Vol.0291 NZ編 〜弁当チャチャチャ〜

「ママ、コーンってお野菜?」
と善。
「そうよ。畑で育つでしょう?」
と私。
「じゃあ、ヘルシー?」
「そうね、お肉ばっかり食べるよりはヘルシーかもね。」
「ポップコーンってコーンでしょう?」
「そうよ。」
と答えたあたりから、何やらナゾナゾめいてきました。
「じゃあ、ポップコーンってヘルシー?」
「うーん、何と比べて?」
「サンドイッチとかおにぎりと比べて。どっちがヘルシー?」

子どもの質問は、いつだって突拍子もないものです。
「お菓子とご飯じゃ比べられないわ。それって"ポテトチップスとお弁当と、どっちがヘルシー?"って聞いてるのと同じじゃない」
と、笑いながら言うと、
「じゃあ、ポップコーンがお弁当だったら? それってヘルシー?」
と切り返されました。

「そんなお弁当あるわけないでしょう。ポップコーンはお菓子じゃない!」
と話を切り上げようとすると、
「えー? でもランチにポップコーンやチップス持ってくる子、いっぱいいるよ!」
「はぁ〜〜???ホント?それがお弁当なの?」
「そうだよ。ポップコーン1袋。ハイ、それでおしまい!」 
最後の部分は"That's all"を日本語で言ったつもりなんでしょう(笑) 

話を切り上げるどころか、向き直って根掘り葉掘り聞き出すことになってしまいました。
「そういう子の"モーニング・ティー"のスナックは?」
「ソーセージロールとか、チップスとか・・・」
"モーニング・ティー"とは文字通り"朝のお茶"で、香港のイギリス系インターナショナル・スクールにもあり、学校に何らかのスナック、いわば"お茶うけ"を持ってくることが義務付けられています。具体的には袋菓子、くだもの、クッキーやビスケット、パイなどを持たせますが、"にんじんスティックとりんご"というベジタリアン系から、1年間毎日ポテトチップスというジャンク系まで各人各様です。

この習慣はニュージーランドでも同じで、小中学校ともども、毎日スナックを持たせなければなりません。日本人の感覚からすれば、
「そんな時間にお菓子なんか食べさせないで、ランチの時間をたっぷりとってしっかり食べさせて!」
と言いたいところですが、昼食時間は20分もあればいい方です。しかも、息子の学校の場合、校庭で思い思いに食べるのです(雨の日以外、教室では食べられません)。食べ終わり次第遊べるので、みんなサンドイッチを片手に駆け出して行きます。それがまったく咎められないのです。

息子たちもその流れで、サンドイッチ、おにぎり、巻き寿司など手で食べられるものが好きですが、「白米、命」の善はドカ弁スタイルでその辺にあぐらをかき、弁当箱を持ってかき込むのもOKです。香港ではお弁当にお菓子を持ってくる子はいませんでした。まず、学校が許さないでしょう。興味津々の善は、食べている本人に聞いてみたそうです。

「それってランチ?スナック?」 
答えは、
「もちろんランチ。ランチタイムに食べてるんだから・・・」
「それってヘルシー?」
「もちろん。全部、野菜だよ!」 
その堂々たる答えっぷりはかなり説得力があったらしく、思わず私に確認したという訳です。

「あのね、善くん。ポップコーンはお菓子なの。ご飯じゃないわ。たくさん食べれば、その時だけはお腹がいっぱいになるかもしれないけど、人間にはもっとたくさんのエネルギーや栄養が要るのよ。お菓子だけ食べて大きくなれないでしょう? いろいろなものをバランスよく摂らなきゃね。いくらお野菜でできていても、それしか食べないのはヘルシーじゃないわ。わかる?」 
さすがに私の言わんとすることは理解したようです。

「じゃ、ママ。ラーメンは?ラーメンはご飯?」
「そうね。お菓子じゃないわね。でも、お弁当に持ってこれないじゃない。」
と笑いながら言うと、
「ううん。いっぱいの子が持って来てるよ!」
と、またまた切り返されて撃沈! 

「ラーメンを? カップラーメンってこと?」
「ううん、パックに入ったやつ。」
「インスタントラーメン? 硬い、四角い、黄色いラーメン?」
「そう。それをこうやって食べんの。」
と言いながら、善はハーモニカを吹くように右から左へ左から右へと顔を動かしているではありませんか!

「うっそぉぉぉ!煮ないの?お湯もかけないで?それがランチ?」
「そうだよ。みんなサンドイッチみたいに手に持って、食べながらサッカーとかしてるよ。」
と、ケロリ。 
「あれはヘルシー?ご飯でしょう?」 
(←体育のサッカーの授業中)

もう答える気力もなくなってきました。そこで最後の質問。
「スープの粉はどうするの?ラーメンにかけるの?」
「お菓子のラーメンあるでしょう?(「ベビースター」のこと)あれみたいに、もう味がついてんの。粉がついてるのもあって、粉だけおうちに持って帰ってママにあげる子もいるよ!」
再び撃沈・・・。

政府は今年、年間予算200万ドル(約1.5億円)を組んで、ガン予防プロジェクトの一環に、全国140校、2万人の子どもに1日1個、季節の果物を配る計画です。フルーツを摂ることで健康な食生活への意識を高め、食習慣改善への啓蒙につなげようというのです。最終的にはガン、ひいては病気による国の医療負担の軽減を目指しています。壮大な計画ではありますが、この国の食への問題意識の低さは想像以上で、対応は急務です。千里の道もりんご1個から。

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「マヨネーズ」   "成人マオリ男性の3人に1人は糖尿病"という統計を見たことがあります。ペットボトルの2リットル入りコーラをラッパ飲みしていたり、家族で回し飲みしたりしているのをよく見かけますが、啓蒙は大人に対しても急務です。温の親友のイギリス人は7歳の誕生日目前に糖尿病が発覚、一生インシュリンが手放せなくなりました。

西蘭みこと