Vol.0338 NZ・経済編 〜キウイ・ベアの冬支度Y−冬の向こうに〜       2005年8月24日

ニュージーランドの8月は北半球で言えば2月。1年のうちでも最も寒い季節ですが、立春を迎えて以降は、日一日と寒さの芯が緩んできました。特に気候が穏やかなオークランドは早くも花盛り。桃が茶色の幹に映える鮮やかな花をたわわに咲かせているかと思えば、膨らみかけた木蓮がなんとも優美な姿を見せてくれます。気の早いバラを見かける一方で、大振りな椿が最後の大輪を咲かせています。

ややもすれば、「このまま春になって、なにもかもが元のように回って行くのかしら?キウイ(為替の世界ではニュージーランド・ドルのこと)は上昇を続け、輸入品は安いままインフレも抑えられ、ガソリンの高さにさえ目をつぶっていれば、今までと同じようになにもかも上手くいくの? 不動産も高値のままビックリするほど簡単に売り買いされているし、身の回りでリストラを心配していそうな人など皆無。本当にこのまま春になり夏になっていくのかしら?」             (南半球らしく桃も豪快な咲きっぷり→)

心配がまったくの取り越し苦労で、仰々しくメルマガの連載にまでしたことが物笑いの種になるのであれば、幸いです。そんなことでひるんだり、気に病んだりするクマさんではありません。「リスクを取る」ということは、元来そういうものです。人の思惑とは違うことをしなければならないのです。読みが外れた時にはムダにも不名誉にも思われるかもしれませんが、読みが当たり問題が回避できた時には心強いことでしょう。「いえいえ。季節は春でも景気はやっぱりこれからが冬本番。支度をしとくに越したことはないわ。好景気に沸いたパーティーはもう終わり。」そう思いつつクマさんは淡々と準備を続けます。

キウイ安に振れた後に大幅値上げが心配される、日持ちのする輸入食材をガレージに蓄えた後は、数年にわたって高利回りとキウイ高で家計に大きく貢献してくれたキウイ建て債券に別れを告げ、代金の半分を米ドルに替えました。これでキウイが上がっても下がっても、理論的には影響を受けません。つまり100の価値があった資産の50をキウイのまま、50を米ドルにした場合、キウイが45に下がったら米ドルの価値は55に、キウイが55になったら米ドルは45にと、常に合計は100で理論的にはフルヘッジとなります。

為替は常に相対的に動き、主に対米ドルで取引されています。ですから、一方の通貨が上がれば、その分もう一方は下がり、逆もまた真なりなのです。そこが株や債券と大きく違うところで、株であればトヨタが上がったからといって、その分GMが下がることはなく、同業種であれば連想買いで一緒に動くことも珍しくありません。オイルメジャーは原油高を好感して一斉に買われたり、一斉に利食われたりしています。

キウイ資産を減らすということはその分の高金利を諦めることになりますので、運用益は減ります。定期預金で考えれば、税引き後の金利は米ドルがせいぜい1%なのに対してキウイは約5%ですから、4%を失うことになります。日本円で考えれば100万円の資産につき年間4万円の金利収入減です。しかし、いったんキウイ安となれば4%以上の調整(ここでは下落)になると見ているので、今は気にしないことにします。

単純計算ですが、キウイの1万ドルと、キウイの1万ドルに相当する7000米ドルがあったとします。キウイの方は年利5%(税引き後)の金利がついて1年後には1万500ドルに。「わーい、500ドル儲かった♪」となりますが、その間に対米ドルで5%値下がりしていたとします。米ドルの方は年利1%(税引き後)の金利で1年後には7070ドル。「ちぇ、たった70米ドルか」と思いながらも、その間、対キウイで5%値上りしているのでキウイ換算では10,631ドルとなり、より多くの運用益が出ることになります。この例は話を非常〜に単純化している上、為替手数料を度外視しているので、けっしてお勧めしているわけではありません。ただ、クマさんはこんな風に考えています。

それ以外にも小さな準備をしています。原油高に加え、先月の人民元切り上げを受け、100円ショップで売っているような中国雑貨は、値上げもしくは価格を維持するのであれば質の低下を免れないと見ています。そこで、先日NZを訪れた日本人の友人に、100円ショップで折り畳み傘を5本ほど買ってきてもらいました。同等のものをここで手に入れたら同じ中国製でも1本500〜1000円近くします。いいものを持っていても南半球お得意の強風が吹けばすぐに曲がったり折れたりしてしまうので、100円ショップの傘はちょうど手頃です。原油高はガソリン代の値上りにばかり目が行きがちですが、プラスチックやナイロンなど石油化学製品への影響も見逃せません。

小さくても家族が身を寄せられる家があり、食べ物も多少蓄えがあったり、どこで手に入れたりすればいいかがわかり、すべきことが済みました。一連の冬支度を通じて気持ちの準備ができたことが、一番大きかったように思います。これからのNZ経済の季節が、景気の軟着陸に成功して暖冬になるのか、スタグフレーションのような歴史的厳冬になるのか、今のところはわかりませんが、前者であれば幸い、後者であっても身を小さくしながら、知恵を働かせ何とか乗り切っていきましょう。春は必ず来るのですから・・・(完)

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「マヨネーズ」 「やっば〜、冬が終わっちゃう(汗)」と急きょ(完)^^? NZの自動車行政を代行する自動車協会(AA)まで「給油をする時は満タンに」などと公言し出し、「これってオイルショックの導火線に当局自ら火つけてな〜い^m^?」って感じです。

ところが、連載の発端となった問題のモヤシは、3週間前から元の1袋99セントに戻ってしまいました@@! 
「大変だ〜、NZデフレ入りぃ♪」
と、M&A説が却下された夫はニヤニヤ。

西蘭みこと