「西蘭花通信」Vol.0414  NZ編 〜今ドキのキウイ世相−0800 SAVE ME〜   2006年9月9日

次男・善(9歳)が通う小学校では毎年、卒業公演として6年生全員による大掛かりな劇の上演があります。もしかしたら、ニュージーランドではどこの小学校にでもある恒例行事なのかもしれません。私たちが移住してきた2年前、6年生に編入した長男・温(12歳)は滑り込みながらも台詞のあるちょい役をもらい、公演に参加することができました。

観劇は有料で、今年は大人10ドル(約800円)、子ども(5ドル)でした。
「小学生の劇が有料?」
と目を丸くされるかもしれませんが、これには重要な意味があります。まず有料である以上、それに見合う内容や仕上がりを提供しなくてはいけません。両親以外の人にも足を運んでもらう水準が要求されます。また、集めた資金はスポーツ用具費用など、学校運営に有効利用されます。こうした使命や目的は、子どもたち、保護者、教職員すべてを深く、固く、真剣に公演に結び付ける重要な要因となっているようです。

今年の演目は「0800 SAVE ME」。

0800はトールフリーの上4桁の番号で、SAVE ME(助けて!)は電話のキーにあるアルファベットを数字に置き換えたもの。海外ではよくある数字表記ではなく単語表記で覚えすくした電話番号で、正義の味方を呼ぶためのホットラインという設定です。それ自体、なかなか粋でトールフリーが氾濫しているNZらしいネーミングです。

たった2日間の2回の上演のために化粧紙にカラー印刷という立派なチラシを作り(大枚をはたいたのか、生徒の親の一人が印刷工場をやっていて破格もしくはボランティアで刷ってくれたのか?)、そこにはアマチュアとは思えないイラストも。マントを翻し摩天楼の合間を軽やかに飛ぶ男女のスーパーヒーローたち。覆面姿の忍者を従え、不気味に立ちはだかる吊り目におかっぱ頭、チャイニーズドレスを着た黒マントの悪役らしき女性が描かれています。どう見ても子どもの絵ではなく、これもボランティア?


何よりも度肝を抜かれたのは、2年前の温の時と比べ、ステージ、衣装、照明、音響どれをとっても段違いに豪華絢爛になっていたことです。200万ドル(約1.6億円)をかけて竣工したオークランドの公立小学校では最大の(それはすなわちNZ最大ということになるのでしょう)、クラーク首相まで呼んで開幕式典を祝ったホール(日本の体育館に相当)に一歩足を踏み入れるや、違いは一目瞭然でした。新ホールでの初の卒業公演。いつまでも語り草になること間違いなしとあってか、並々ならぬ意気込みです。

(←本当に一国の首相がわざわざ首都ウェリントンから来て祝辞を贈ってくれました。スゴいけど、どうして?その時のことはコチラでも)


ステージには、
「ママ、あれ、中華レストラン?」
と、小さい子がステージを指して聞いているほど大きい、一対の身をくねらせた金色の龍が置いてあります。本当にどこかのレストランの入り口から借りてきたのでしょう。(これも保護者の店^^?)それ以外、普段何に使われているのかちょっと思い当たらないほどの大きさで、ゆうに3mはありそうです。龍と龍の間は一段高くなっており、背景には生徒の手作りと思われる一枚一枚の鱗も鮮やかな赤金の龍のコラージューが一対。その間には赤い龍が踊る黄金の玉座が・・・どこもかしこも龍だらけ´。`; しかも、その一角だけ網目状の照明が当たり、いかにも怪しげです。

まさに西洋人が思い描く、東洋の悪役のイメージを再現した舞台。映画やテレビで何度も見てきたような正誤を問わないステレオタイプ。しかし、定着したイメージを忠実に再現した様子には、熱心に真面目に根気よく取り組んだ、たくさんのママやパパの情熱を感じ、東洋人の1人として決して嫌な印象は受けませんでした。身近に親しいアジア人などいない親たちが、とにかく一生懸命作ったのでしょう。サビの部分が繰り返されるオリジナルの音楽といい、凝った照明といい、小学校のレベルを大きく超えています。

舞台は百点満点。では、ストーリーは?

どこかの大都会。そこには男の中の男「マンリーマン」が率いるイケイケの「スーパー・スカッド」と、元気溌剌な「ワンダーウーマン」率いる地味系の「バックアップ団」という、2組の正義の味方がいました。危機に直面した市民がトールフリーに電話をして助けを求めると、女の子はゴージャスできらびやか、男の子はナヨナヨなイケメンばかりというイマ風スーパー・スカッドは、
「ネイルしたばっかりでまだ乾いてないのよ〜。」
とかなんとか言いつつ、さっぱり出動しません。
     (イケイケ、モテ系の「スーパー・スカッド」。マンリーマンなんてナッヨナヨ*^ー^*→)

一方で、真面目一辺倒、ボリューム感たっぷりの大柄な女の子に、カリカリで小柄な男の子ばかりのバックアップ団では閑古鳥が鳴き、開店休業状態。冴えない外観に、助けを求める連絡が入らないのです。 「このままではいけない」 と危機感を募らせる彼ら。正義の味方も見せ場がなくてはタダの人。キラキラ、チャラチャラのスーパー・スカッドに対抗して何かしなくては? でも何をしたらいいのでしょう?
        (体育会系(?)地味系「バックアップ団」。なぜか大柄な女の子ばっかり→)


彼らがイケてない自分たちに頭を悩ませている頃、ナゾのアジア系ドクター・フームは黒装束の忍者部隊を従え、リサイクル・ゴミからのエネルギーを利用した世界征服を企み、着々と準備を進めていました。
(←「ミセス・ダレカ」 ではなく、「ドクター誰か」ですね´ー`;)

その準備とは? 
善良な市民のゴミを盗むこと@@ 


ゴミ袋の盗難が多発し、市民は正義の味方に助けを求めたのですが・・・(つづく)


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「マヨネーズ」

9月に入るや、予想通り仕事の方はさっぱり(笑) その代わり月初に、今月のキーワードは「コネクター(連結者)」とひらめいたせいか、ハイハイ来ました来ました、いろーんな話が。
迷子ネコ探し、全寮制学校探し、宿探し、人や物の紹介・・・
最近、この手の予感が妙にクリアで本当になることが増えたような。根本的には閑な証拠^^?

西蘭みこと