「西蘭花通信」Vol.0443  生活編  〜中華コスモス W〜           2007年4月6日

(これは連載です。これまでの話は以下のリンクからどうぞ)
「中華コスモス」
「中華コスモスU」

「中華コスモスV」

移住3年目にして初めて訪れた華人の祭典「ランタン・フェスティバル」。入り口付近にジャーンと構えた白亜のテントには、世界に網を張る華人ネットワークにとり、まさに「世界の地銀」HSBCが!彼らはフェスティバルの最大スポンサーでもありますが、その話だけで連載2回分とは、いくらなんでも寄り道しすぎ><; 距離にして入り口から十数メートル。いい加減、先に進みましょう。

すぐに色とりどりの巨大ランタンがお目見えしました。まだ明るい時間でしたが、薄地の布越しの灯りは鮮やかで柔らかでした。よくできていますが、全体的に西洋化されている印象。それがまたローカル色を醸し出していました。中国の青磁は有名でも、彼らは意外なほどこの手の飾り物に青を使いません。何といっても、おめでたカラーの赤、金、オレンジ(金の代替色)など、圧倒的に暖色中心です。色の意味あいが最大優先されるため、「組み合わせた時に品よくまとまるか」、などということは、この際、度外視です。

狛犬というよりも、「おすわり」してエサを待つ犬に見えるランタンを横目に、なおも進んでいくと、かなり大がかりな仮設ステージが見えてきました。照明で照らし出された舞台には今しも真っ赤な太鼓が並べられているところ。幕の合間をもたせようと、若い男女の司会者がマイクを片手に、
「いや〜、本国からのアーティストとなるとやはり違いますね〜」
「楽しみですね〜」
とかなんとか、軽いおしゃべりをしています。女性は一見場違いなセミフォーマルなドレス、男性は超カジュアルにジーンズというなんの一貫性もない2人。協調も妥協もなしに並存しているところなど、すこぶる中華風´m`;

「2人とも中国語か。普通こういうのは1人が英語、1人が中国語でバイリンガルでやるもんじゃないのか?2人もいるんだからさ。」
突然、傍にいた夫がポツリと言いました。私の頭は会場に足を踏み入れたとたん、完全に中国語にローミングされていたため、夫のような発想はまったくありませんでした。中国語は私にとり、英語よりも負担なく耳に入ってくる言語なので、中国出身と見られる司会者が北京語を話しているのはごく自然でした。

確かに夫の言う通りです。日本人のお祭りである「ジャパンデー」の時は、 2人の女性司会者が日本語と英語で、すべての演目や出演者を紹介していました。民族のお祭りといえども、キウイを始めたくさんの他民族もやってくるわけですから、現地語である英語で自分たちの言葉を解さない人たちをもてなすのは当然でしょう―。 「ただし、中華系を除いて。」
2人の淀みない中国語の会話を聞きながら、思わず注釈を入れたくなりました。

そう、骨の髄まで中華思想がしみ付いた彼らには、バイリンガルにして自分たち以外の人たちをもてなそうという発想がスコンと抜けているようなのです。例え彼ら2人が英語に堪能であっても、です。別に、
「人口比で世界最大の言語、中国語を理解しろ。」
とか、
「中国語がわからないやつなんか、構ってられない。」
と尊大になっているわけではありません。ただただ、自分たちを中心に考え、自分たちにとって便利な方法でやり、人をもてなすという発想を欠けば、中国語オンリーであっても彼らとしては問題がないのでしょう。

ステージを見上げる大勢のキウイたちは特に不満そうでもなく、次々に並んでいく真っ赤な太鼓を興味深げに眺めています。彼らにとり、耳慣れない中国語も彫り物を施した派手な太鼓も同じくらいエキゾチックにステージを盛り上げる小道具でしかないのかもしれません。パフォーマンスが始まれば、言葉など必要ですらないのですから。
「子どもと飯食いに行ってくるよ。」
夫は屋台の方が気になるようで、私を置いて先に行ってしまいました。

準備が整い、妙齢な中国人女性が中華版地球防衛軍のような、ピタピタのパンツに中華服、膝までかくれる黒ブーツという勇ましくも色香の漂う姿で登場。「笑うな」と指示されているのでしょう、全員が無愛想、しかめっ面、ポーカーフェイスのどれかですが、中華系の自他ともに認める美人にはありがちな表情かと。かの国では「女は愛嬌」などとは誰も言いません。むしろ愛嬌は男にこそ求められ、ビジネスの基本かも?!音楽に合わせ、か細い腕で激しく打ち出すビートはキウイのハートをガッツリつかんだことでしょう。

パフォーマンスが終わり、最後の最後にやや固いながら笑顔らしきものが・・・。「まるで曇り空に差す後光?」と思いきや、彼女らはさっさと下がってしまいました。う〜ん、この意表をつく、後を引く消え方!西洋ではここで拍手喝さい、「なんだったらアンコール」と思い切り引っ張る場面でしょう。再びキウイのハートをガッツリ?! 
「いや〜、素晴らしかったですね。」
「迫力ありましたね〜。」
と、くだんの司会者が再び出てきました。

「あちらで彼女たちのCDを販売しております。ぜひこの感動をお持ち帰りください。」
と、いきなりセールストーク!さすがにタダでは起きない中華系。ショーは無料でも少しでもコストが回収できるのであればと、抜かりありません。「やっぱりね〜」とニマニマしていると、今度はまったく同じ内容を、女性司会者が英語で言い始めたではないですか!バンド名の紹介以外、一言もなかった英語で!(しかも流暢
 ̄▽ ̄;)中国語を解さない人には、『名前』⇒『CDのセールス』とまぁ、「短刀もここまで直入?」というダイレクトさ。スゴいです。

中華コスモスの掟:転んでもタダでは起きるな。要求はダイレクトに。 (つづく)

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「マヨネーズ」
もう4月。今年も4分の1が終わってしまったんですね。早〜い><; 過去3年間の各年の最大の出来事は、「移住」、「永住権取得」、「マイホーム取得」でしたが、 今年は幅広い意味での「家のアップグレード」がキーワードになりそうです。

西蘭みこと