vol.0616  スピリチュアル編 〜不動産チャチャチャ:不動産屋の女たちX〜           2013年4月4日

神だ!
入居して1ヶ月も経たないテナントが突然出ていって驚いたのも束の間、それから丸1日、時間にしてせいぜい27、28時間で次のテナントが決まり、思わずうなってしまいました。管理を一任している不動産屋の女たちの手にかかれば、こんなものなのでしょうか?「神がかってる」と、感じました。

彼女たちと私たちには2つの共通するものがあります。1つは不動産というか、家に対する絶対的な愛です。彼女たちの1人リディアに、
「不動産はいいわよ。買うのも、持つのも、直すのも、何でも楽しいでしょ?」
と言われたとき、
「さすが!」
と、頭の中にピカッと灯りが灯るようでした。
(この話は〜不動産チャチャチャ:不動産屋の女たちU〜でどうぞ)

右肩上がりで不動産価格が上昇しているNZにおいて、不動産投資といえば売却益を追求するキャピタルゲイン狙いです。驚くなかれ、この国には基本的にキャピタルゲイン税がないので、うまく"転がせれば"短期間で年収以上、物件価格によっては数十万NZドルの収入を、非課税で稼ぎ出すこともできるのです(もちろん相応のリスクはありますが)。

一方で私たちのような家賃収入を目指すインカムゲイン派は、ローンの金利や修理などの費用をコストとして計上できても、収支が黒字になってくればもちろん他の収入同様、所得税の対象になります。そのためこの国には、「金利オンリー・ローン」なるものがあり、一定期間(通常は2年間)、コストとして計上できる金利の返済だけを行い、コストにならない元本返済をしない仕組みになっています。一定期間内に家を売却してしてャピタルゲインが出ればこれもまた非課税という、究極の「節税」投資方法です。

借家の購入に際して、NZでは最長の5年ローンを組んだとき、銀行の担当者から何度も何度も、
「本当に5年間売るつもりがないのか?」
と念を押されました。私たちは現在の歴史的低金利を少しでも長く活かしたかったのですが、担当者を始め世の投資家の常識は、
「この低金利に乗じたブームの中で売り抜けなきゃ!」
というところだったのでしょう。

そんな中でリディアに「買うのも、持つのも、直すのも、何でも楽しいでしょ?」と言われたことは、ストンと心に落ちる一言でした。彼女の楽しみの中には「売ること」は入っていませんでした。不動産管理会社としては当然なのでしょうが、眼鏡の奥の瞳は孫に注がれるようにな柔和な輝きに満ちていました。そうなのです。私たちにとっても不動産は売り抜けるものではなく、長く大切に慈しみ、育み、愛情を注ぐ対象なのです。

もう1つの共通点は猫です。彼女たちも私たちも「猫が好き」などという程度を越えた、完全な「猫バカ」です。猫の話になったらビジネスの話などそっちのけで、延々と話してしまいます。彼女たちのオフィスもそこらじゅう猫だらけで、写真に置物、カレンダーからマグネットまで猫尽くし。おまけに本物の猫が何匹も歩き回っているようなところです。

2月に彼女たちに勧められるまま、2匹の仔猫を引き取りました。全身まっ黒なクロと、黒猫ながら胸からお腹にかけてと足先だけが白いコロです。2匹は双子で生後4ヶ月ほど別の家で飼われていたものの、その家ではそれ以上飼うことができず、
「このままではSPCA(動物愛護協会)行き!」
というのを見かねた彼女たちが、一時的に預かっていた猫でした。

茶飲み話のついでに、
「ところで、猫いらない?可愛い黒猫がいるのよ。」
と、社長のシャノン。
「黒猫はラッキーなのよ〜」
と双子のリディア。よく似た2人に言い寄られると相乗効果は何倍で、夫にも相談せずその場でOKを出してしまいました。

黒猫と聞いただけで、私の頭の中にピカッと灯りが灯りました。これはもう人生の青信号のようなもので、これが点いたら迷わずGOです。そのほんの数日前、夕食後に散歩をしていたとき、
「黒猫って可愛いなぁ。特にまっ黒なのがいいな。次に飼うのは黒猫にしよう!」
と言っていたばかりだった夫が、NOという訳がありません。
やってきたクロコロは私たちにとり、ちょうど20年ぶりに迎える仔猫で、愛猫チャッチャを亡くしてから2年ぶりの猫でした。まるでドアから黒い幸運が小さな足で、のしのしと家の中に入ってくるかのようでした。

猫を迎えるのと同時に、目に見えない大きな流れに乗ったのを感じました。
守られている――
こんなちっぽけな2匹に?それとももっと大きな何かに?その正体の追求は最早どうでもいいことでしょう。注いだ愛が自分に戻り、流れができたのを実感した瞬間でした。なんとも居心地のいい調和でした。
「そうか、世の中こんな風になっているのか!」

こうなれば、丸1日で次のテナントが決まるという神業もアリなのでしょう。不動産屋の女たちの家や猫への惜しみない、底抜けの愛に彼女たちもまた、守られているのでしょう。私たちには出て行ったテナントの3週間分の敷金が残り、新しいテナントからも家賃収入が入ってきたので二重家賃の期間が2週間以上になりました。この特別収入は家に手を入れることで、家に還元したいと思います。


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「マヨネーズ」
「三度の飯より好き」という言葉は1日2食でも全然平気なこの歳になると、以前ほどインパクトがなくなってきます。それでも三度の飯より猫が好き、家が好き!
「病気のもいるし、猫たちにお金がかかるからグルメは諦めたわ。猫はミリオンダラー・ベイビーよ。」
と笑うャノンを誘って、ぜひおいしい物でも食べに行きたいものです。

(我が家のミリオンダラー・ベイビーズ→
「おやすみ」の前の最後の1枚。今日で先乗りだったクロが来てちょうど2ヵ月です)

西蘭みこと 

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