Vol.0332 NZ・経済編 〜キウイ・ベアの冬支度X−クマの冬越し〜       2005年8月3日

「ネコの缶詰、もうないだろう?」
「そうね、買ってきてくれる?」
「何缶?」
「30缶。ダースだったら3ダース。安かったらもっと買ってくれてもいいよ。」
「しょう油もそろそろ切れてくるんじゃないか?」
「そうなの。最後の1本かな?」
「何本買う?」
「2、3箱買ってくれる?20、30本あってもいいわ。とんかつソースも欲しいな。マヨネーズは買い置きすると色が変わるから諦めるとして・・・」

最近のごくありふれた西蘭夫婦の会話。夫は私と違って買い物好きなので(ただし食品と家電のみ)、厨房には立たないくせに食品の在庫管理を積極的に請け負ってくれています。米の減り具合など夫に聞いた方が詳しいくらいで(笑)、出かけるついでにタイミングよく"御用聞き"に来てくれます。ミソを頼めば何キロも、コンニャクを頼めば「安かったから」と、6〜7枚買ってくるようになりました。今では完全にツボを押さえています。

私は自分のベア・センチメント(相場というより経済全体に対する弱気)を、モヤシ・ショック以来、行動に移しています。相場を張っている身であれば、とっくに「買い」が「売り」に、「売り」が「買い」にとポジションがひっくり返っている頃でしょう。今までお話してきたように、何らかのきっかけでニュージーランド・ドル(為替の世界ではキウイ)の資源通貨&高金利通貨シナリオの限界がはっきりする事態となれば、気まぐれな海外資金はよりよい利回りを求めて、あっさり引いていくのではないかと思っています。

そうなればキウイは反落し、度合いによっては猛烈なキウイ安の可能性も出てくると見ています。何せこの4、5年で価値が2倍になるほど上昇したのですから、それなりの調整が入ってもおかしくはないでしょう。想像してみてください。対米ドルで100円だった日本円が50円にまでなったのです。それが100円とまでは行かなくても70〜80円になったとしたら? 輸入品が自動的に値上りし、物価が一気にハネ上がり、家計はあっという間に圧迫されます。主婦として、クマに転じた身として、対策の必要を感じました。

「まさか〜。ちょっとくらいNZドルが下がっても、そんなにモノの値段って上がる?」というご意見もあるでしょう。しかし、周りを見回してみると、あるわ、あるわ輸入品。クルマや家電などの大型商品、ブランド品を筆頭とする贅沢品はNZブランドであってもほぼ輸入品です。バーベキューセットだのスパ・プールだのという南半球っぽい"ちょい贅沢品"までオーストラリア製がかなりあります。量販店で山積みになっている家庭用品、オモチャ、プラスチック製品などの雑貨、カジュアルウェアや子どもの衣類・靴もほとんど中国製、たまにインド・パキスタン製が混じり、ことごとく輸入品です。

工業製品ばかりではありません。農産国とはいえ輸入食品も少なくありません。うちには欠かせないミソ、しょう油、ソース、カレー粉、のり、こんにゃくなどの日本食、韓国製の麺やワカメ、これまた必需品の中華・東南アジア系調味料、各種ソース、干しシイタケ、ビーフンなどはすべて輸入品です。愛用のツナ缶とネコの缶詰、冷凍エビはタイ製。パスタやオリーブオイルはイタリア製。コーヒー豆、お茶など何を買っても100%輸入品で、ちょっとしたチーズや瓶詰めもしかりです。米、キャットフード、主な菓子はオーストラリア製、砂糖も「NZ加工品」となっているので原産国は海外でしょう。

逆に国産品で賄えるのは、生鮮食料品、小麦粉、酪農品、ワイン、ビール、塩、ハチミツ、酢くらいです。NZメーカー品でも海外生産しているものが非常に多く、国産の加工品も原材料からパッケージ材料まで、かなりを輸入品に頼っているはずです。生活必需品以外を買い控えたとしても、食費はそうそう削れません。もともと贅沢をせず、値段が安くて新鮮な季節のものをふんだんに食べている家です。しかも食べ盛り(含む:夫)が3人もいて、量で考えたら軽く大人4人分を消費しています。おまけにネコまで大食いです。

インパクトは食費だけに限ってみても、独身者X4倍、夫婦世帯X2倍になりましょう。否が応でも先行きと家計に占めるエンゲル係数を考えてしまいます。キウイ安、インフレを懸念しているキウイ・ベアの冬支度の一つは、冬に向けての輸入食品の買いだめでした。家計と相談しつつ、安売りの時に日持ちのするものを少しずつ買い置きし、ガレージに保管しています。読みが外れてもムダにはならないので、大きなリスクを取っているわけではありません。買い置きを始めてからコーヒー豆は20%値上りしました。

先日は「チャイマ」こと中華スーパーの、卸の店まで行ってきました。小売もやってくれるので単品でも買えます。「キャッシュ&キャリー」というふれ込みでしたが、クレジットカードも使えました。アジア圏で20年以上も暮らしてきたせいか、西蘭家の食卓はかなり無国籍。それほど和食を食べているわけではないので、アジア食品が安くまとめ買いできるのは助かります。キウイ・ベアは意外な場所に蜜壷を見つけて、ホクホク。寒い冬を少しでも温かく越すのに役立つことでしょう。さて、今度は食べ物の次の準備に取りかかることにしましょう。(不定期でつづく)         (業務用もぎっしり。なかなか面白かったです→)

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「マヨネーズ」 この連載を始めてから人民元が切り上がりました。対米ドルでの切り上げ幅はわずか2%ですが、固定相場制で動かなかった為替が制度上動くようになったのですから大きな変化です。車椅子の老人が、突然立ち上がって歩き始めたようなものではないでしょうか? 値上り分のしわ寄せや恩恵が必ずあるはずですから、変化がどう反映されていくのか興味深いところです。そう思いつつ、切り上げ前に仕入れたはずの中国製干しシイタケの1.2キロ袋(クッション大です@@!)を買ってきました。

西蘭みこと