Vol.0280 NZ・生活編 〜オタラで逢いましょう その5〜

早朝に2時間待って、やっと場所が確保できた、南オークランドはオタラでのフリーマーケット・デビュー。ところが5人分の場所に6人が集まってきて、さっそく一悶着。それもうまい具合に解決したところに、夫がクルマで乗りつけてきました。外れも外れの場所。私の隣で勝手に店開きを始めた"ゼロ番夫婦"の向こうは、平日には一大駐車場となるこの場所への進入路で、今日はクルマが駐車しているばかり。

夫はマーケットのゲートで行き止まりになった進入路の突端に、他のクルマと一緒にクルマを停め、荷物を運び込んできました。荷物と言っても1メートル四方の小さなテーブル、その真ん中に差すパラソル、椅子2脚、手提げバッグに納まったビーズ・アクセサリー一式と、最小限のものしかありません。"ゼロ番夫婦"が一辺が3メートル近い正方形のテントを張り、その中にクリスマスを当て込んだおもちゃの箱を堆く積み上げているのとは対照的です。

雨は降ったり止んだりでしたが、雲は厚く、完全に止むことはなさそうです。風も強く、15分置きに横殴りの雨が襲ってきます。そんな時にはパラソルは役立たないどころか、風に持っていかれないよう、手で抑えていなくてはならない厄介な代物でした。値段をプリントしてきた紙も、あっという間に濡れて文字がにじんでしまいました。人出は天気の割にはまあまあでしたが、7時台のお客さんとなると生鮮食料品目当ての人たちで、ビニール袋から野菜がはみ出ている人を何人も見ました。

急きょ一緒にやることになった、おもちゃ売りのおにいさん。相棒が運転する、商品を積んだクルマがなかなか来ません。そのうち何やら携帯で話し始めました。隣の台湾人らしい若夫婦は3メートルはありそうな長テーブルを持ち込んで、こまごましたギフトアイテムをぎっしり並べています。かなり手馴れた様子ながら、テントも幌もないので彼らも商品もびしょ濡れで、さすがに困った様子。
(↑ポリネシアンやチャイニーズばかりでなく、白人もがんばってます^^; 左の移動カフェは夫曰く「最も粗利の上がってそうな店」)

一見順調そうな"ゼロ番先生"(先生=中国語では"ミスター")。ただし、重装備の割りにはどうも慣れていないようで、何度もテントの紐を結び直したり、風でバタバタする部分を荷物で押さえたり。その合間に人が通りかかると、「クリスマスプレゼントにぴったりのおもちゃはどうだい?」と、手が放せない分、大声で叫んでは、客引きに余念がありません。誰かが声に釣られてフラフラ寄って来ようものなら、「今日はね、天気も悪いしそろそろ引き上げようかと思ってんだ。だからお買い得にしとくよ!」と、のたまってます!

もう帰る? 2時間も並んでやっと確保した場所で、雨に打たれながら必死でテントを張っているというのに! ここまでしゃあしゃあと言えちゃう精神にもう完敗^^; しかも、「実はこの商品、"ウェアハウス"(ニュージーランド最大のディスカウント・チェーン)に卸してるんだけど、今日は特別に"ウェアハウス"の○割引きにしとくよ。嘘だと思ったら店まで行って見ておいで」と、かなり大きく出ています。

かと思えばその辺をフラフラしている次男の善に、「雨に濡れるからこっちに入ってな」と声をかけ、「おっ!けっこう優しいじゃない♪」と思っていたら、「クリスマスに何をもらうんだい?まだ決めてない?じゃ、ママに"これ買って"って言ってごらん。すごく安いから買ってくれるかもよ」と、そそのかしている始末! 油断もすきもありません。その声がテント越しにこちらまで筒抜けなのはご愛嬌か、さらに一段上手の確信犯か? 善はまさに子どもの遣い。商品を持ってきて、「隣のおじちゃんが、"ママ、これ買って"って言ってだって。でもママ、買わないよね?」「うん、買わない。」

そうこうするうち、おもちゃ売りのおにいさんが「ワルい。俺たち別のとこでやるよ」と言ってきました。「もっと人通りのあるところで、一緒にやれるヤツを見つけたんだ。ワルいな。」 まあ、こんなもんです。「よかったじゃない。大丈夫よ。またね。」「ああ。」 濡れねずみだった台湾人夫婦も「ホールの中でやってる人と場所を替わってもらった」と言って、急いで荷物をしまい込むと、いなくなってしまいました。すぐに軽トラックが乗りつけてきて、いかにも業者風の中国大陸系親子がやってきました。

父親と10歳くらいの男の子は、"ゼロ番先生"と同型の幌をあっという間に設営してしまい、スチールバーを三方に置いて、びっしりと婦人服を掛け始めました。どれもプロの所業で、男の子も小銭が入ったウエストポーチを腰に巻き、いっぱしの商人風情です。ものの20分でちょっとした店舗並みの商品が並び、店先には段ボールに入った「特価品」まで用意されています。すぐに父親は姿を消し、男の子は店の真ん中に座り込んで「ゲームボーイ」を始めました。彼らの手際良さに舌を巻いていると、「ママ、見た?あの子、殴られてたよ」と、長男の温が囁きました。(つづく)

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「マヨネーズ」 私たちを訪ねてきてくれた姑と彼女の30年来の友人2人が(私も結婚以来13年来のお付き合いです)、今日帰国します。お天気に恵まれ、予定すべてが滞りなく進んだ素晴らしい滞在でした。古希前後の彼女たちがマオリ文化に深く感銘を受けていた様子が印象的で、旅行先をロトルアにして良かったと改めて思いました。女性の地位の高さ、日本人でも懐かしい一昔前の暮らしぶり、織った敷物の上に座る畳の上のような生活など、意外な面に親近感を見出していたようです。彼女たちの女性らしい柔軟性に、学ぶところの多い7日間でした。

西蘭みこと