「西蘭花通信」Vol.0474  NZ・生活編  〜家族の木〜                 2008年12月8日

移住後に初めて知り合った友人一家と2年ぶりに再会しました。古い読者の方ならご記憶にある方もいらっしゃるかもしれませんね。(ご興味があれば両家の過去の経緯はコチラから)彼らの長男・イライジャが次男・善(11歳)の同級生だったのがきっかけとなり、家は目と鼻の先、しかも西蘭家の大好きな「アイちゃん」(=パシフィック・アイランダー)ということで、このサモア系一家と仲良くなるのはあっという間でした。

しかし、出会って半年後に彼らは引っ越してしまいました。今からちょうど4年前のことです。その後、彼らがオークランドに来たときに何回か会ってはいたものの、最後に会ったのは2年前。パエロアという街まで訪ねて行った時でした。

「親族の集まりがそっちであって帰りが遅くなるの。一晩泊めてもらえないかしら?」
突然奥さんのメリーから電話が入ったときは鳥肌が立つほど感激し、その36時間後には再会していました。
(イライジャ本人が来られなかったのは残念ながら、みんなこんなに大きくなりました→)

「親族の集まりはどうだった?楽しかったでしょう?」
あまりにも久しぶりで何から話したらいいのかわからないまま、とりあえず彼女たちの訪問の目的について尋ねてみました。
「よかったわよ〜。初めて集まってみたんだけど100人近く集まってね。知らない人がほとんどなのにみんなすぐに打ち解けて感激したわ。」

ひゃ、100人@@?
誰かのお葬式でも親族だけとなったらそんなに集まることは稀でしょう。それが「とにかく集まってみよう!」という呼びかけだけでそんなに集まるなんて!

驚くべき話はそれどころではありませんでした。
「今回集まった全員はたった1組の夫婦の子孫なの。その夫婦は4人の子どもがいて、その4人が結婚してまた4、5人ずつ子どもを持って・・・としているうちに、大きな2つの系列ができたらしいの。住んでいるところもサモア、NZ、オーストラリア、それ以外の外国とばらばらになり、もう誰がどこにいるかなんてわからなくなってたのよ。」

NZのサモア人社会が本国より大きいのは有名な話。どこの南太平洋諸国の島々も状況は同じで本国の人口よりも遥かに多くのアイランダーたちがここで暮らしています。なのでいくら血縁を大事にするポリネシアンといえども、離れ離れになりそのうち音信不通になってしまっても不思議はないでしょう。

「今回集まることになった発端もひょんな話からだったの。ある地方でサモアの女性が亡くなり、家族が新聞に死亡広告を出したの。(注:NZでは非常に一般的なこと)そうしたら、それを見てオークランドから飛行機とクルマを乗り継いで1人の女性が訪ねて来たのよ。その人は亡くなった人の姪かなんかだったの。そんな人がいるなんて家族はまったく知らなかったのでびっくり仰天。その女性もおばにそんなにたくさん親族がいると知ってこれまたびっくりだったという訳。」

「その女性が有能な弁護士で、けっきょく彼女の呼びかけで今回の集まりが実現したの。実行委員会が結成され、ウェブサイトも立ち上げて他の親族の発掘も始めたのよ。サイトは常時アップデートされて、判明した親族もどんどん増えていって今日に至ったわけ。それでも来られない人がたくさんいたから、本当はもっともっといるんだけどね。次は2010年に本格的なのをやる予定なの。スゴいと思わない?」

私の頭の中には、新芽を吹き、若葉がぐんぐん伸びていく、大きな大きな木のイメージが広がっていました。親族がわかるたびに枝が伸び、葉が広がり、揺るぎなく育っていく木、「家族の木」――まさに英語で家系図のことを指すファミリーツリー。赤の他人が遠い親戚としてつながっていく感動は、話を聞いているだけでもひしひしと伝わってきました。特にお互い移民の身(メリーはNZ生まれの第2世代)、本国で一生を送るよりも自分たちのルーツにはことのほか敏感なのです。

メリーは母方が最初の夫婦の4人の子どもの1人を祖母に持つ一族で、今回の呼びかけによりお互いほとんど知らなかった2つの系列がつながったそうです。自分の来し方がカードをめくっていくように次々に明らかになったら――。まさに3週間前に配信したメルマガ〜DNAの旅〜の続きが目の前で繰り広げられているかのようで、他人事とは思えないほど胸が躍りました。メリーや子どもたちが並みならぬハイテンションで乗り込んできたのが心から納得できました。

「素晴らしいじゃない。今までのことがわかったばかりか、これからのこともずっとわかるわけだから先が楽しみよね。私たちなんて小さな家族だし、ここには親族もいないし、息子には従兄弟もいないの。そんな話を聞くと羨ましいわ。子どもたちにとってもいいことよね。」
メリーは満ち足りた様子でうなずきながら、「2010年が待ち遠しいわ」と、相変わらずとことん前向きでした。ここはメリーたちの「家族の木」が高く大きく育つのを夢見つつ、後日譚を楽しみにするとしましょう。

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「マヨネーズ」
「マガシバも親戚だったの〜」
と、シレっと言うメリー。
「ええええっ!マガシバってあの、ロビー・マガシバぁ??」
「そう。本人は来なかったけど、お父さんと兄弟が来てたわ。次は来るらしいわよ。」

ロビー・マガシバといえばNZ一のモテ系タレント。(画像はコチラ)コメディアンでもあり俳優でもあり、大ヒットした映画「シオネズ・ウェディング」でもいい味出してましたっけ? 

>これはちょっと自慢できるよ、メリー!

西蘭みこと

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