Vol.0364  生活編 〜良夫賢父〜                   2005年12月3日

例えば昨日の夫。

7時:起床。メールやネット、ニュースをチェック。
7時半:登校する長男を見送って、そのままジョギングへ。
8時:5、6キロ走ってから庭でエクササイズ。
     (エクササイズの後になでてもらえるので、毎朝庭で待つチャッチャ→)

8時半:回収があったばかりの庭ゴミ専門のゴミ箱(大人1人が入れる大きさ)を水洗い。ついでに簡単な洗車。
9時:シャワーを浴びていつもより遅めの朝食。新聞に目を通す。
10時以降:仕事の電話やファックスが入り始めるので、対応したりパソコンに向かったり。私が朝から仕事をしていたので、合間に朝食の後片付けも。

12時半:昼食。私は引き続き仕事。夫が食器洗い。ついでにコーヒーも淹れてもらう。
2時:午後の約束が延期になったそうで、家で仕事。
3時半:子どもが帰って来るのと入れ違いでシティーへ。取引先のクリスマス・カクテルパーティーということでビシッとスーツ姿に(笑)
6時:帰宅。すぐにユニフォームに着替えて、タッチラグビーの試合へ。
8時:帰宅。シャワーの後、遅い夕食。
9時:子どもが寝たところで簡単な仕事の打ち合わせ。
10時:元の会社と中国ビジネスの件でなにやら長電話。
12時:「激眠」と就寝。

ジャーン! これが赤裸々な西蘭家SOHO(在宅業)の実態です(笑) 夫は1日中、短パンTシャツで過ごしていながら、仕事に出る時だけはしれっとスーツに着替えて変身っ! 朝はゴミ箱を洗っていながら、夕方にはグラス片手にカクテルパーティーと洒落こみ、その後はグラウンドでボールを追い回し、夜は夜で「この件はオークランドとクライストチャーチで同時に進めようかと思うんだけど、どう思う?」と仕事の話。普段はこれに洗濯物干し(私が日光皮膚炎になってからは彼の仕事に)、掃除機かけなども入ります。

「なんだかヒマそ〜」
「羨ましい!理想の生活♪」
「そんなんで仕事になってんの?ホントに喰ってけるの?」
「一生それってなんだか物足らなくない?」

友人知人の感想はさまざまです。本人は実に飄々、淡々、こつこつとやっています。しかし、彼自身がこんな生活を心底楽めるようになったのは、ここ半年くらいかもしれません。移住してから起業するまでの移行期には、
「勤め人に戻るべきか?」
起業直後には、
「本当に仕事になるのか?」
など、さまざまな迷いがあったようです。

一緒に仕事をしながら、
「オトコって大変〜」
と、内心思ってきました。私のように女であれば世間の期待値が非常〜に低いらしく、
「仕事、大丈夫?」
などと聞かれることは、親しい友人以外ごくまれです。
「主婦業って忙しいのね〜。もう目が回りそう。」
の一言は、まさに全方位への言い訳となるオールマイティーな切り札。
「お子さんもいて大変よね。よくがんばってるじゃない。」
と、世間は現状で納得し、褒めてもくれます。

ところが、男となるとそうはいきません。
「お仕事の方はいかがですか?もう慣れました?(まだ起業していない段階からこうでした・・・笑)」
と、四方八方から同じ質問が来ます。私も聞かれるので、
「ええ、おかげさまで。」
と当たり障りなく答えると、
「どんなお仕事なんですか?」
とさらに聞かれます。
「まだ準備中で、始まっていないんです。」
と答えれば、
「大変ですね〜」
と同情的な目になりつつも、
「でっ、どんなお仕事なんですか?」
と、やはり同じ質問に戻ります。

どうも世間は彼が何をしているのか、十分な収入を得ているのかどうかが非常に気になるようです。経済的責任、事業展開をすべて彼のものとして見ている点は興味深いものでした。
「私もやってるんですけど。」
と名乗り出ても、
「あら、みことさんは主婦でしょう?ちょっと手伝ってるだけでしょう?」
と、やはり夫のみを評価しようとします。これは多くの人に共通していて日本人、キウイを問いません。
「やっぱり、オトコって大変〜」

世の中には「良妻賢母」や「愚妻」はいても、「良夫賢父」や「愚夫」はいないようです。パソコンで「りょうふけんふ」「ぐふ」などと打っても、間違っても漢字に変換されたりはしません。そんな人がいない以上、そんな名詞もありません。つまり、男は「賢父」「賢夫」であるのが当然で、敢えて言うまでもないということなのでしょう。一方の女は期待されていない分、「良妻賢母」であればめっけもの、大いに褒めそやされるというわけです。

戦後の男女平等を建前とする教育を受け、学校でも職場でもそうあったはずなのに、実際の生活にはこんな不平等がまかり通っているのです。しかも、その不平等は私の目から見ると、多分に男に不利に働いているように見えます。女の中にはそんな役得を重々察し、「良妻賢母」と言われればさもウレシそうにし、「愚妻」と呼ばれてもヘイヘイとやり過ごし、クルッと振り向いては「ベーっ」と舌でも出している人が、たくさんいることでしょう。

「せっかくここまで来たんだからさ、お互いやりたいことをやろうよ。一生続けられるくらい気に入ったことを。それが仕事なら働けばいいし、他の何かならそれをすればいいじゃない。お金がないならどちらかが働きに出ればいいでしょう?移住した意義を見出せる、やりがいのあることをしよう!」

私が言い続けたのは、このことだけでした。家族として、家事さえしていれば世間から放っておいてもらえる女として、彼の誠実な責任感に感謝しつつも、感じている負担が実態のないものであることを暴きたいとも思っていました。そして果たした起業。世の中では当然とみなされても、地道な努力でここまで行き着いた良夫賢父を誇りに思います。


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「マヨネーズ」 そのつもりはなかったのに、4月の「ダンナの唄」の続編になりました。「家庭内暴力にあっても負けないように」(誰から´。`?)と、日々からだを鍛える夫です。

西蘭みこと