Vol.0264 「NZ編」 〜キウイの計算 その2〜

割賦販売の高額商品を買えば、一括払いにするよりいかに高くつくかを10歳の長男・温に説明したまではよかったものの、ここニュージーランドではみすみす3〜4割も割高になるにもかかわらず、あまり意識しないまま割賦で買うことが一般的な様子。温から、「どうしてキウイは計算しないの?」という素朴な質問が出るのも無理からぬことでした。私は答えに窮してしまいました。

そこに夫が思いもかけない答えを授けてくれました。「キウイの人から聞いたんだけど、割賦販売が普及したのは割と最近のことなんだって。給料を週給でもらってる人が多いから、定額で"週○ドル"というのは受け入れやすかったらしいよ。だから、あっという間に定着したんだそうだ。でも支払い金額の小ささに、ついついあれもこれもと買ってしまい、気づいたら支払いに追われて家計は火の車という人も少なくないらしい。借金は借金だからね、金利も高いし。現にこの話をしてくれた人の親戚も、"ローン・シャーク"(高利貸や取立て専門業者)に追われて大変な目に遭ってるらしいよ。」

ここでは家具や大型家電のみならず、ラジカセのような小型家電からパソコン、バーベキューセット、芝刈り機、果てはシステムキッチン、プールまで、何でも割賦販売されています。中には「こんな商品、ローンが払い終わるまでもつんだろうか?」と、首を傾げたくなるような高額でも高級でもないものもあります。店は商品を売るばかりで、実際の契約は顧客とローン会社が結ぶため、返済が滞納しても影響を受けないようになっているのでしょう(系列のローン会社を持っている小売店もありますが)。

ローン会社にしてみれば割賦ローンは高金利なので、多少の取りっぱぐれがあっても相当"おいしい"商売のはずです。融資が焦げ付けば、債権(=融資)そのものを取立て専門の別の金融業者に売り渡してしまうかもしれません。そうなれば返済に追われる顧客はある日突然、聞いたこともないような会社から督促状を受け取ることになります。彼らは"ローン・シャーク"と呼ばれ、文字通りサメのように恐れられています。

「その人の考えでは、これはNZの教育に大きな原因があるんだって。ここの教育は何よりも多様な意見とそれを論議することを重要視してるので、算数のように答えが絶対に一つしかないものをあまり重視してないんだってさ。だからスピーチやディベートで自分の意見を言うのは上手でも、こと数字のことになるとけっこう弱いというのが、その人の考えなんだよ。だれがやっても答えが同じっていうのは面白みがないらしい。」

この意見には一理あります。子どもの宿題を見ていても、詩や物語を書かせるものはかなり高度なものの、算数のレベルは日本と比べて2年分以上の遅れがあるように思います。ここでは小学校の就学年齢が5歳の誕生日で日本より1年以上早い点を差し引いても1年の差はあるように思います。これが高校を卒業するまでに埋まるのか、そのままなのかカリキュラムを調べたことがないのでわかりませんが、一般的な印象から言えばこのままのような感じがします。現に息子たちは盛んに、「マス(=算数)は簡単♪」と言い、クラスで算数の成績のトップが数少ないアジア人であることも珍しくありません。知り合いのインド人も本国と比べて算数のレベルが低いことを気にしています。

「そうなのかもね。でも、ママは昔から日本でやってきたように、"読み書きソロバン"はどれも同じくらい大事で、大人になる前に絶対身につけておくべきだと思うけどね。そんなに難しいことまで知らなくていいの。特に算数は小学校でやったことがきちんと頭に入っていれば十分だと思う。計算して答えを求めることを超えて、その答えをどう活かすか、それが大切なんじゃないかな? そのためにもまず、正確に計算できないと。さっき話してたように、パソコンをいっぺんにお金を払って買うか、3年かけて買うか、どっちが自分にとって得になるのかは、計算ができないとわかんないでしょう?」

私の吐く正論に、3人ともつい黙りがちになってしまいました。私たちの意見は同じなので、ここからは論議の余地がありません。しかも、疑問をぶつけられるキウイも目の前にいないので、話は尻すぼまりに終わりました。ただし、もしも"損得"ということを特に問題にしないのであれば、話は違ってきます。お金に対する姿勢が根本的に異なっていたとしたら、「割高=損」という図式が成りたたなくなる可能性さえあります。これに関し、大手投資銀行の幹部として鳴らし、数字には滅法強いはずのキウイの友人が、非常に興味深いことを言っていたのを思い出しました。(つづく)

******************************************************************************************

「マヨネーズ」 「トラウマ日記」にもちょこっと書きましたが、いきなりアレルギーになってしまい、今週はかなり凹んだ1週間でした。とにかく首の周りを中心に、あごから耳の回り(中も!)、肩、胸元まで、「かゆい、かゆいー<<<(叫)」という感じでした。数日経ってもよくならなかったので、とうとう我慢できずに皮膚科のドアをたたきました。NZの医者デビューが皮膚科になるとは、よもや考えてもみませんでした。

診断は「花粉性アレルギー」ということで、疑っていた日光皮膚炎とピーナッツ・アレルギーには"I don't think so."と言われてしまいました。花粉と言えば、身近ではスギ花粉に悩む人の話しか知らないので、「涙や鼻水が出るのでは?」と乏しい知識でついつい思ってしまいますが、そちらはまったくなし。とりあえず処方してもらった塗り薬と飲み薬でかゆみと赤みはほぼ収まりました。「移住してきたばかりの人にはよくある問題。これから毎年、夏はこうなるのよ〜」という医者のキツーい一言におののいています(涙)

西蘭みこと