「西蘭花通信」Vol.0555   NZ編 〜キウイのアラセブ〜                 2012年3月17日

6年前からチャリティー団体でボランティアをしています。仕事の内容は寄付の品の分類と販売のための値段付け、店頭での接客でしたが、今年から店ではなく倉庫で働いています。事業規模が急激に大きくなり、分類や値段付けという裏方仕事を店の奥でしているよりも、店舗面積を広げ売上げ増を目指すことになったからです。事業の拡大を支えているのは、ひとえに途切れることのない寄付の品とそれを買ってくれる人たちです。大勢の支援があってのチャリティーということを、ひしひしと実感しています。

ほとんどが女性のボランティアたちはシフトに合わせて、「マンデー・ガール」というように曜日で呼ばれています。昨日は「フライデー・ガール」の仲間6人とランチに出掛けました。ここ2、3年はメンバーが固定して仲良くしています。全員が70歳前後で、いわば「アラセブ」(アラウンド70)です。「ジャス・フィフ」(ジャスト50)の私など、彼女らにしてみれば娘のようなもので、実際全員が私と同年輩の娘や息子がいます。

席に着くのも待ち遠しく、弾丸トークが始まります。スラングや40〜50年前の昔話がガンガン入る(つまり私にはよくわからない)英語と毒舌の往復びんたを受けながら、3分に1回は全員が爆笑という、外見はともあれ、ハイテンションということにかけてはティーンエイジャーも霞むような集団で、顔を合わせるたび、いつもこうなのです。

「え〜?投資不動産を探してるの?テナントは独り暮らしの私みたいな中年女性がいいわよ。きれいに使うし、静かだし。私なんか今の家の花壇を2倍に広げてあげたんだから〜」
と言うのは、5月で70歳になるジゼル。年長者のアドバイスのようでいながら、しっかり自分を「中年女性」と言い切るしたたかさ!
「キウイはいつまで中年なのよ〜?」
と、ツっこみたくなりましたが、本人はしれしれと自分がいかにいいテナントか、という話に夢中。

かと思えばもう1人のドロシー(確か今年、71か72)が、ローンボール(芝の上で行うボーリングのようなもので。カーリングの原型とも言われているそう)で肩の靭帯を痛めたという話。ローンボールといえば、日本のゲートボールのように「年寄りのスポーツ」と目されているので、なんとなく年相応の話になってきたかな〜と思いきや、
「医者に1ヶ月運転するなって言われてもねぇ、クルマがなきゃ生活できないじゃない!」
ときました。

「だからこうやって運転してるのよ。」
と、ドロシーは左手をハンドルの10時、右手を6時の方角に置いて見せました。右手が6時なのは、それ以上腕が挙がらないからです。医者の忠告は腕を安静に保つことだけでなく、安全上の問題もあってのことかと思いますが、なんのその。独り暮らしの彼女にはクルマがなければ買い物もままならない、というわけです。現に昨日も10時・6時のハンドル操作でボランティアに来ていたわけです!

最初から笑顔満面でテンションMAXだったポーリーン。聞けばもうすぐ1週間の旅行に行くそう。
「ロトルア行って、ネーピア行って、○○行って、××行って・・・・」
と楽しそうな計画。独り暮らしの彼女が、「私たち」という主語を使うと言うことは・・・・と思っていると、横でジゼルが、
「ダーティーな1週間になりそうね。」
とグサっと一撃!来月70のポーリーンは現在、初恋の人と不倫中なのです。今回の旅行もそんな2人の秘密の逃避行。

でも、「どこが秘密なの〜」というぐらい、話は開けっぴろげで、ジゼルの一撃にポーリーン本人も含め、みんな大爆笑。不倫の相手も、もう1人の仲間(多分73、74歳)サリーのご主人と同じ勤務先の違う事務所の仲という、どこまでも続く奥の細道。なんでも笑いのネタになり、誰もがいじられキャラになるので、油断もすきもありゃしません。

声が枯れるぐらい笑い、トークが止まらないジゼルなどその間にコーヒーを3杯もがぶ飲みし、やっとお開きに。集まった場所は輸入食材で知られる店に併設されたカフェだったので、そのままみんな買い物に流れました。私もカゴにあれこれ入れていると、みんなが黄桃を選んでいます。周りに白桃やネクタリンもあるのに、なぜか全員黄桃、なのです。

「絶対これがおいしいわよ。みことも買いなさい。」
というジゼルの激しい思い込みに乗せられて、私もいくつか選んでみました。全員がレジに向かったので小さな店の2つしかないレジに列ができ、すぐに3つ目のレジが開いてポーリーンがそちらへ行きました。会計を済ませ、目の前の駐車場で本当に解散〜。最後の最後まで大笑い。また今度!

          (なぜかみんなで買った黄桃。確かにおいしいっ!→)


その時、ふと隣にポーリーンが来て、
「レジでさ、『ピーチに一番合うのはバナナだよね』って言われちゃた〜」
と、満面の笑顔がさらにウレシそう!ピーチがお尻ならバナナは・・・・ってことで、英語圏でよくある暗喩。3つ目のレジに立ったのは、店のマネージャーのみんなが良く知る男性でした。
「え〜!NZって、レジの2、3分でそんな話してるの〜?!」
と思いながらも、ゲラゲラ笑っているうちにお互いクルマに着きました。

「50なんてベイビーよね〜。みことは痩せすぎでスキニーすぎる。」
なんて言ってくれるのは、世界中で彼女たちだけ。その存在ごとありがたい、貴重で大事な仲間たち。次に集まるのはイースター休暇明けでしょうか?
ちょっと早めながら、 ハッピー・イースター!
(文中の名前はすべて仮名です)

===========================================================================
「マヨネーズ」
メルマガ555号は狙ったわけではないのですが、GO! GO! GO!という内容に(寒っ?)

「いつかはこの人たちの葬式に行くんだよね〜」
と、若輩者として思いながら、その席でもきっと思い出話に泣き笑いしてしまう、自分たちの姿が思い浮かぶようです。

西蘭みこと 

ホームへ