Vol.0341 生活編 〜自由を説く、いじわる姐さん〜 2005年9月3日
「西蘭さんは何年入行でしたっけ?」 銀行に勤めていた時、東京からの同年輩と思われる出張者が聞いてきました。 「ほーら、来た来た。」 と内心思いながら、 「2年前です。」 と空とぼけると、 「んなこと聞いてんじゃないんだよー」 という表情がアリアリの彼は、 「この支店の話じゃなくて、何年入行の人と一緒なのかな〜と思って。○○とか△△とかと同期ですか?」 と、さらに聞いてきます。 「現地採用なので同期はいません。○○さんも△△さんも存じ上げなくて・・・」 (これはホント。駐在員は行内に何十人もいました) 出張者は曖昧な笑顔を絶やさないものの、目は「ちっ」と言っています。彼は女性の年齢を興味本位で知りたいのではなく、私が男であれ女であれ、ただただ年齢が知りたいのです。銀行という恐るべきタテ社会で生きる彼らにとって1年の入行年次の差は絶大でした。それにより言葉遣いから態度まで変えなくてはいけないと信じているので、彼にとって得体の知れない海外の現地採用といえども、書類を抱えて同じ会議に向かって歩いている日本人がいる以上、年を知ることは名刺交換の次にすべきことでした。 いじわる姐さんはその辺を百も承知で、答えませんでした。それまでも何度となく同じ質問を受けていました。 「1年の差がなんなのよ。浪人してたり留学してたりで、年齢と入行年次が逆転してる人なんてたくさんいるじゃない。そんなことに気を使うより、会議でしっかり発言してよね、ここは海外。現地スタッフも一緒なんだからさ!」 と思いつつ、彼を見ると非常にわかりやすく困惑しています。敬語で話すべきか、タメ口にすべきか、はたまた先輩風を吹かせるべきか、どう対応していいのか迷っているのです。 「初対面なんだし、どうしたらいいかわかんないんだったら、丁寧語で話せばいいのよ。誰に対しても絶対に失礼に当たらない、便利な日本語じゃない。年齢の上下なんてことより、丁寧で横柄でないことの方がずっと大事だと思わない?」 と思ってみるものの、彼の頭の中はやはり、 「何年入行なんだろう?」 ということで、いっぱいのようでした。ちょっと気の毒になり、 「そういえば□□さんもトラ年だって言ってたから、□□さんと同期になるかもしれませんね。」 と言うと、出張者は、 「ト、トラ年?」 と言ったまま、絶句。 「学生の頃さ〜、年齢制限やってるディスコで聞かれなかった?"ナニ年ですか?"って・・・。サバ読まなきゃいけない時はひとつふたつ前の干支を言ったりしなかった?自分の干支の前後3つくらいは覚えといた方がいいかもよ。」 と思いながら、ミーティングルームのドアに手をかけ、後について来ていた出張者を見ると、 「トラ年?トラ年って? ネ・ウシ・トラ・ウー・・?」 と頭の中で必死で数えているらしく、目もうつろ。 「しっかり頼むよ。」 という意味も込め、 「こちらです。」 と言って、姐さんはサッとドアを開けました。 -------------------------------------------- 「みことさん、何にしますぅ?この店はやっぱり中落ち丼ですよね〜♪」 姐さんを除いては最も年上になるリーダー格の日本人ママが、こちらをうかがうように聞いてきました。中落ちで有名な和食レストラン。集まった4人のママたちは、彼女に同意するようにうなずいています。ところが、姐さんはその中の1人があまり生ものを好まないのを知っていました。ここで「そうね、中落ちにしようかな?」と言ったら、全員が同じものを食べることでしょう。リーダー格が姐さんの意向を聞くこと自体に、そんな雰囲気がありました。 その頃の姐さんはトッピングがなんであれ、丼というものに収まっているご飯を全部食べるのが、かなり苦しくなっていました。食べ物を残すことは極力避けるようにしているので、自然と丼物から遠ざかっていました。特にその店はご飯も中落ちも大盛りで、それが人気の秘密でもありました。姐さんは付き合いで気の進まないものを食べるよりは、食べたいものを食べる主義です。こうしてこそ、食べたものに、食物として犠牲になった生き物に、報いることになると信じてもいます。 「そうね、あんまりお腹空いてないし、稲庭うどんにするわ。」 「えっ?うどん?」 ほとんど「中落ち6つ!」と頼みにかかっていたリーダー格のママも他のママたちも、まったく読めなかった返答に面食らっています。 「みなさんは中落ちでも何でもどうぞ。ここのは有名だし、大盛りだし。」 と振り返したものの、みんなは額を寄せ合って「どうする?」と小声で相談しています。けっきょく、 「やっぱり私たち中落ちにします。」 というリーダー格のご丁寧な断りが入り、生ものが苦手なママも含め全員が中落ちをオーダーしました。 姐さんには似たような経験がありました。SARSで日本に帰国していた時、学校の保護者向けの催しで自分を含め14人のママで出かけた時、14人中12人がカレー、その半分がカツカレー、残り2人のうち1人がカツライスをオーダーし、重複して数えたらカレー系が12人、カツ系が7人と二大勢力が14人中13人を占めたのに仰天したことがありました。最後の1人、14人目の姐さんだけがビビンバ丼という、どちらの勢力とも関係ないものをオーダーしたのです。目の前でカレーを食べている人が、 「ビビンバ丼おいしそうね。本当は私も○○が食べたかった。」 と言っていたのが印象的でした。 (姐さんに育てられ日本人社会では苦労する?香港日本人学校の体験入学にて。7歳の善→) 「たかがランチ。好きなものを食べればいいのよ、誰の目も気にせずにね。」 と、シコシコの麺をすする姐さんでした。(これからも姐さん時々登場) ****************************************************************************************** 「マヨネーズ」 暖かくなってきたら近所のネコも子どもも一斉に外に出てきました。(わかりやす〜い^^;) 今日は久々に5人分の水餃子入り中華麺を作り、子どもたちはサンデッキで思い思いにズールズル。初めてうちで食べたマオリの子が、わざわざい「ヤム!(おいしい)」と言いに来てくれたのがかわいかったです。ポリネシアンには麺!外れません。 西蘭みこと |