「西蘭花通信」Vol.0495  生活編  〜ブルースプリング・レポートVol.8:キウイ男子〜  
2009年10月11日


ニュージーランド人は飛べない国鳥キウイに並々ならぬ愛着を持ち、自分たちのことを「キウイ」と呼びます。「アイム・キウイ」と言えば、「私はニュージーランド人です」という意味で、キウイ・メイドと言えばNZ製と、なんでもかんでもキウイです。キウイ・ハズバンドと言えば、良きハズバンドの代名詞!
(ということになっています。実際は夫婦の2組に1組が離婚する離婚率の高い国なので真偽のほどはわかりませんが・・・・^^;)

オスが卵を抱くキウイ同様、キウイ・ハズバンドは家事や育児を積極的に手伝ってくれ、家庭を大事にする人たち(のはず)。確かに日本人の目から見ると、子煩悩でマメな人が多く見受けられますが、多分に仕事の関係で「時間に余裕のある人が多い」というのも一因かなと思います。この国は酪農・農業を含め、都市部でも自営業者の比率が非常〜〜に高いため、日中家にいるハズバンドが大勢いるのです。(かくいううちの夫もそうです)

さて、前置きが長くなりましたが、長男・温(15歳)の友だちカーティスはバリバリのキウイ。パパは建築関係の自営業、ママは勤め人という非常にキウイっぽい両親のもと、(NZでは女性がフルタイムで働く比率が上昇している一方で男性のそれは低下中)3人きょうだいの末っ子として、親からもきょうだいからも可愛がられてきました。その辺が「可愛がられる」より「可愛がる」ことに慣れている長男体質の温と合うようです。

2人とも運転免許が取れる15歳の誕生日を迎えるやすぐに筆記試験を受け、とりあえず仮免許(ラーナーズ・ライセンス)を取りました。どちらもすぐにパパに付き合ってもらい、路上教習へ。(NZには日本にあるような教習所がなく、普通は家族から運転を習います)ラーナーズを取得してから半年経つと、限定免許(リストリクテッド・ライセンス)の試験を受けることができ、受かれば助手席に普通免許(フルライセンス)を持った人が同乗する必要がなくなり、1人で運転できるようになります。

温は限定免許に切り替えようと、この春休みは業者に個人教習を頼み、日々ハンドルを握っています。「キウイ男子」を自認するカーティスは電気機械全般が大好きで、その延長であるクルマも大の大好き。誕生日からとっくに半年が経過しているので1人でどんどん運転しているのかと思いきや、まだ仮免だそう。

「意外ね〜」
と言うと、
「"男はやっぱりマニュアル。オートマなんて女のクルマ"って言ってマニュアル練習してんの。」
と、温が思いもかけないことを言い出しました。
「じゃ、マニュアルで試験受ければ?」
「ところが、パパがマニュアル教えるの面倒くさいって言って、あんまり教えてくれないんだって。」
「だったらオートマで試験だけ受けて、後からマニュアル練習すればいいのにねぇ。」
「ボクもそう思うんだけど。」

なかなか気骨?!のあるカーティス。でも同級生が続々と1人で運転し出しているので、内心気が気ではない様子。そういうところにこだわる繊細さも、実は青年ぽかったりして。温などその逆で、万事非常に鷹揚。むしろ部活の練習の送迎から解放されたい親の希望で、「早くリストリクテッドを!」という雰囲気になっているところもあります。

キウイ男子たるや、勉強だって「男の科目」で行きます! 11年生(日本の高一)ともなると、進路に合わせた科目の選択が必須になってきます。2人とも進学希望なので先日提出した12年生の志望科目にも将来の方向性が託されています。温はココでお話したように、
「英語」「数学」「歴史」「経済」「会計」「ビジネス・スタディー」
を選択しました。

カーティスに言わせると、
「歴史に会計?けっ、そんな女の科目。オレは男の科目で行くぜ!」
と。そんな彼が選んだのは、
「物理」「化学」「数学」「電気」「コンピューター」と確か「英語」
(温の記憶が曖昧なので)
まっ、日本で言えば文系と理系の違いのよう。

「技術とか木工はとらないの?男っぽいじゃない。」
と聞いてみると、「男の科目でもビンボー系は嫌なんだって。」
「えぇ?な、なにそれ?」

「リセッションでパパの仕事がどんどん減ったのをみて、ビルダー関係(大工そのものというより建設業全体を指しているよう。カーティスのパパは大工ではありません)はビンボー系でダメだって思ったんだって。」
えぇぇえ?

子どもといえども15歳ともなれば親の懐具合を良く知っています。それを友だち同士であっけらかんと話すので、
「離婚専門の弁護士はウィークエンドが忙しいけどペイがいい」
とか、
「△△のパパはリストラされたから、ネイバー(隣の家)のガレージを建ててる」
など、何でも知っています。この年齢で景気には好不調があることを肌身で感じられたのは、それなりに貴重な体験だったことでしょう。

大変なことがあっても、そこから何を掴むかで「その後」が大きく変わるはず。
キウイ男子カーティスもおっとり温も、がんばれ!

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「マヨネーズ」
カーティスは家で化学の実験?もするそうで、見せてもらった温が、
「ママ、スゴいよ。ホントに泡がブクブクして煙が出てきたんだ!」
と興奮していたこともありました。

しかも、彼のお手製クッキーは天下一品。焼くときは声を掛けてもらい、大きな1枚を1ドルで(=65円 激安!)10枚分けてもらっています。お料理の腕もなかなかだそうで、男気があって家事をこなすところがこれまたキウイっぽいです。

温は実験も料理もせず、部屋にはぬいぐるみや招き猫などかわいいグッズとヘビメタ・バンドのポスターが共存中。

これって「男の部屋?女の部屋?」 
今度カーティスに聞いてみよう。

西蘭みこと

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