「西蘭花通信」Vol.0497  生活編  〜正直者はバカを見ない〜               2009年11月25日

外出した帰り道、ふと思い立ってナタリアを尋ねてみました。彼女は長男・温(15歳)の友だち、レックスの母親です。けれど私たちは「ママ友」と言えるような仲ではなく、数ヶ月前にひょんな場所で出会い、息子同士が友だちであることに気付いたところでした。

「私、夫と別れたの。」
ナタリアは初対面の私に、いきなり切り出しました。驚いて言葉に詰まっていると、
「今はレックスと2人でやってるわ。あとは仕事さえ決まればね〜」
と、彼女は笑みを浮かべながら屈託なく言いました。あの笑顔に到達するまでにどれだけの涙と苦悩があったのか想像もつきませんが、目の前の明るい表情は本物でした。彼女はどこかでスコーンと突き抜けたのでしょう。

「そうだったの。大変だったわね。早くいい仕事が決まるといいわね。」
口をついた言葉こそ月並みでしたが、私は初めて会ったナタリアがこの苦境をバネに飛躍する気がしてなりませんでした。女がこれほど吹っ切れた顔をしているときは、大きな変化の前兆であることを何度か経験しています。彼女が前向きに腹を括っているのを感じました。

「レックスとレックスのママって、一緒に運転習ってるんだって。」
ある日、学校から帰った温が言いました。
「ナタリアって免許持ってなかったの?」
「みたいだね。」
このクルマ社会の国で免許を持っていないというのは、非常に珍しいことです。

「これからはパパがいないんだから、運転だってなんだって自分でやらなきゃね。」
「うん。でもレックスが"ボクの方が上手い"って言ってたよ。」
「それでもいいのよ。息子に乗せてもらうより、自分で運転ができるようになる方が価値があるでしょう?」
「そうだね。」

「それから仕事も決まったんだって。」
「ほんと〜?」
「○○ストリートに新しいお店ができて、そこのマネージャーになったんだってさ。」
新しい店の話は聞いていました。この不況下で出店する店はそう多くないので、ナタリアは貴重な機会をものにしたようです。「よかったわね。本当によかった」私は我が事のように胸を撫で下ろしました。

不意に尋ねた私をナタリアは笑顔満面で迎えてくれ、「息子同士が友だちなの」と言いながら、同僚のひとりひとりに紹介してくれました。彼女のマネージャーぶりはすっかり板に付いており、売れ筋商品を淀みなく説明しながら仕事振りを垣間見せてくれました。こちらまですっかりウキウキした気分になり、尋ねてよかったと思いつつ店を後にしました。

正直者はバカを見ない――。
これは50年近く生きてきて学んだことです。子どもが高校生になってからの離婚。クルマの免許もなく、今までは専業主婦か働いていてもパートだったと思われる40がらみのナタリア。現実を受け入れ、素直に苦境を吐露し、自分の置かれた立場にしっかりと立ち、一歩一歩着実に進んでいく姿は私が心から尊敬する正直者のそれでした。

ここまで自分にも周りにも正直であると、強くなれるものです。人に知られたくないことでも開き直って公言してしまえば、
「ねぇ、知ってる?あの人、ご主人と・・・(ヒソヒソヒソ)」
「聞いたわよ〜。どうもあの2人、前々から・・・・(ヒソヒソヒソ)」
と、やりあう人はまずいなくなるでしょう。いたとしたら『付き合う価値のない人』を見分ける手っ取り早い方法になるはずです。

正直者には周囲からも少なからぬエネルギーが送られてきます。スポーツ選手が地元で戦うとサポーターの力を得て思わぬ勝利を収めることがあるように、たくさんの人からの「想い」はエネルギーとなり、受け渡しができるものだと思います。少なくとも盗み見られるよりも見守られるほうが、どれだけ気が休まることか。

出会ったばかりの私ですら彼女のことを思うたび、「がんばれ、がんばれ!」と心の中で念じてしまうほどですから、旧知の友人知人からは計り知れない応援や支援が差し伸べられたことでしょう。これこそ正直者が呼び込む順風なのだと思います。彼女の率直さに触れたら、誰でも「力になりたい」「がんばってほしい」と願わずにはいられないでしょう。

世の中には神妙な顔で人の不幸話をしながらも、目だけは好奇心を隠し切れずにイキイキとしている人がいるものです。こういう人は周囲に触れ回るように同じ話を繰り返しては、自分の幸福を、少なくとも話の主よりも恵まれた状況を何度も何度も噛みしめるように愉しみ、
「お気の毒よねぇ。」
と話を締めくくったりします。この人たちにとり、正直者は大バカ者です。「黙っていればいいものを・・・」と、内心きっと思っていることでしょう。

しかし、彼らは知りません。正直者は圧倒的に愛されることを。
誰もが不幸よりも幸福を願い、短命よりも長寿を望むように、人間は本来、前向きにできているのだと思います。懸命に生きる姿は希望であり、それを目指す正直者は愛されるのです。例え目先でバカを見ても長い目で見ると、正直者は必ず元を取っています。

ナタリアとレックスがきっとそうであるように・・・・・。

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「マヨネーズ」
ただ今、ドル円が87円台に突入! 
キター━━━(゚∀゚)━━━!!!

新しい地平線、この後の展開は?輸出メーカーは大変ですね。それでも生き残る日本企業。本当に本当に素晴らしい競争力だと思います。ちょうど昨日、こんな記事を読んだところだし。
(リンク切れご容赦下さい)

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西蘭みこと

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