Vol.0374  生活編 〜森羅万象とともにU〜                2006年1月21日

普段まったく問題のない家に、修理の人が同時に3人もいるという事態に遭遇し、
「これは偶然じゃない。」
と思いました。次男・善もその日から学校に戻ったところで、いつなんどき保健室から、
「やはり体調が悪そうなので迎えに来てください。」
と電話が入るかも知れない状態でした。

家の中の何かが上手くいかなくなり、物事が噛みあわなくなっているのを感じました。中耳炎を痛がって泣く善の看病や、併発を見抜けなかった不甲斐なさで、私自身もかなり消耗していました。
「温に移ったらどうしよう。」
「どうして水道の部品の取り寄せにこんなに時間がかかるんだろう。」
「下水が詰まって思うように洗濯ができない。」
などなど、ネガティブな想いで知らず知らずのうちに身も心もむくんでいました。

次々に起こる不具合に絡めとられそうな中、ふと現実に引き戻してくれたのが、香港から持ち込んだ10年落ちの愛車SAABでした。エンジンがかからなくなり修理に出したところ、ラジエーターの冷却水を溜めておくタンクに穴が空いて水が空になっていたため、オーバーヒートでエンジンがかからなくなったことが判明したのです。
「危ないところだったな。もしもワイカトの帰りにでも動かなくなっていたら・・・」
夫の一言の後、思わずふたりで口をつぐんでしまいました。

エンストを起こしたちょうど4週間前、私たちはオークランドから高速を100キロで飛ばしても約2時間近くかかるワイカトという街まで、ラグビーの試合を観に遠乗りしていたのです。多分、その時点で冷却水は空だったのでしょうが、ここの5月中旬は北半球の12月中旬の気候で、ワイカトは地元の人が厚手のフリースやダウンを着込んでいるほどの冷え込みだったため、エンジンがオーバーヒートせずに無事往復できたのでしょう。
(熱い応援で知られるワイカト・チーフス。チアリーダー以外は真冬の格好→)

行きはともかく、深夜を回った帰り道は前のクルマのテールランプがかろうじて見える程度の濃霧でした。しかも道と言ったら、高速道路とは名ばかりの、至るところでアスファルトの張替えのためにでこぼこの土が剥き出しになったただの国道でした。
「あんなに見通しの悪い場所でエンストを起こしたら・・・」
考えるだけでもぞっとしました。一家で縮み上がったあの寒さに、救われたのです。

その4週間後、今度は通勤ラッシュ時にハーバーブリッジを渡り、隣の市であるノースショアにラグビーを観に行っていました。知らなかったこととはいえ、大変クルマに負担となることをしていたのです。この時は家を出てから、2時間近くかけて目的地まで行ったものです。普段であれば30分かかるかかからないかの距離だったので、仰天ものでした。帰りもかなり冷え込んでいたことが幸いし、問題に気付くことなく戻ることができました。そして翌日の朝、子どもラグビーの帰り、とうとう問題が発覚し後は前回お話した通りです。

冬場であったことに救われたのは間違いありませんが、私にはどうしてもクルマに意思があったと思えて仕方ありませんでした。今でもそう思っています。
「家へ、家へ――」
私たちを無事運び、自分も休み、再び遠出をしても帰り着き、とうとう日中の外出で力尽きた―― 
どうしてもそう思えてならないのです。それでも最後の力を振り絞って、西オークランドから東オークランドの自宅まで戻り、もう2度とエンジンがかからなくなってしまった―― 
のでは?

「苦しかったでしょう。気がつかなくてごめんね。修理したからもう大丈夫よ。」
私はボンネットに手を置きながら、再び心の中で声をかけていました。本当に真夜中の霧の中や何車線にもなっている大渋滞のハーバーブリッジで立ち往生してしまわないでよかった。
「ありがとう。ありがとう。ありがとう。」
香港だったら無価値の廃車にするしかなかったクルマ。でも私たちはとても気に入っていて、ここまで持ってきてしまったクルマ。古くても手をかければまだまだ乗れる美しいクルマ。

「これって気持ちが通じてるってことかしら?」
言葉を介さないどころか、、モノとの意思の疎通に、私は漠然とした手応えを感じていました。いつも誰よりも元気な善の体調不良、キッチンの水道という上水、排水溝という下水がほぼ同時に詰まるという事態に、察するところがあったのです。
「水のように家中を巡るものが、こうも不調になるとは。クルマの冷却水といい、問題は流れている状態が当然な水ばかり・・・これって?」
「偶然じゃない。何かがおかしくなっている。気をつけないともっと他の問題が起きるかもしれない。」
私は愛車のおかげで現実に引き戻され、疲れも不安も吹き飛ぶ想いでした。
「しっかりしなきゃ!」
(つづく)

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「マヨネーズ」
去年始めたラグビーブログを急きょ引越すことにしました。昨日即決、すぐに実施しました。引き金は、「堀江社長名で指示メール」というニュースの見出しでした。ここ数日のライブドア関連ニュースはずっと追っていましたが、とうとうトップからの関与がはっきりしたことで気持ちが固まりました。

旧ブログはライブドア・ブログで、使いやすく大変お世話になりましたが、元市場関係者として、こういうかたちで投資家を裏切る会社の利益(といっても個人の泡沫ブログでは私の方が得をしていたのでしょうが´。`A)に加担するのは望むところではなく、今回の引越しを決めました。あとは70に達したエントリの移行を粛々と進めていきます。どうぞ今後ともよろしくお願いいたします。

新ブログへはこちらのリンクから⇒ ニュージーランド・ラグビー:オフ・ザ・ピッチ 

西蘭みこと