「西蘭花通信」Vol.0433  生活編  〜20台の机U〜            2007年2月12日

「与えられると信じるのであれば、できる限り真実を生きること。」 あとは、必要以上に求めず、分かち合い、運命を信じてその時々で必要なものだけを手に入れていく――。
(メルマガ「西蘭花通信」〜21世紀のその日暮らしZ〜より)
と言い切ってはいても、長らく捜していた子どものための勉強机が、雨あられとまではいかなくても一度に20台も届けば、必要なものは与えられるのだと、信じるしかありません。

ボランティアをしているチャリティー・ショップに一家で出向き、息子たちに自分の眼で届いた机を見てもらいました。2人ともすぐに気に入り、思いがけず夫と私まで仕事用に2台買うことにしました。
「さぁ、机が来るからお部屋を片付けなきゃね。要らない物はどんどん出して。」
物々交換にも似た不要品の交換は、子どもたちにもすんなりと受け入れられ、彼らは半日がかりで持ち物を整理し、古着や古本を出してきました。

今度は私の番です。まずはキッチンを攻め、使っていないプリン型、土鍋、缶切り、計量カップなどこまごましたものを引っ張り出してみたら、ミカン箱1箱分の量になりました。不用品はこまめに寄付していたつもりですが、あまりに細かいものはつい「次回にまとめて」と取り残されがちでした。引き出しにかなり余裕ができ、物の出し入れもスムーズになりました。ついでに年末の大掃除にやりそこねていた棚の掃除も済ませ、一石二鳥。

次は物置化しているランドリー・ルームへ。もはや絶対に使うことなどないのに、「高かったから」と捨てずにいた封も切っていないディオールのボディクリーム数本(笑)、スキンケア用品を一斉処分。使用期限からして人手に渡すなら今が限界です。ゴミにするくらいなら寄付した方がましでしょう。他にもちょっとした物がいろいろ出てきて、やはりミカン箱1箱分になりました。生活の贅肉は身体同様、知らず知らずのうちに付くものです。

そしてガレージ。絶対的な収納場所不足で引越し以来、段ボールが山積みになった状態ですが、そのいくつかをのぞいただけでもオモチャ、童話の本など、明らかに必要のないものが出てきました。他にも前のオーナーが残していったガーデン用品、登山靴などがあり、ここでも1箱できました。机4台がやって来るのを機に不用品が3箱になったのです。上出来です。これを有効利用できそうな人たちと分かち合いましょう。子どもの物は友人たちにお下がりとして引き取ってもらい、それ以外はボランティア先に持っていきました。

ショップに持ち込んだものを自分で値札付けしてみて驚きました。1点1、2ドルと100円前後のものがほとんどですが、中には5ドルを越えるものもあり、塵も積もればで合計100ドル(約8,500円)くらいにはなりました。店頭に並ぶ商品はまず完売するので、不用品だったものが100ドルを稼ぎ出してくれるのは時間の問題で、現に並べたそばから、いくつかの物が売れていきました。余談ですが3点セットの計量カップは友人が石けん作り用にと日本の100円ショップで購入したものでした。1度だけ使い「もう石けん作りはしない」と私にくれ、それが目の前で2ドル(170円)で売れていきました。

つい小1時間前まで自分の不用品だったものを、同僚がレジ袋に詰めているのを横目で見ながら、
「まるで錬金術!」
と苦笑が漏れました。同じ物がゴミ直前の不用品から立派な商品に変わり、買われていくのを見るにつけ、「善き事は全方位に上手くいく」という思いを新たにしました。不用品が蘇ることは、我が家で役目を終えた物にとっても、手放した私にも、新たな持ち主にも、資金を集めたい店にも、幸せなことです。

(左が15年前に買った缶切り。キャンベル・スープの缶との相性が悪くなり、「買い換えようか」と思っていた矢先、ボランティア先で見つけたのが右の新品で2ドルでした。古い方は1ドルで売れていきました。新品はお店で見たら24.99ドルでした@@ どちらもイタリア製の働き者)

さらなる分かち合いとして、このメルマガを目にした方がそれぞれの場所で分かち合いの輪を広げてくれたら、と思います。お下がりとして譲るもよし、フリーマーケットやネットオークションで売却するもよし、寄付するもよし。いずれにしても誰かと何かを分かち合うことで、与えられることへの感謝と物への尊厳をかたちにしてみようというお仲間が1人でも増えたら、と願っています。私は子どもの机のために新たな木が切り倒されなかったことを密かに、しかし真剣に喜んでいるような人間ですので、本気でそう願っています。

ニュージーランド在住の方であれば、街のあちこちにチャリティー・ショップがあります。救世軍、ホスピス、ガン協会などが店舗を構え、寄付の品を幅広く販売しています。ほとんどの店は店員から配達のドライバーまでボランティアで賄われているため、売り上げの全額に近い金額が寄付に回るはずです。こうした店では寄付と購入の両面から分かち合うことができます。他にも自宅のポストに届くガン協会のピンクのビニール袋に不用品を入れ、外に出しておくだけでもこの国では立派な寄付になります。指定の日に回収車がやってきて袋を集め、中身は店頭販売されたりそのまま活用されたりします。

今では、必要以上に求めず、分かち合っていれば、必要なものは、それが金品であっても仕事であっても機会であっても――、与えられるのだと信じています。なにもせずにこのからくりの根拠を要求するよりも、まずは信じて始めてみることです。早晩、20台の机のように、疑り深くてもボーっとしていても、はっきりとからくりの根拠を突きつけられることがあることでしょう。そうでなくても、分かち合いは決して無駄にはなりません。

(ショップでの戦利品の一例はコチラコチラでも)

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「マヨネーズ」

「チャリティー・ショップなんて貧乏人が行く店。恥ずかしくって入れない。」
という声を聞いたことがありますが、私はまったく平気です。分かち合いの場、ボランティアが集う場、生活に根付いたリサイクルの場を提供してくれる素晴らしい場所です。どうぞご来店ください。

西蘭みこと