Vol.0288 NZ・生活編 〜我慢強い人に〜

トイレットペーパーを入れ替えていると、妙なことに気がつきました。プリントしてある絵が外側ではなく内側になっています。単純な製造ミスなんでしょうが、物珍しくてしげしげと見てしまいました。なんだか手の込んだ透かし絵のようです。ニュージーランドでは、こんなことがよくあります。ちょっとしたものがちょっとばかり不具合を起こしているのです。だいたいは「故障」、「不良品」として目くじらを立てるほどのことでもありませんが、几帳面な人や世界一検品の厳しい日本の生活に慣れ親しんでいる人には、気になるかもしれません。

ネコ用に買った電気毛布は、最初から電気が通りませんでした。(こういうものに限って"Proudly made in New Zealand"などと書いてあったりするから笑えます)量販店の専用カウンターに並びながら他の人のクレームを聞いていると、「クツのサイズが左右違う」「5個入りと書いてあったのに4個しか入ってない」「使ったとたんに曲がった」など、いろいろな問題が。わざわざ返品しない人もいるでしょうから、問題商品に出会う確率はかなり高そうです。申し出れば理由のいかんを問わず、「全額返金」を保証している店さえあります。夫曰く、「良心的だけど、売ってる物によほど自信がないんだろうな(笑)」

モノでこうですから、サービスも同様です。会社名で携帯電話に加入しようとしたら、「その会社名は2件の登記があって、どちらの会社なのか確認できない」となかなか加入がOKになりません。会社登記はインターネット上で、役員の名前ともども公開されていますから、日本人名である私たちの名前がどちらにあるのかは容易に調べがつくはずです。しかし、「調べるのは別の人の仕事」とかの理由なんでしょうが、照会は翌日までかかりました。

取引している凸凹銀行に他行からの入金確認書の発行を頼んだら、「今日の午後やっとくから明日取りに来て」と言われ、翌日出向くと、「忙しくてまだやってない。○曜日までに必ずやっておく」と言うので、わざわざ○曜日の翌日の△曜日に出向くと、「もう郵送した」とのこと。二度の無駄足になりましたが、こんなことはドンマイ、ドンマイ(笑) ところが、郵送されてきた確認書には、明記するよう頼んでおいた@金額、A日付、B送金元の銀行名のうち、Bが入っておらず、どこから入金されたのかが不明なままです。これでは用をなさないので、再び店頭に出向いて事情を説明して・・・。

小さな事と言えば小さな事。しかし、金銭を払ってモノやサービスを受け取っているのだと思うと、見過ごせない事。それでも、「深刻な問題か?」というと、そうでもない事。でも「面倒くさいか?」と聞かれたら、「イエス」。「迷惑をこうむっているか?」だったら、微妙に、「イエス」。「他社や他の担当者に移るか?」と聞かれたら、なぜかここではほとんどのケースで「ノー」なのです。

メルマガ「銀行チャチャチャ」で出てきた○×銀行のように、口座を開いた翌日に解約したのはごくまれなケースで、それ以外は多少の不便をかこちながらも、なぜか同じ店や会社と就かず離れずにやっています。「全額返金」を保証している"良心的な"量販店にしろ、凸凹銀行にしろ、なぜか惹かれるものがあり、ついつい出向いてしまい「今回は大丈夫だよね?」と自問自答しながら、買い物や取引をしてしまうのです。

なぜでしょう? 苦情を言うために電話をしたはずなのに、オペレーターの対応が飛び切りフレンドリーで逆に好印象を持ってしまったり、「すいませんでした。代わりに○○をサービスさせていただきます」と、思いがけないことを提示されたりするケースもけっこうあります。○×銀行の解約手続きをしてくれた人も、非常に感じのいい人でした。

なぜなんでしょう? ここでは不具合での苦労が"お互いさま"なことで、苦情を聞いている人も、別の場所では言っている人でもあるはずです。そう考えると、彼らが苦言を呈している人の不満やストレスを理解している可能性も高く、" I understand your frustration"という決まり文句が、嫌味に聞こえなかったりします。お人良し過ぎるかもしれませんが、今までの問題が所詮は「小さな事」であったり、ここでの生活が長くなるにつれ「小さな事」の範囲が拡大してきていることもあって(笑)、結果オーライで来ています。

(←大型量販店での「オールブラックス」の有名選手のサイン会にて。赤い制服を着た店員が、サイン用のボールを持って一緒に並ぶ微笑ましい風景。みんな「オールブラックス」は大好き♪ 嫌な感じは全然しませんでした。ただし、レジの人はバーコードも値札もない商品の値段を調べてくれる人がいなくてイライラ^^;というか自分もサインが欲しかった?)

逆に、些細なことでカリカリする自分が、妙に小さく余裕のない人間に思えてくるから不思議です。苦情の仕方は香港時代に公私ともども鍛えられましたが、ここではねじ込むよりも対処に長けた、我慢強い消費者になろうと思います。無用な泣き寝入りはしませんが、日本のような過剰なくらい手厚い水準を望めば、それなりの対価を支払わなくてはならなくなります。それもまた個人的には望んでいません。苦情の電話の受話器を置きつつ、「雨降って地固まるだなぁ」と思ったことが何度あったことか。我慢強いキウイのしんがりにつき、淡々と返品する自分でありたいと思います。

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「マヨネーズ」  「ラグビーの試合のチケットが2枚当たったんですが、うちは4人家族なんです。子ども用を追加で買おうとしたら、このエリアは招待席なのでチケット販売はしてないと言われたんですが・・・」と、夫。抽選で無料券をプレゼントしてくれたのは、「ニュージーランド・ヘラルド」。電話に出た担当者は、「じゃ、もう2枚送ります」と、あっさり。けっきょく、私たちは無料券4枚を手に入れました。あわや2枚買い足して、「家族で二手に分れて観戦か?」と思っていたので、問い合わせは大正解! 不満や問題を正直に言ってみるのも、ここではけっこう効果を上げています。

西蘭みこと