「西蘭花通信」Vol.0599 経済編 〜不動産チャチャチャ:全額借金〜 2012年9月8日 今年3月に配信した「不動産チャチャチャ:50歳の借金」でも書いていたように、今回の投資不動産の購入は自己資金を使わないことも目標の一つでした。長男・温(18歳)の日本進学を控え、貯金は今まで以上に虎の子。それを取り崩すか、借り入れるかだったら、私たちの場合は断然後者でした。 30年ローンであれば、3万ドル(65円換算で約200万円)の返済額は金利6%で計算すると、週約40ドル、約2,600円です。5万ドルでも約70ドルです。さらに投資の場合、返済額の大半を占める金利をコストとして計上できます。これは自宅の購入にはない利点です。 「だったらもう、頭金なしの全額借金で!」 と、目標は明白でした。 購入した物件は想定以上に小さかったので、購入価格が自宅のCV(市が固定資産税の算出基準にしている評価額)の半額以下で、購入前に銀行が融資枠として設定した「自宅のCVの80%まで」という条件は余裕でクリアできました。弁護士費用も銀行持ちだったので、 「1銭も自己資金を使わずに家が買えちゃう!」(「50歳の借金」より) を実現しました。 ここで我が家の話とは別に、一例として一つシミュレーションをしてみましょう。市場価格が100万ドルのローンのない家を持つ人がいたとします。彼らが自宅を担保に全額を借り入れて2軒目の家を50万ドルで買ったとします。50万ドルは現在のオークランドの住宅の平均売買価格で、場所や物件次第で2〜4部屋物件が購入できる金額です。 2軒目のローンは返済期間30年、金利を6%とします。これだと返済額は週690ドルになります。その人たちが2軒目に引っ越して自宅を貸し出すと、今の相場だったら週1,000ドル(利回り5.2%)の賃貸収入が見込めるかと思います。単純計算ですが、引っ越すだけでローンを返済しながら、週310ドルの賃貸収入が入ってくることになります(実際はこれに固定資産税や修繕費用、所得税などの支払いが必要になります)。 大半の日本人にとって「マイホーム=終の棲家」で、マイホームというものは途中で売ったりせずローンを完済するものであり、そこで老後を迎えるもののようですが、海外ではそうとも限りません。家は往々にしてクルマのように、年齢、家族構成、収入に応じて変えていくもので、それは賃貸物件かマイホームかを問わず、ローンの有無も問いません。何度も引越すのは面倒かもしれませんが、その分かなり効率的なのです。 (キウイはよく引っ越すせいか持ち物が少なめで、家の中がすっきりしていることが多いのは、個人的に見習いたい点です。写真と本文は関係ありません) 上の例は日本人の感覚でいくと、 「ミリオンの家(実際は6,500万円相当ですが、日本の感覚では『億ション』でしょう)に住んでいる人が、半額の家になんか引っ越す?」 と疑問かもしれませんが、うちのように子どもが巣立つタイミングだったらどうでしょう?残った子が1人なら2部屋という選択もあります。いずれその子も巣立っていきます。 2軒目で数年から十数年過ごし、子どもが結婚して孫でも連れて遊びに来るようになったら、再び部屋数に余裕のある自宅に戻り、2軒目を借家として貸し出すというのも一案です。今年50万ドルで買った家の10年後の家賃は、値上がり率を控え目に年率3%としても週652ドル、4%とすれば711ドルほどのはず。ローン金利が6%で変わらないと仮定すれば、週の返済額は690ドルのままなので、それ以降は家賃収入だけでほぼ返済できる計算になります。 こうしてみるとインフレはいかに借金の味方か!(デフレの日本はその逆とも言えます) 賃貸収入が値上がりしていっても借金の額は増えないどころか、返済によって少しずつでも減っていくので、負担が相当楽になり、返済方法に幅が出てきます。上の例のように週310ドルも賃貸収入が入るのであれば、余裕のある時に繰上げ返済をして元本を減らし、ローン期間もしくは毎週の返済額をガクンと減らすこともできるでしょう。 余力があれば最初から15年のローンを組み返済額を週970ドルとしておけば、マイホームからの賃貸収入(実際はこれも毎年数%ずつ値上がりしていくわけですが)だけで2軒目の返済ができます。15年後にローンを完済して自宅に戻っても、そのまま2軒目に住み続けても、あとは賃貸収入が入ってくるばかり、のはず。実際はその間に改装など手入れが必要になりますが、NZでは築100年を超える家など珍しくなく、しっかり建てられた家なら、古くても修繕を怠らない限り価値が下がらないのは立証済みです。 自宅の価値が75万ドルの人が37万ドルの家を買っても、50万ドルの人が25万ドルの家(1、2部屋物件ならこの価格も可能)を買っても、理論的には同じです。むしろ立地のよい小型物件なら、賃貸利回りが高くなる可能性があります。リスクとしては、現在の歴史的低金利がいつまでも続かないことです。ただし、金利の上昇分は家賃の値上がりで相応分を相殺できるでしょう。また入居者が見つかるまではローン返済が自己負担になります。 大雑把ですが、こういう方法もあるんじゃないか、という話でした。 =========================================================================== 「マヨネーズ」 「引っ越しをマメにするなら、こういう返済方法もアリではないか?」 と、電卓叩き叩き頭の柔軟体操です。ちなみに在宅で仕事をしている私たちは引っ越す予定がないので(笑)、ローンの返済は本業と賃貸収入でがんばらないと! 別のリスクとして、 「今は不動産バブルじゃないのか?」 というよくある指摘。確かにNZの不動産は平均収入に対して非常に割高ですが、1997年のアジア通貨危機までの本物のバブルを経験した身には(その中で売りましたから〜)、 「バブルってのは、こんなもんじゃない!」 という気がします。 西蘭みこと ホームへ |