「西蘭花通信」Vol.0491  生活編  〜ブルースプリング・レポートVol.4:転校生〜   2009年9月4日

長男・温(15歳)は私によく似ています。性別が違うので「外見が」とは言い難いのですが、目元、指、髪質、ふくらはぎの形だのは自分でも「似てるなぁ」と思います。性格も自分がこだわることにはまったく妥協しないのに、どうでもいいことには恐ろしく無頓着なところなど、血のつながりを感じます。

そんな温は転校生が大好きです。これは私も一緒でした。知らない場所から来たというだけで、並々ならぬ興味が湧いてしまうのです。ありふれた日常の話でも、それが知らない場所の話となるとどんな内容も新鮮に聞こえ、つい根掘り葉掘り聞いてしまうものでした。この辺温もそっくりで、
「前の学校ではXXXXだったんだって!」
という話がよく出てきます。

NZの学校は日本に比べると転校生が多いです。新学期はもちろん、学期の途中でもけっこう編入してきます。常に移民の流入があり、海外から帰ってくるキウイもいます。そもそもキウイは引越し好きで、家の値段が上がったと言っては売って引越し、職場が遠くなったと言っては引越し、離婚だ再婚だと頻繁に引越す風潮があります。

「ママ、新しく転校してきたトゥファンっていうコね、日本のアニメが大好きなんだって。"ギブリが一番好き"って言うから何かと思ったら、スタジオ・ジブリを英語読みしてたんだ。「もののけ姫」と「魔女の宅急便」が好きでトトロのことも良く知ってたよ。」
そういう自分も日本のアニメとマンガが大好きな温。話が合いそうな転校生で、新しい出会いは二重丸のよう。

「トゥファンて英語の名前じゃないわね。どこから来たのかしら?」
「トルコ人だよ。白人とアジア人のハーフに見えるけどね。ちょうど「火垂るの墓」のDVDを観たところで、シティーまでサクマドロップ買いに行ったんだってぇ。かわいいよね。」
あの戦争悲話に子どもながらに深く感動した経験のある温にとり、同じジブリ作品でも「千と千尋の神隠し」のような大作以外で感動を分かち合えたことは、余計に嬉しかったようです。

同じ頃、校内でばったり再会したのがクレイグ。もう一人の転校生です。5年前の移民直後、半年だけ通った小学校の時の友だちで、中学からは私立校に行ってしまったのか姿を見かけなくなっていたそうです。お互い驚いて近況を話すと、クレイグは母親が家を出て行ってしまい、両親が離婚。男手一つでは面倒を見切れない父親たっての頼みで、中学からボーディング・スクール(寄宿学校)に入ったんだそうです。

「でもね、パパがまた結婚して一緒に住むことになったから転校してきたんだって。クレイグはボーディングが嫌で嫌でしょうがなかったから、すっごく喜んでたよ。」
「へぇ〜。よかったね。いつも言ってるけど、子どもは自分の行きたい学校に行くのが一番いいよね。」 「でもね、それだけじゃなかったんだ。」
「えっ?」

「"今、どこに住んでるの?"って聞いたら、アリソンっていうコと一緒に住んでるって言うから、ビックリしちゃったよ!」
「えぇぇえ!アリソンって、あのアリソン?」
「そうだよ。」
アリソンは温が仲良くしている男女数人のグループの1人で、話の中でちょくちょく登場する女子生徒でした。
(温の高校。プレハブ校舎が並ぶ素朴な学校です→)

「そういえば冬休みが終わってから、"ママがまた結婚して最悪〜"って、いっつもみんなに文句言ってたんだよね。大学生と高校生の"やなヤツ"と一緒に住まなきゃいけなくなったって。学校から帰ると自分の部屋から出ないでずーっとずーっと本読んでるって言ってたけど、その"やなヤツ"がクレイグだったんだ。いいヤツだけどね、アリソンは嫌いみたい。クレイグにはそのこと言わなかったけど。」

きっと言わなくてもわかってるよ、温くん ̄m ̄+ 
クレイグ兄弟がいいか悪いかというよりも、母子家庭で静かに女2人だけの生活を送っていたところに大中小の「野郎」が3人も入り込んできたわけだから、彼女としては理屈抜きにイヤなんでしょう。しかも義理のとはいえ、突然きょうだい、家族って言われても・・・・・▽%□#@X&♯\・・・・・

話題も観るテレビ番組も違えば、食べ物の好みも量もぜんぜん違うはず。家の中の空気とノイズレベルが完全に変わり、バス・トイレも共有、洗濯物も一緒となったら年頃の女子にとっては頭クラクラ〜☆_☆;な出来事なんじゃないでしょうか?この辺、男子はなんとなーく「デキが単純そう」な気がするのは私だけ?少なくとも温を見ている限り、同じ状況に置かれたらクレイグ同様、「普通の学校に変われてラッキー♪」となりそうな気が?!

かく言う温も、かつては香港からの転校生だったわけです。その時に皆に温かく迎えてもらった経験から、温だけでなく善(12歳)も転校生とは比較的親しくしているようです。こちらはお気楽に「どこから来たの?」「前の学校はどうだった?」「クラブは何?」と聞いているだけでも、右も左もわからない転校生にしてみれば、それが初めて交わす言葉かもしれません。時には暑苦しいかもしれないけれど(笑)、彼らの緊張を解(ほぐ)すことにもなっているはずで、母親譲りの野次馬根性も少しは役に立っていそうです。

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「マヨネーズ」
温は所属する水中ホッケー部が3年連続で全国大会へと勝ち進んだため、ただ今クライストチャーチに行っています。気温12〜−3℃だそうですが冷水の中で奮闘中(のはず!) 去年に続いて今年も優勝目指して、がんばれ〜♪

西蘭みこと

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