「西蘭花通信」Vol.0486  NZ・経済編  〜キウイセーバーに入ろう!〜         2009年6月20日

今年1月にアメリカの格付け会社スタンダード・アンド・プアーズ(S&P)にガツンと一発お見舞いされたニュージーランド。5月の新年度予算案では、「格下げ回避の隠し玉」だったんじゃないかと個人的に思っている、国による年金への積み立てを11年間凍結するという寝耳に水の話が出、格下げどころかアウトルック(見通し)が「安定的」に引き上げられ、逆にS&Pからお墨付きをもらってしまいました。

この経緯を「クールビジネス」「クールビジネスU」で見てきましたが、政府は景気が回復したら年金への積み立てを再開し、凍結した分も取り戻すようなことをゴニョゴニョと口ごもりながら言っています。しかし、実現するかどうか定かではありません。まず、今のキー政権が4期連続の超安定政権を築かない限り、11年後に与党である可能性はないのです。圧倒的なカリスマ性で絶大な人気を博したクラーク政権ですら、3期目にはボロボロになってしまい9年で終わりました。国民を10年以上満足させることは容易ではありません。

次に、今払えないものが11年後にサクサク払えるのかという疑問もあります。借金で行き詰った人が
「今はないけど、デカいカネが入るんだ。絶対返すから・・・・」
と言っているのに良く似ています。
「騙すなんてとんでもない。カネさえ入ったら耳を揃えて返すよ。」
と、本人もその展開を信じ切っているので、態度も堂々、語尾も明瞭。ところが話の内容となると、どーも曖昧至極。 「そんなに上手くいく?」ということで、11年以降の件(くだり)は、政府が「約束手形を切っただけ」と考えています。

前回もお話したように、私の場合、年金受給まであと17年8ヶ月あります。(夫は20年以上!)今の受給条件である65歳から、年間14,000ドル(約85万円、夫婦同居の場合。夫も65歳になれば年間170万円の世帯収入)が満額もらえるなど、これっぽっちも思っていません。 なぜなら、
1)NZの高齢化が急速に進んでいる、
2)国民は年金の財源を負担せず、国が全額負担している、
3)国家財政が昨年度から赤字に転落している、
といった理由が主なところです。

現行制度ではキウイや永住権を取得した移民は、自分では一銭も払っていない年金を65歳になれば自動的に受給できるのです。こんないい話、そうそうないでしょう。国籍を問わず、永住権が取れた人が内心、いや大っぴらに喜ぶ大きな理由のひとつが、この年金の存在です!
「本国の年金受給資格すらないのに、NZに永住したら年金がもれなく付いてきた♪」
みたいな話。(永住者には多少条件が付きますが)

かくいう西蘭夫婦も日本で働いたことがなく、日本の年金は1円たりとも負担したことがありません。当然ながら受給資格もなく、「年金崩壊」とマスコミがおどろおどろしく書き立てても、金融業界にいた時に、年金を運用するファンドマネジャーの手口を漏れ聞き、そこから想像しうる損失額を想像して血の気が引く思いをしても、まぁ、はっきり言ってガイジンさん並みに関係がないわけです^^;

でも、ここでは違います。このまま暮らしていけば65歳で年金がもらえるのです♪ しかし、その原資の一部になる年金基金への積み立てを国が11年も止めるとは?!この基金はあくまでも社会の高齢化に供えたもので積み立てを止めたからといって、いきなり年金が止まるわけではありません。これまで通り一般の財源から負担するので、予算案でも政府は受給条件に変更がないことを断言していました。しかし、それはいつまで?

では、この国で骨を埋(うず)める覚悟の西蘭夫婦としては、どうしたらいいのでしょう?「キウイセーバー」があります!NZはちょうど2年前に、個人が拠出していく確定拠出型年金(日本でも話題になった401kです!)「キウイセーバー」を始めました。前クラーク政権の置き土産で、かなり導入を急いだ感はありますが、個人的には後年長く評価される偉業だったと思っています。

(予算案発表後、野党労働党の野次と党首の猛烈な批判に苦味虫を噛み潰したような顔で耐えるイングリッシュ財務相。労働党の政策のほとんどを引き継いでるんですけどね〜→)

前政権は「キウイセーバー」を設立したことで、年金を二本立てにしました。国が年金制度を見直し、減額したり需給年齢を引き上げたりしても、国民の老後に混乱をきたさないよう周到に準備をしたわけです。それぐらいキウイの間では、「老後は政府の年金で」という考え方が定着しています。夫婦で年間170万円の世帯収入と言っても、持ち家だったり低コストの国営住宅に入居していたり、ちょっとした蓄えがあったりアルバイトができたりすれば、この国では生活していけます。

現にそれより低い世帯収入に甘んじながら、65歳の誕生日を心待ちにしている人が大勢います。堅い定職がある人でも使いきれないほど預金のある資産家でも、国から年間85万円がもらえるとなれば、喜んで受け取るでしょう。それが現在の制度です。マスコミにすら「大盤振る舞い」と指摘されるほど、この国は豊かな老後を財政で丸抱えにしてきたのです。しかし残念ながら、私の世代にはそんな老後は待っていないことでしょう。(つづく)

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「マヨネーズ」
なんだか真面目に更新中*▽* 
「いつまで続くか?」
と思われた、そこの方!長年の読者の方でしょうかー。ー;何度も中断&再開、申し訳ありません。自分でもどうしてなのかよくわからないのです。最近は1年前ほど忙しくないはずなのになぁ。ブツブツ・・・

キウイセーバーに関しては、いつか書こう書こうと思っていましたが、今回の予算案で再度見直しがなかったところを見ると、キー政権はこのままいくつもりのようです。

西蘭みこと

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