「西蘭花通信」Vol.0387 NZ・生活編 〜不動産チャチャチャ:アジア仕込み〜         2006年4月5日

たまにはオスカーとネイサンの話でも。初めての方に簡単にご説明しておくと、彼らは私たちの友人でアジア系移民第2世代。50代のオスカーと70代のネイサンはアジア系らしくお金儲けの話が大〜好き(笑) 特にこれまたアジア系らしく、不動産投資にご執心(他にもいろいろやってますが)。話を聞いているだけで、20年にわたったアジア暮らしが懐かしくなるわ、勉強になるわで、面白くて楽しい限り。(前回の話はコチラからどうぞ) しかし、投資にはリスクが付きものです。ある程度、危ない橋を渡らないことには、なかなか儲けにはたどり着きません。今回はかつて、そんな橋を渡りきったオスカーの経験談を。

「今までの不動産投資で何が一番辛かったって、そりゃ、90年に住宅ローン金利が22%にまでハネ上がったことだよ。当時、南オークランドのパパトエトエに家を持っていて、週100ドル(今の為替で約7,200円)ずつ返済してたんだ。ところが金利が急騰して、それが週400ドルにまでなってね、400ドルだよ!真っ青だったよ。でも投げずに(投資に失敗して損を覚悟で手放してしまわずに)がんばったんだ。」
日本人の感覚で言えば、月々4万円の返済額が16万円にハネ上がった感じでしょう。ともかく、信じがたい激変です@@

22%の高金利など目の玉がひん剥けそうですが、90年のニュージーランドはそんな時代でした。「国家の破綻か再建か」で、徹底的な財政再建、規制緩和、外資導入、「小さい政府」の実現を図っていた真っ最中で、高インフレ沈静化のために身を切るような高金利政策を実施していたのです。そうしなければ国が潰れてしまうほど切羽詰った期間が何年も続きました。当時ですから住宅ローンはすべて変動金利だったはずで、政策金利が上がるに従い、借り手はなすすべもないまま返済額の増額を受け入れるか、損を覚悟で家を売り払ってしまうか(例えローンが残っても)、どちらかしかなかったことでしょう。

オスカーは、新聞の一面が競売物件
(不動産用語では「けいばい」。住宅ローンを貸し付けていた金融機関が返済の滞った物件を債権回収のために競りにかけて処分すること)で埋まった当時の新聞を、今でも持っているそうです。22%の高金利を生き延び、リスクをチャンスに変えた彼の輝かしい戦利品です。
「ノーリスク、ノーリターン」(危険がなければ見返りもない)
百戦錬磨の今日のオスカーがあるのも、そのおかげなのでしょう。

(右ページの白黒広告が競売物件。カラーは通常の広告。見るからに「訳あり〜」という感じが一目でわかります。景気を反映して白黒広告は増加傾向にあり、最近では不動産のフリーペーパーの一面が埋まるようになりました→)

「当時はいい家がどんどん投げ売りされててね、金があればな〜と思ったよ。」
そんな高金利ですから競売一歩手前で、持ち主自らが投げ売りしてしまうケースも後を絶たなかったことでしょう。完全な供給過多の中、不動産市場の需給バランスは根底から崩れてしまったのではないかと想像します。その3年後の、私たちが初めてこの国を訪れた93年の時点ですら、クライストチャーチではかなり気の利いた、素敵な一戸建てが1,000万円以下で売られていました@@ 一介の観光客としてこの国の経済状態など何も知らない身でしたが、あまりの安さに、
「ちょっと不動産屋に寄ってみる?」
と夫に提案したのを覚えています。残念ながらアンティーク・ショップ巡りに忙しく、実現しませんでしたが´。`

オスカーはパパトエトエの家を持ちきったものの、新たな投資物件を底値で手に入れることはできませんでした。その経験が、よりキャッシュフロー(いわば現金収入)を高めておくことの重要性への覚醒につながったそうです。6,000万円の物件をポンと1軒買うよりも、3,000万円の家を2軒買う方が、1軒を転売してキャピタルゲインを、1軒を賃貸にしてインカムゲインを・・・・・と、いろいろなオプションが出てきます。高価でも資産が1つしかない場合より、手元の流動性が高まり、資金を有効活用しやすいのです。

「そのうちシティーのマンションが買い頃になってくるだろう。NZドル安が進めば、アジア人がまた子弟をNZ留学に出すようになる。そうすればシティーのマンション需要も回復してくるだろう。」
というオスカー。まったく同感です。アジア人の彼がアジア人の思考回路を語ると、より説得力があります。
(個人的にはガソリン代の高止まりも、シティーに住まう意味を見直す契機になると思っています

ついでに言えば、アジア人の親の中にはその時々の賃貸利回りを計算し、
「これなら下宿をさせるより、買ったほうが割安。」
と、子どもにマンションを買い与える親もいるでしょう。学校を卒業する時に買値を上回っていれば売却して手仕舞い。下回っていても割安な水準で買っていることになるので、賃貸に出し海外投資として保有し続けることもでき、為替差益が出たタイミングで利喰ってしまうこともできます。いずれにしても子どもの下宿代が浮き、利益は留学費用の足しになるでしょう。これがアジア人たちです。

「キミたちも少しでも早くここで資産形成を始めた方がいい。不動産は早々に買い場に入ってくるだろうし、資金も用意できるようだし(ン?)、離婚もしてないし(ン?)、たいしたもんだ。キウイの30代、40代なんて、カネはないし、別居だ、離婚だと、ぐちゃぐちゃなんだ。ボクも含めてね。」
(彼はバツイチ。再婚した奥さんとはラブラブ♪)

おっと!妙なところでこっちに振られてきました(笑) 結婚生活を続けていることを褒められるなんて思ってもみませんでしたが、確かにこの国では別居・離婚は不動産の売り材料になります。本当にここで、アジア仕込みの不動産本位型資産形成ができますように(祈)

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「マヨネーズ」
「ポリネシアンLOVE」の人も、そうでない人も、NZ在住だったらぜひぜひ観てくださ〜い、映画「シオネズ・ウェディング」(「シオネの結婚」)。シオネは「太郎さん」ってくらいアイランダーにはよくある名前。一家にひとりはシオネ、です。

西蘭みこと