「西蘭花通信」Vol.0473  生活編  〜スーツ・スーツ・スーツ〜            2008年12月3日

「実は私ってスーツフェチ?」
と、ふと思ったのが9月の里帰り中の香港。14年間、庭同然だった金融街セントラルで幾重にも重なるスーツ姿を目にしつつ、えも言わずほっとするものを感じました。今の生活ではシティーか最寄の繁華街ニューマーケットにまで繰り出さないことには、スーツを来ている男性を見かけることなどありません。スーツ姿でも多くの人がマイカー通勤なので目にすることがない上、香港や日本に比べてスーツ人口が絶対的に少ないのです。

里帰り直前、長男・温(14歳)のパスポート更新のために、2人で朝8時半にシティーへ行った日がありました。ラッシュアワーの駅ですら蛍光色の反射材がついたベストを着て工具箱を持った人がいるほどで、男性のスーツ姿はジャケットを含めても半分以下。それ以外は大学生と思しき人も含め、かなりカジュアルな服装です。
「とても平日の朝の出勤姿には見えないな〜。みんなどんなお仕事なんだろう?」
と、ついキョロキョロ。

移住前まではカジュアル・フライデー以外、スーツ一辺倒だった夫も今や在宅業。スーツもあまり着なくなりました。仕事でイギリス人に会うことになり、
「キウイじゃないからなぁ。」
とスーツで出かけたら、先方は会社のロゴ入りのポロシャツだったと苦笑しながら帰ってきたこともありました。取引先から「スーツで来なくていい」と言われることも珍しくありません。勢いYシャツにジャケット、単にノータイ(センツァ・クラバッタなどと狙ったものではなく)のこともしばしばです。残念っ><!
そんな毎日ですから、身体にビシッと合った高級感漂うテーラーメイドのスーツが行き交う香港は、懐かしく新鮮でした。
「そうよ、やっぱりスーツはこうでなくっちゃ♪」
とニマニマニマ。スーツフェチといっても主役はあくまでもスーツなので着ている人には無頓着。似合っているか、センスがいいか、全体のバランスがいいかが問題なのであって、その人がどこの誰で、ましてやイケメンかどうかなど全〜然関係ありません。というか、そういう余計な情報が入ってこない後姿や、通りを渡ろうとふと足を止め横を向いたときなど、動きがあるときの方がスーツの良さが光る気がします。

香港は中国を脱出した上海テーラーの流れを汲む腕のいい仕立て屋がごまんといるので、テーラーメイドがかなり普及しています。イギリスの植民地だった頃、チャールズ皇太子が香港のテーラーの質を褒め、背広の語源ともなった仕立て屋街、ロンドンのサヴィル・ロウ から猛反発をくらったこともありましたっけ。テーラーといってもニッポンの政治家先生が着ているような「いかにも」という感じの重厚長大なものではなく、きちっと流行を押さえ洗練されたもので、かつての同僚たちもかなりの頻度で作り替えていました。食道楽・着道楽の街ですからね。こういうところもNZとは正反対?!
(香港のセントラルにて→)

何年か前に朝日だったか日経だったか新聞をめくっていると、背広の全面広告が目に飛び込んできて度肝を抜かれたことがありました。しかもそれはコムデギャルソンのもの!「日本の背広を新しくします」とかそんな感じのストレートなコピーで、
「さすが川久保玲!」
と思わずひざを叩いて立ち上がりそうになりました。

「そうよ、そうよ、こんなに巨大で遅れた市場を放っておく手はないわ。なによりビジネスシーンがカッコよくなる!」
とDCブランドらしからぬ白黒の広告に握りこぶしの想いでした。それは私にとり、ニッポンの背広の「ドブネズミ色」からの決別宣言に聞こえました。

検索したところ、あの広告が出て「コムデギャルソン・オム・ドゥ」がスタートしたのは1987年だったんですね〜。今から21年前@@;そりゃ、ニッポンの背広も進化するはずです。今回5年ぶりの里帰りでもスーツ姿が俄然スマートになっているのを実感しました。流行のせいなのか細身でフィット感が強く、肩幅や胸板があってウエストがシェイプされていればかなり着映えがするものが目立ったような?「とりあえず」着ているのではなく、「意識して」着ている人が飛躍的に増えているんでしょう。結構なことです。

「スーツフェチ」で検索すると関連情報もざっくざく(((@@))) 「こんなしぐさにグッとくる」だの「ココが萌えポイント♪」だの、バーチャルに脱いだり着せたり着せ替え人形状態?! 男女平等が堂々と闊歩する世の中になったんですね〜(しみじみ) スーツメンなる和製英語も!一瞬、新種のラーメンかと思いましたが(タンメン、サンマーメン、スーツメン・・・とかイケそうでは?)、単数でもメンと複数形なのが重要なよう。スーツマンだどスーパーマンやアンパンマンなど音つながりでコミック化しちゃうのか?

ただ今独りで里帰り中の夫にも香港でYシャツを作ってくるよう強力に勧め、8枚作成♪ 本人は「こっちでテキトーに買うよ」とあまり乗り気ではなかったのですが、それにアイロンをかけるのは私!着ている姿を見るのも私!とあって、テーラーメイドを推しました。これで香港時代に作ったものを一掃できます。色は白一色。ニッポンの銀行員みたいですが、夫も私もスーツのYシャツは断然白派で、色シャツはジャケットのときのみ可な人。

里帰り中は元お客さま兼現友人、古い知り合いの直木賞作家の先生と2人のスーツメンにお会いしてきました。テーラードスーツが日常なお2人、着こなしもごく自然。作家先生は若い頃から非常〜にオシャレで、着こなしのバリエも年齢とともに増えていくような円熟のスーツスタイル。こうなるとどんなアイテム、デザイン、色も浮いて見えず、自分のものになっているのはさすがです。70代でもこの高感度、萌えてる場合ではなく「自分もがんばろう!」と小さく決心したりなど。

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「マヨネーズ」
映画でスーツといえば、やっぱり007!「慰めの報酬」の上映が始まったので、
「早く観たいよ〜♪」
と夫の帰りを待っていたら、もう香港で観たんだそう。ちっ。

西蘭みこと

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