Vol.0321 NZ・経済編 〜キウイ・ベアの冬支度−牛から熊へ〜        2005年6月25日

え〜、突然ですが、ここニュージーランドはオークランドに、クマが出ました。と、言ってもどう猛で危険なタイプではなく、人畜無害、極めて大人しいタイプです。肉も食べますがほぼ菜食で、二本足で歩き、家と庭を行ったり来たりしながら猫と仲良く暮らしています。片付けもすれば料理も作ります。たまにはクルマで出かけることもあり、パソコンをカタカタやっている時もあります。つまり、私のことです(笑)

相場には2匹の動物がいます。雄牛と熊です。英語では"ブル&ベア"と言いますが、日本人でも、ディーリングルームにいる人は普通に使う言葉です。
「今日はちょっとブルはいってて、朝から買っちゃった♪」
と牛夫が言えば、
"I'm a bear, today."
と青目の熊子が答えたり。

2匹が形容詞化した"bullish"=強気、"bearish"=弱気、という言葉もあります。テクニカル分析では「ベア・ショルダー」と呼ばれる熊の背中のような、なだらかに下がる曲線が出れば売りサイン。どこの相場にも現れ、のし歩く2匹たち。

私たちは今から4年5ヶ月前の2001年1月下旬に、中国正月を利用して香港からニュージーランドにふらりと遊びに来ました。どうということはない、毎年恒例の正月旅行のつもりでした。しかし、オークランドをクルマで流している時、突然私が思いついた「ここに住みたい・・・」という思いは、一瞬にして私たちの人生を変えてしまいました。
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(ブログ風ですが^^;)
(←7歳目前の当時の温)

私は一夜にして、何も知らなかったNZに対しスーパー・ブルとなりました。誰に何と言われようとも「NZ♪NZ♪」(別に誰からも何も言われはしませんでしたがA^^;) 職場でも家でも「NZ♪NZ♪」 今考えると、よくもまぁ、家族も周りも温かい目で見ていてくれたものだと思います。移住を決心した贔屓目ばかりでなく旅行中ずっと、
「どうしてこの国って、なんでもこんなに安いんだろう?」
と、感じていました。

スーパーに行っても、おみやげを買っても、食事をしても信じがたい安さでした。
「農産国だから? 超〜物価高の香港から来たから? 購買力平価が過小評価されてるとか?(≒「ビッグマック指数」。マクドナルドのビッグマックがその国ではとっても安く、または高く感じられるっていうアレです)」 
安さの理由を漠然と考えていましたが、よくわかりませんでした。旅行者の目から見る限り、食品から生活用品、モーテル代、フリーペーパーでサクッと見た不動産価格まで、すべてに割安感がありました。

「不思議な場所〜。こんなにステキな人が住んでいて、こんなにキレイで、こんなに人もモノもスカスカなのに、こんなに物価が安いなんて!」 
私は一目惚れした国の秘められた魅力を知るにつけ二度惚れしました。
「世界的に辺鄙な場所にあるというだけで、誰にも振り向かれないんだろうな。なんだかかわいそうだし、もったいない!」
と、惚れ込んだ相手が孤児だと知って、ますますいとおしくなる心境でした。私は昔から、「かわいそう」と「もったいない」に、ことのほか弱いタイプです。

帰って出社するやいなや、さっそく情報端末機をたたいてニュージーランド・ドルの為替チャートを出してみました。出てきたのは「これが為替?」と思うくらい値動きの荒い、材料株チャートのようなものでしたが、なかなかイイ感じです。対円ではほんの3ヶ月前の2000年10月から11月にかけて42円で底を入れ、年末にかけて一本調子で50円まで戻しています。3年前の1997年4月には88円という素っ高値をつけており、半値以下まで調整が入ったことになります。大底を打った直後でした。なるほど。これほどの通貨安なら何でも安く感じる訳です。「いいじゃない!」一目で気に入りました。

さっそくシティバンクに電話を入れ、旅行中に満期が来ていた定期預金の香港ドルでニュージーランド・ドルを買いました。これが生涯初めて買ったキウイ(=ニュージーランド・ドル)です。その後も定期が満期になったり、ボーナスや債券のクーポンが入ったりするたびに買い続け、
「生活費の支払いに困るから、少しは香港ドルも残しといて」
と夫から懇願されるほどでした(笑) キウイは最終的に、2001年を通じて50円で揉み合って値固めをし、その後は直近の80円目前まで上昇してきました。この間、世界の孤児は、世界中の投資家に愛される人気通貨の一つになりました。今や立派な"資源通貨"、"高金利通貨"です。

しかしここへ来て、私はキウイ・ブルからキウイ・ベアに転じました。投資家だったら50円が80円に、500万円が800万円に、5億円が8億円になり、その間にガッツリ金利も稼いでいるわけですから、「まっ、この辺でいっか。ご苦労サン」と、ポイッとする時期でしょう。私は投資家ではなく"実需買い"ですから、通貨不安でも起きない限り、万年キウイ・ロング(買い手口)で行きます。それでも、ベアはベアです。宴の終わりはいつも華やかで、突然で、物悲しいものです。寒さが本格化する前に、キウイ・ベアはパーティーを離れ、粛々と冬支度に入ることにします。(不定期でつづく)

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「マヨネーズ」 
最近流行の(不定期でつづく)ヤバイですね〜。こうやってどんどん風呂敷が広がっていってしまうとA^^; なぜか頭の中にはいろいろな数字がいっぱいで、「経済」というテーマで果てしなく風呂敷が広がりそうです。

2001年に有り金はたいてニュージーランド・ドルを買い続け(って、個人の小金ですから金額は知れたものですが^^;)、呆れた銀行の担当者に「これからは南半球♪」と意味不明に微笑んでいた時以来の、個人的転換点のようです。

西蘭みこと