「西蘭花通信」Vol.0435  生活編  〜ラストリゾートと失楽園〜       2007年2月23日

金融用語で言うところの「ラストリゾート」とは、最終避難先。その時々で、金だったり、米ドルだったり、最高格付けの債券だったりします。金融危機と呼ばれるような状況に陥った時、世界中を回遊している投資資金が一斉に向かう先、それが「最後の楽園」です。経営破たんの噂でどこからも資金調達ができなくなってしまった銀行が最後に駆け込む中央銀行も、ラストリゾートです。銀行間で資金を貸し借りするインターバンクで借りるより金利は高いものの、中銀は市中銀行が生き残るための資金を提供してくれます。

ラストリゾート、それは最後の拠り所。そこがダメならもう後がない崖っぷち、最終手段、頼みの綱、土壇場。それを抜いたら最後の伝家の宝刀。刺したら自分も絶命する蜂の針?・・・とまあ、大いに頼りにする一方、それを失ったら自分も共倒れになる、かけがえのないものとも言えましょう。(イマドキの日本では大手留学・移住エージェントのことですかね
^^?)

私にとってのラストリゾートは、間違いなく夫です。私は自分のことを決してわがままだとは思っていませんが、ニッポン人離れしたマイペースさで暮らしていることは自他ともに認めるところです。(世間はこれを「わがまま」と言っているのかも?)ニュージーランド旅行中に、
「ここに住みたい・・・」
と突然言い出した妻の願いをかなえ、絶好調だった中国ビジネスでのキャリアをあきらめ、3年半後には本当に移住してきたのを筆頭に(「百年の大計」)、彼はすべてを引き受けるラストリゾート、西蘭一家の中央銀行(ん?)です。

このメルマガでも彼の中銀ぶりは何度かご紹介しています。例えば、NZ旅行中に片田舎の町で40歳の誕生日を迎えることになった私が、
「パチパチと火がついた花火が載っているケーキ」
とういう無理難題をプレゼントに頼むと、酔客で盛り上がるアイリッシュ・パブで、本当に花火がパチパチ輝くNZの代表的なデザート、パブロバを出してくれました!(「かぐや姫のお願い」

かと思えば、ギャングの活動で有名ながら、大好きなパシフィック・アイランダーがごまんといる南オークランドのオタラで、
「フリマでビーズ・アクセサリーを売ってみたい!」
と思いついた私に付き合い、朝4時半起きで5時半からの場所取りに向かったこともありました。(「オタラで逢いましょう」) これらは日常生活の氷山の一角。不可能を可能にしてしまう、最後の楽園の実力を披露し始めたら、毎日メルマガが配信できます(笑)メルマガを書く時間をひねり出すこと自体、彼の協力のもとに成り立っています。

結婚以来足掛け16年、さんざんスポイルされてきた私ですが、いよいよラストリゾートを失うことになるかもしれません。先日、夫がしみじみと言ったのです。
「人生80年なら、今がちょうど折り返し。今までの人生はなんにでも一生懸命だったけど、これからの人生はとことん楽しむことにする。やりたいことをやるよ。」
今までも十分楽しんで、彼なりにやりたいことをやってきたと思うので、これからはそれどころではないレベルで楽しみ、夢を追求していくようです。

「いいじゃない、何でもやってみれば。」
私は「失楽園」という言葉を思い浮かべながら答えました。これからは彼の番です。さんざん好きなことをしてきた(というか好きなことしかしてこなかった)私はこれからもそうしていくでしょうが、その前に夫のやりたいことを優先させる覚悟です。彼は今、ラグビーのレフリーになることを目指しています。

夫は長男・温(13歳)が生まれる前から香港で子どもラグビーのコーチを引き受け、移住後もこのラグビー王国で子どもたちのコーチを続けてきました。3シーズン目に入った今、ラグビーの草の根にかかわってきた彼が一番憂えていることは、NZラグビーの急速な衰退です。オールブラックスなどプロは相変らず強く華やかな存在であっても、子どもラグビーのようなラグビー・ヒエラルキーの底辺では選手不足、レフリー不足、人気の凋落が深刻で、ラグビー協会もあの手この手で人集めに躍起になっています。

「このままでは誰が子どもたちの試合の笛を吹くのか?」
と、夫は真剣に心配しています。幸い在宅業で時間には余裕があり、長いコースに行くことも、その一環で身体を鍛えることもできます。おまけに一家揃ってのラグビー好き。シーズン中はラグビーどっぷりときています。
(クラブチームの試合の後ファンに囲まれるオールブラックスの人気選手ダグ・ハウレット。ラグビーは年々「するもの」より「観るもの」になりつつあり心配です→)

レフリーはボランティアに近い存在ですが、
「いつかはお小遣いくらいもらえるようになりたい(それぐらい重要な試合の笛を吹きたい)」
と、夢はあくまでも大きく。すでにトレーニング・コースが始まり、来月からは週1回の講義も始まります。同時にスイミングも始め、ラガーとともに80分間走り続けられる体力保持に取り組んでいます。

私は失った楽園の変わりに、夫と一緒に見る大きな夢を手に入れました。今よりずっと忙しくなるであろう彼のために、できることがあれば積極的に手伝い、夢の片鱗をわけてもらおうと思います。

今日は夫の41回目の誕生日。ハッピー・バースデー。夢はかなうよ!

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「マヨネーズ」
今年も夫の「優越週間」が終わりました。今月7日が誕生日の私と5歳違いになるこの2週間が、彼にとってはミョーに優越感に浸れるようで。
「キミは四捨五入したら50。ボクは四捨五入しなくても40。そうだ!善(9歳)に四捨五入を教えるにはちょうどいい例だなぁ。」
など、独りでブツブツ言っては悦に入っています。年齢を重ねることは勲章くらいに思っている私も、
「まだ青いなぁ。」
と別の意味で優越感?


西蘭みこと