「西蘭花通信」Vol.0581   経済編 〜消費と投資:消えるか増えるか〜        2012年7月10日

オークランド大学の前期を終え、名古屋大学の入学を3ヵ月後に控え、アルバイトに励む長男・温(18歳)。
「アルバイトしてどうするの?」
と素朴な質問をしてみると、
「お金貯めるんだ。」
とニコニコ嬉しそう。
「お金貯めてどうするの?」
とさらに聞くと、
「えっ?お金ってあった方がいいじゃん。日本で遣うだろうし。」
と、母の質問に意外な様子。

「日本で何に遣うの?」
「えー。わかんないけど、いろいろお金要るんじゃない。何か買ったり、旅行行ったり?」
と言葉が濁ります。
「生活費はママたちが仕送りするじゃない。1年目は学校の寮に住むから交通費も要らないし、あんまりお金遣うこともないんじゃないの?」
と言うと、
「そうかもね。今のG30 の子たち
(文部省が推進する「グローバル30」、正式名称「国際化拠点整備事業」、通称「G30」というプログラムのこと。温はこのプログラムで名大に入る第2期生)も、あまりお金遣ってないみたいだしね。」

「お金は稼ぐことも貯めることも大事だけど、遣うことも同じぐらい大事なのよ。」
と言うと、「えっ?」という顔をしました。
「ママは日本人は貯めることに、キウイは遣うことに偏りすぎていると思うけど、どちらも同じぐらい大事なの。そもそもなんのために働いてお金を稼ぐの?銀行に預けて残高が増えていくのを愉しむためではないでしょ?遣うためでしょ?」
「まぁ、そうだね。」
「どんなに貯めても、死んだらあの世に持っていけないのよ。」
(普段はあまりをお金を遣わない温ですが、遣う時はパっといきます。伊勢で買った絵は5000円以上しました。親もびっくり^^;→)

これは今まで生きてきた実感ですが、お金の遣い方が上手い人のところにはお金が上手い具合に入ってきて、そうでない人のところにはなかなか入ってこないように感じます。よく言われるように「お金はエネルギー」であるならば、お金の遣い方が上手い人は一種のスイッチボックスのような存在で、入ってきたエネルギーを上手く流してあげられるので、そういうところにエネルギーが集まり易いのではないでしょうか?

逆に「何かあったときのために」「老後のために」と漠然とした理由で、普段の生活を極端に切り詰めて貯金をしていると、本来流れてこそ力を発揮するエネルギーが滞ってしまい、生活の広がりもなくなります(物質的な豊かさや精神的なゆとりだけでなく、寄付で得を積むことまで幅広い意味で)。小さな生活の中に閉じこもってしまうと、様々な機会を逸してしまう気がします。私の両親はまさにこのタイプでした。遣い方がわからないのです。

一般的に「お金を遣う」というと、『消費』を指します。「あの人はカネ遣いが荒い」と言えば、好きな物を手当たり次第買っているイメージで、次から次へと株やマンションを買うことは指しません。同じ「物」なのに、なぜ株やマンションだったら、解釈が違うのでしょう?それは、株やマンションが『投資』の対象だからではないでしょうか。

「お金を遣うには2通りの方法があるのよ。一つは『消費』、もう一つは『投資』。消費は字の通り、消えて費やしてなくなっていくもの。買った瞬間が最高でそこを100%とすれば、そこからどんどん価値が下がっていくのよ。減価償却っていう言葉を知ってるでしょ?新車でも1年で価値が半分になってしまうものもあるわ。服だの靴だのは1度身につけたらもう価値はないと思わなきゃ。スマホだって1回でも使ったらもう中古で、トレードミー(NZ版ヤフオク)に出したって、買った値段では売れないでしょ?」

「一番簡単な例が食事かな?食べたらそれでおしまい。後にはなにも残らないわ。でも、消費はそれでいいのよ。食べなければ生きていけないし、たまには外食して、料理の手間を省いて楽しい時間を持つのもいい。お金を遣うだけの価値があると思えれば、消費したらいいのよ。GDP(国内総生産)も上がるしね(笑) でも、投資は消費と違うの。」

「投資は買った瞬間が出発点でそこから価値を上げていくことを目指すもの。家でも株でもそうでしょ?もちろん、思った通りにいかなくて損してしまうこともあるかもしれないけど、待つことができたらまた価値が上がってくるかもしれない。日本の家は無理かもしれないけどね(笑) 株だったら、その間に配当金が入ってくるし、家を貸していたら家賃も入ってくるでしょう?投資した会社が潰れてしまわない限り、ゼロにはならないのよ。」

「同じ1万円を遣うんでも、消費だったら旅行みたいに後にはなにも残らないけれど楽しい思い出が残るものから、服やパソコンのように物は残っても価値はなくなってしまうものまで、いろいろある。投資は損をすることもあるけれど、やりようによっては1万円の価値を増やせるかもしれない。だから若いうちこそ、いろいろなお金の遣い方を覚えるべきなのよ。ただ貯金するんじゃなくてね。」
と言うと、温もニヤリとしました。さすがに、
「アルバイトのお金で老後に備えるのは勘弁!」
と言いたそうでした。(つづく)

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「マヨネーズ」
最近、新刊紹介で目した『お金の知恵は45歳までに身につけなさい』という本。45歳は大卒で働き始めた人が定年退職するまでの約半分の年齢だそうで、解説には「遅くても45歳までにはスタートしておきたい資産運用の具体的な方法」とあります。
「う〜ん、日本では45歳なのか〜」
というのが正直な印象。資産運用というとお金に余裕のある富裕層の特権のような響きがありますが、なにも「資産」という特別なお金があるわけではなく、どう運用資金を捻出するかは家計の延長だと思います。

理想を言えば、子育てや仕事で資金的にも時間的にも精神的にもキツキツな「35歳まで」に、徹底的に知恵を絞って場数を踏んだ方がいいように思います。香港だったら、まぁ、フツーに「25歳まで」でしょうけど(笑) 

香港時代の同僚がご主人に、
「キミが家庭に入ることこそ、子どもへの最大の投資」
と言われて会社を辞めていったことは、私にとり「投資」の認識を改める衝撃的な出来事でした。

西蘭みこと 

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