Vol.0246 「NZ・金融編」 〜銀行チャチャチャ その3〜

○×銀行で口座を開くに当たり、私たちが求めていた条件は「金利がつくこと」、「キャッシュカードがあること」のたった二つだけでした。すでに香港からの送金でまとまったお金を預けている上、早急にキャッシュカードを手に入れたかったので、他行と比較している余裕はなく、金利水準には目をつぶることにしました。○×が大手である以上、最も高い金利がつくはずがないことも承知の上でした。しかし、開いた口座には金利がつかず、たった二つの条件の半分しか満たされていませんでした。

モーテルに戻りステラから渡されたパンフレットをしげしげと読むと、確かの私たちの口座は金利がつかない純粋な当座預金口座で、「普通口座と連結した総合口座では?」という期待もはかなく消えました。それでも、彼女にあれだけはっきりと「金利のつく口座」と指定したので、「ひょっとしたら何か別の口座と連結してるとか?」という淡い期待から、顧客ホットラインで確認してみることにしました。

オペレーターにつながり事情を説明すると、「今日はもう時間がないので明日、担当者から直接電話させます。口座はどちらの支店で開設されました?」と言われました。この手のサービスはてっきり24時間、365日なのかと思っていましたが、○×の場合は夜11時までで、その時10時45分でした。「まだ、15分もあるじゃない!」と内心思ったものの、オペレーターは頑なに「明日、担当者から」の一点張りで、これ以上の情報を得るのは無理と判断しました。

「他を当たろう。」電話を切った後、もともと興味をもっていた凸凹銀行のパンフレットを取り出し、口座の種類と内容の確認を始めました。試しに24時間対応のホットラインに電話してみると、かなり好印象です。検討の結果、私たちが思い描いていた、"一定残高があればキャッシュカードでのお金の引き落としも、デビットカード端末のEFTPOSも使い放題で、金利がつき、小切手も切れる口座"という条件に、ピッタリのものが見つかりました。しかも、ここは新居の最寄の銀行でもあり、縁がありそうです。

ニュージーランドのキャッシュカードやEFTPOSは、使うたびに手数料を取られるものや、一定回数は無料ながらその後は有料となるものなど、手数料を負担するケースが多く、金額もばかになりません。見つけた口座は若干の月間口座管理料を徴収されるものの、残高に対し4%以上の金利が支払われるため費用は金利収入でカバーでき、ものぐさな私たちには打ってつけでした。金利水準も○×の類似口座が4%をかなり下回るのと比べ魅力的です。「よし、これにしよう。」夫にも説明し、即決しました。

翌朝、さっそく凸凹に出向きました。○×がメタルやガラスを多用したモダンな内装なのに比べ、ここは木目で温かみのある落ち着いた印象でした。シティのど真中の大店舗と違い、住宅街のショッピングセンター内にあるこぢんまりとした支店ですから、アットホームな感じで、長靴履きのまま入金に来ている人もいます。専用カウンターに行くと、黒の三つ揃いのスーツを着た、制服も雰囲気もホテルのコンシェルジュそのままの、人の良さそうな30代の男性が笑顔で迎えてくれました。

「共同名義で"ABC口座"を開こうかと思ってるんですが・・・」と用件を伝えると、「パスポートをお持ちですか?ビザは何でしょう?」という意外な返答。当座預金・普通預金の両方を兼ねる"ABC口座"を開くには半年以上滞在できるビザを持っていなくてはいけないんだそうです。もちろん、私たちのビザはそれ以上ありますから第一関門は突破。預け入れたお金以上に何かができる訳でもないのに、なぜ口座と滞在期間が関係あるのかはよくわかりませんでした。

さすが地域密着型の支店。すぐに目の前で手続きが始まりました。彼はパソコンにデータを入力し、「はい、口座開設終了。じゃ、今度はキャッシュカードを作ってきます」と奥に引っ込み、次に現れた時にはカードを手にしていました。裏にサインをし、端末から暗証番号を打ち込み、手続き終了。その間に定期預金口座やネット・バンキングの話をしていたにもかかわらず、かかった時間はせいぜい1時間強。個室に通され担当者と差しで話す専門の移民業務より、まさに私たちが求めていたサービスでした。

ただし、香港だったら口座開設に1時間以上もかかる銀行はありません。これぐらいの手続きであれば20分、せめて30分でしょう。しかも、担当者はその間に少しでも手が空けば他のお客の相手もこなしていきます。ところが担当してくれたディーンは他のお客がカウンターに近づいて来ると、「窓口へどうぞ」とあっさりふってしまい、モニターとにらめっこで私たちの個人情報を"一つ一つ丁寧に"と言えば聞こえはいいですが、かなり物慣れない感じで一生懸命入力しています。

「新入社員なのかな?」前日のステラの一件で懐疑的になった夫が耳打ちしてきました。「年齢的にそんなことはないんじゃない?これが普通なのよ」と私。彼はモニターに指をあて、入力内容を声に出して確認しています。回りに誰もいないからいいようなものの、個人情報が筒抜けです。(笑) 
しかし、希望通りの口座ができ、カードも手に入り、私たちは満足でした。凸凹を出た後、その足ですぐに○×へ向かいました。(つづく)

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「マヨネーズ」 朝晩はまだまだ冷え込みますが、日中はかなり暖かくなってきました。「ママ〜、ネコたち"ひなたごっこ"してるよ〜」と温。善ならまだしも、キミまで、そんな・・・

西蘭みこと