「西蘭花通信」Vol.0588  経済編 〜ブルースプリング・レポート Vol.26:時給5000円〜 2012年8月3日

オークランド大学の前期が6月で終わり、9月末の名古屋大学入学まで時間ができた温(18歳)は、7月からケンブリッジ大学が主催する英語を母国語としない成人向けの英語教師資格、CELTA(Certificate in English Language Teaching to Adults)取得コースに通い始めました。夜間と土曜日だけの、働いている人が通いやすい時間帯で組まれた10週間コース。日本に行くまでのポカンと空いてしまった時間にピッタリでした。
(CELTAに行き着くまでの話は、〜消費と投資:消費と投資:CELTA〜でどうぞ)

コースは極端な少人数制で1クラス定員6人。徹底した集中クラスなので、申し込み後に面接試験まであり、パスしないと入れませんでした。温だけが学生で、それ以外は全員が社会人でした。面接の中で何度も何度も、「このコースには学生ローンが使えないのよ。」(つまり、支払いは即金よ)
と、コース開始後は先生でもあった面接官に念押しされたそうです。コース費用の3,000ドル(約20万円)は確かに安くありません。

集まった受講生のバックグラウンドはばらばらで、70代の元高校教師、海外で何年も教えてきたプロの英語教師、システムエンジニア、ウェブデザイナーなど六人六色。元高校教師はこれが2回目の挑戦だそうで、前回は全日制の4週間コースをとったものの、体力的に追いつけず、途中でギブアップしたんだそうです。温は最年少で、日中は週何回かアルバイトがあるだけで、時間にも体力にも最も余裕がありそうですが、それでも、
「疲れた〜」
と言って、夜10時頃にヘトヘトになって帰ってきます。(授業は遅い日で9時まで)

社会人たちに囲まれ、日中は教壇に立っている現役の英語教師をクラスメートにして、温はすぐにCELTAの『価値』が想像以上に高いことを確信しました。
「今はね、いろいろな国でCELTAかTESOL(Teaching English to Speakers of Other Languageの略で、これも英語を母国語としない人向けの英語教師資格)を持ってないと、英語を教えられなくなってるんだって。」
それでクラスメートの1人も、スペインで8年以上も英語を教えていたというのに、今になってCELTAを受講しているんだそうです。

「CELTAの方がだんだん重視されてるらしいよ。TESOLは文法の教え方が中心で会話があまり重視されないから、英語がネーティブじゃない人でも取りやすいんだって。でも、CELTAは会話が重視されるから、ネーティブ以外には大変らしい。ボクたちの先生も前はTESOLの先生だったんだって。でも、CELTAの方がいいってわかって、CELTAの先生になったらしいよ。」

スペインで8年以上の経験がある女性はコースが終了していないというのに、すでにサウジアラビアでの仕事が決まり、資格を取得し次第すぐに現地に赴くんだそうです。年収は10万ドル(約650万円)で所得税が非課税なので、これが手取りです。住むところも先方持ちなんだそうです。ただし、募集は女性だけ。禁酒、そして婚姻関係にない男女関係には非常〜〜〜に厳しいイスラム圏ですから、問題を起こす可能性が高そうな男性は最初から排除!(笑)、ってことなんでしょうか?

手取り10万ドルはここの高校教師よりも遥かに高給で、
「何年かがんばって帰ってきたら、家の1軒でも!」
と、夢が膨らむような金額ではないでしょうか?この話を傍らで聞いていた善(15歳)ですら、
「そんなにもらえたら、みんな行っちゃうよ!」
と言ったほど。
(みんなとは限らないでしょうが
^^; パーティー好きのイケイケのキウイにとって、飲み会&デート禁止のイスラム圏暮らしは相当キツイのでは?「せめてドバイにしてっ!」て?!)

しかし、温が何よりも心を動かされたのが、システムエンジニアの兄が日本で英語を教えていたとき、
「時給5,000円だった。」
という事実!おにいさんは経営破たんする直前までNOVAにいたそうで、それは5年前の話。
「ということは、今はいくら?」
と、コース初日から思わず目が$マークになって、ヤル気に火が付いてしまった、温。デフレ中の日本ですから、時給の相場はさほど変わっていないとしても、相当に破格な金額です。弟もあわよくば本業そっちのけで、兄に続こうというわけです。

コースでは早々から20人のボランティアの生徒(当然、全員外国人)を前に40分教えなければならず、習っちゃ教え、習っちゃ教えとすぐに実習が追いかけてきます。そのためコースのない日や日中の時間も授業の進め方を考えたり、教材として必要な物を用意したり、なかなか準備に時間がかかり、大学に通っていた時よりも忙しいほどです。実習中は先生が教室の後で採点しており、残り5人の受講生も全員同席して授業を参観しています。

「東海地方の英語教師の時給を検索してみたら、企業派遣だと時給4,500〜6,000円だったよ。夜6時から始まって9時までのが多いから、1回3時間!これってスゴいよね〜」
と、獲らぬ狸の皮算用でニッコニコの温。それでモチベーションが上がってくれるなら、けっこう、けっこう。本当にそんな仕事に採用されて、仕送りが減らせるなら、親としてはさらに、けっこう、けっこう。

残り1ヶ月半になったNZ生活をエンジョイしていってね!

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「マヨネーズ」
「自分はしゃべるな、生徒にしゃべらせろ!」
というのがCELTAの鉄則なんだそうで、コツがつかめると「けっこうラク」というのが、1年半以上、個人教授をしてきた温の感想です。

「南米系は文法や発音がメチャクチャでもとにかく話し続ける」
「日本人はシャイで話さないけれど、文法は正確」
「中国人はすごく真面目な生徒とまったくヤル気のない生徒に分かれる」
などなど、先生から国籍別ノウハウも伝授されているそう。

(チリ人のボランティアの生徒が授業のたびに、お小遣い稼ぎで売っているホームメードのパン→
温は「チリパン」と呼んで気に入っています。母親に似て、エスニック度高めのものに目がなく、毎回買っているナゾの実習生?! やや重めのパンで歯ごたえがあって美味しいです)


西蘭みこと 

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