Vol.0245 「生活編」 〜踊るケーキ作り〜

非常に私事ですが(なにも今回に限ったことではありませんが^。^;)、先日ケーキを焼きました。ケーキといってもご大層なものではなく、スポンジケーキ並みに簡単なんであろう、シフォンケーキです。それでもケーキを焼いたのも、オーブンを使ったのも、正真正銘生まれて初めての私には、大きなブレークスルーでした。結果は成功、失敗というよりも大笑いで、今でも思い出し笑いしてしまうほど楽しいものでした。簡単で楽しく、しかもとってもおいしいので、みなさんもぜひ一度いかがですか?

ニュージーランドに来て以降、「今までの"お気楽&カネで解決型の生活"とはきっぱり縁を切り、何でも自分でやってみよう!そして自給自足度を高めよう!」と大きな目標をかかげ、実際にはちまちましたことをいろいろしてきましたが、その中でもぜひ挑戦してみたかったのがケーキ作りでした。香港時代には素人とは思えないほどケーキが上手な元同僚を拙宅に招いて、「週末ケーキ講座」をしてもらっていたことがあります。一人で聞くにはもったいないので、同僚や友人を誘ったりもしていました。

ところが、そんなに恵まれた環境にありながら、うちには「オーブンがない」という決定的な問題がありました。「電子レンジのオーブン機能でなんとかなるのでは?」と安易に考えていた私ですが、ちゃんとした取扱説明書も失くしていた上、買った本人が一度もオーブン機能を使ったことがないのですから、先生も四苦八苦。なかなか思うように焼けず、途中から「週末デザート講座」に看板を掛け替えざるを得ませんでした。

おかげでその時に、薄力粉などを振るいにかけるためのグリップのついたコップ状の三重ザル(本当はちゃんとした名前があるはず)、ドーナツ状のシフォン型やケーキ型などを買い求め、作りもしないのに道具立てだけはそこそこあります。しかも、今住んでいる家には立派なオーブンもあります。必要なものは全部揃いました。焼かない理由は、もうありません。

きっかけは公私ともにお世話になっている、NZ在住で個人サイト「コア・リパブリック」の管理人ちっちさんでした。モーテルから新居に移った当日に、差し入れてもらったケーキのおいしかったことといったら!甘党ではない私にさえ妙にぴたりと来るおいしさで、子どもにも夫にも大好評でした。「ママもこういうの作れる?」と無邪気に聞く息子。「いつかね」と気づかってくれる夫。初めて本気で、「ケーキを焼いてみたい」と思った日でした。

後日、彼女のサイトの"Favorite"でシフォンケーキのレシピを見つけ、とうとう決行!買ったのはベーキングパウダーのみで、あとのものはすべて家にありました。問題は「オーブンを170〜180度に温めておく」という点です。「Keep warm」にセットするところまではわかったものの、いつその温度になるのかがわかりません。該当するボタンや液晶表示が見当たらないのです。もちろん借家ですから取扱説明書など手元にありません。ここの人は電子レンジを使わなくてもオーブンは絶対に使いますから、私たちがどのレンジでも自然に使えるように、どんなオーブンでも使いこなせるのでしょう。

仕方がないので2時間くらい放っておきました。途中で開けてみては手を差し入れ、「もう180度?」と尋ねるようにのぞき込んでみましたが返事はなし、皮膚感覚でわかるものでもなし。その間にレシピ通りに生地を作り、シフォン型に流し込み、「中段で35〜40分間焼く」と書いてある通りにしてみました。すると約束の時間にはすっかり焼き上がっていました。ただし、思った通り生地の量と型の量が合っていなかったようで、表面は型から3センチくらい盛り上がり、放射状にひび割れています。

それでも、ふっくらと柔らかく本当においしそうです。「見た目のことは今後の課題、今日のところは焼けたことで良しとしよう」と、型を逆さまにして冷まし、いよいよ試食。型から抜いてナイフで切りケーキ皿に載せると、な〜んとこのシフォン、踊るんです!それもそのはず、ケーキとしては底ながら焼いた時上だった部分が、ドーナツ状に、しかもその中央線に沿って丸く膨らんでいるため、逆さにすると底が丸いのです。(←切ったとたんにユーラユラ)

「これじゃあ、置き上がりこぼしだよ〜」と思うと、笑いが止まりませんでした。夫に運んでいく途中も、どちらに倒れるでもなく、上手にゆらゆら揺れています。ただし、揺れが止まることもありません。見れば見るほど可笑しく、かわいらしく、楽しくなりました。まるで「ケーキ作りは七転び八起きだよ〜」とでも言っているようで、自作のケーキに励まされました。味はレシピ通りで、ばっちり♪ 一生続くかもしれないケーキ作りのきっかけを作ってくれたちっちさんに、感謝します。

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「マヨネーズ」 シンガポール時代に一度だだけオーブン付きの家に住んだことがありますが、キッチンの収納場所が少なかったこともあり鍋入れとなって、一度も使ったことはありませんでした。今回初めて使い、「Keep warm」以外に「Bake」、「Fun bake」という目盛りもあり、「Fun bakeってなんだろう?クッキー用かな?でも"Fun"じゃないっ!"Serious"だいっ!」と、「Bake」で焼きました。片付けの時によく見たら、"Fun"ではなく"Fan"でした!はぁ〜、オーブンって風も出るのね。やっぱり道は遠いよう。

家族の反応は、「おいしー!おいしすぎるぅ!」(温)、「ちょうどいい甘さだね。ところでコストは5ドル(400円弱)くらい?」(夫)3ドル以下です。「おいしいけど、コーヒーの味がちょっと」(善)これは紅茶シフォンでコーヒーは入ってないんだけど^^;

西蘭みこと